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とあるコールセンターには「一番のオタク」が働いている


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:高柳翔子(ライティング・ゼミ通信限定コース)
 
 
私の上司であるSさんは面白くて優しい、機嫌が悪いと少し怖い。でも話しかけやすい人だから7人いる上司の中で2番目に業務の質問をしに行く人。
Sさんに質問が集中して仕事が終わらなくて、なかなか昼食に行けなくて、別の上司が「S君はまだ昼休憩に行けていないから、質問は別の人間にするように」とメールを出さなければならない位、他の同僚からも愛されている人だ。
彼には私が入社した6年前からお世話になっている。
 
Sさんは3年位前からデーモン閣下の追っかけをしている。
たまたま動画サイトでデーモン閣下の歌を聴いて感動してハマり込んで、その後CDを買い揃えてファンクラブにも入会した。コンサートやトークライブにも参戦するようになり、地方遠征もするようになった。閣下のグッズも購入して職場でも愛用するようになっていた。
デーモン閣下がかつて聖飢魔Ⅱというバンドを組んでいたのは知っていたが、私の中では「派手な格好をしたニュースでコメンテーターをやっている好角家」でしかなかったので正直、何でこんなにハマりこんでいるのかさっぱりわからなかった。
ところが機会があってデーモン閣下の歌声を聞いてみたところ。見た目とは裏腹にカフェオレのような甘い歌声で「故郷」をアコーディオンの伴奏に合わせて歌っていた。普段の姿からは全然想像がつかなくて驚いた。気づくと私も聞き入ってしまい、「これはハマりこむわけだ」と納得してしまった。
 
また映画のゴジラシリーズが大好きなSさんは「シン・ゴジラ」が上映されていた時に何度も観に行ってその度に熱く感想を語っていた。その時にSさんは「頑張れ、僕らの在来線」という言葉を繰り返していた。
言葉の意味が気になった私が映画を観に行くと、確かにその言葉がしっくりくるシーンが出てきた。それもクライマックスでかなり重要なシーンだ。
私がSさんに続いて「シン・ゴジラ、面白かった!」と絶賛した事で他の同僚も次々とシン・ゴジラを観に行き、あっという間に職場でシン・ゴジラブームが起きた。テレビでシン・ゴジラが流れる時も皆で盛り上がっていた。
 
一度だけ職場の皆でカラオケに行った事があるが、Sさんはとても歌が上手かった。
帰り際にコツを聞いたら腹筋と一人カラオケの特訓の成果だと言われた。「……でも聖飢魔Ⅱの歌はなかなかうまくならないんだ」と苦笑いしていた。
私はSさんの蠟人形の館、結構うまいと思ったけれど、意外と自分に厳しいSさんにそれを言う事は出来なかった。
 
私が出会って来た人たちの中で一番のオタクであるSさんに、私は非常に懐いている。でもそれはオタクだからというよりも、彼が私を含めて職場の同僚たちをきちんと見てくれているからだ。
 
私は入社当初、お客様からの質問や申し出に対してわかりやすい案内が出来ないというコールセンターのオペレーターとしては致命的な問題を抱えていた。相手が十分理解出来ていないままに話を進める為、お客様が不信感を抱いてしまうと言う事が多かったのだ。
Sさんはそんな私に対して「お笑い芸人の紹介やライブのレポを書いてみたらどう?」とアドバイスした。
「高柳さんは案内する知識は十分にインプット出来てる。だけど相手の理解状況に合わせて説明するための力が足りてない。だからまずは高柳さんが大好きなお笑いについて、お笑いに詳しくない人に伝達する練習をしてみたらいいんじゃないかな」
Sさんのアドバイス通りに、相手を意識しながら自分の好きなお笑いについて文章を書いたみるようになった。結果、相手の立場や理解レベルを考慮しながら案内を進める習慣を身に着けた。知識を整理したり、しゃべり方を工夫するようになった事で問題を解消した。Sさんを筆頭に上司たちが一生懸命指導してくれたおかげで私は一人前のオペレーターとして何とか今日まで働けていた。
 
去年のある日。私は別の上司と面談をしていた。業務に関して悪い点も良い点もある程度フィードバックしてもらっていた。だけど今回は「お礼を言うときに明るい声で対応出来ているのはいい事だからこれからも継続してね」や「対応履歴の入力が早くて読みやすいよね」等いつも以上に褒められていた。
面談の終盤になって上司はこう言った。
「……S君がずっと高柳さんは自信なさげに仕事してるのを気にしていたの。それで機会があった時には高柳さんのいいところ、できるようになったところをもっと伝えてほしいって言われてたんだ」
びっくりした。確かに私は一人前に仕事ができるようになっても不安が拭いきれなくて過剰に心配しながら仕事をしていた。仕事の出来なさが原因で一部の同僚から嫌われていて、挨拶をしても無視されることがあったし、相手に怒鳴られることもまだあったから。さらにその上司は「高柳さんを一番評価してくれてるのはS君だからね」と続けた。
……これ以上は何も言わないでほしい。上司にお礼を言いながらも私は思った。
だってそれ以上言われたら、Sさんに対して「慕っている」以上の感情を抱いてしまう。Sさんに対してそれ以上の思いを抱きたくはないのに。これは部下として評価してくれた、ただそれだけだったと言うのに。
でもそれくらい嬉しかったのだ。Sさんは私を公平且つ良いところまでまで含めた評価してくれた親以外の数少ない一人だったから。
「これからも頑張ろう」
様々な感情をこの一言で心の奥に押しとどめて、私は面談を終えた。
 
一人前のオペレーターになる事でSさんの信頼に応える。
これを先月結婚したSさん夫婦へのご祝儀と言う事にさせていただければと思う。
 
 
 
 
***
 
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2020-08-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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