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初めて気づいた『サウンド・オブ・ミュージック』大人の味わい


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人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:右手を上げた招き猫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
子どもの頃には良さがわからなかったマグロの刺身が、大人になってから大好物になる。
そんな変化は、誰にでも一つや二つ、あるのではないだろうか。
食べ物だけではなく、本やドラマや映画などのコンテンツでも、同じようなことは起こる。昔読んだ本の意味が、今になってわかるとか、昔見たテレビドラマや映画を改めて見ると、子どもの頃とは全く違ったポイントに感動するとか。
 
最近、ある映画を改めて見てみたときに、子どもの頃には気づかなかったことを発見して、ちょっとうれしくなってしまった。その映画とは、世界的な名作として名高いミュージカル映画『サウンド・オブ・ミュージック』である。
 
すでにストーリーはご存じの方も多いと思うが、改めて簡単に説明しよう。ナチスドイツの影が迫りつつある、オーストリアの美しい村に、妻に先立たれたエリート軍人のトラップ大佐が、7人の子どもたちと暮らしている。雇った家庭教師は、子どもたちの悪童ぶりに耐えられず、次々と辞めてしまう。そこへ、修道女だったマリアが派遣され、音楽と自由な発想の力で子どもたちを惹きつけていく。次第に、厳格で子どもたちを“管理”しようとしかしなかった大佐も変わっていく。大佐にはお金持ちの美しい恋人がいて、再婚も考えているが、子どもたちは彼女のことが好きになれない。次第にマリアと大佐は引かれ合い……。という、第二次世界大戦時にあった実話をもとにしたファミリードラマである。劇中歌の『ドレミの歌』や『エーデルワース』は、世界中で今でも広く歌われている。
 
私の母は、ミュージカルが大好きだった。若い頃は、自分でもミュージカルのサークルで歌ったり踊ったりしていたらしい。三人の子育てをする専業主婦で、東京まで舞台を観に行くことがそんなに叶わなかった母は、『サウンド・オブ・ミュージック』の映画も大好きで、テレビでの放送があると必ず見ていた。今のようにオンデマンドで好きな時間に好きな映画を見られるような時代ではなかったので、お気に入りの映画がテレビで放送されるという稀少なチャンスを、とても大切にしていたのだと思う。私もそれにつられて、覚えているだけでも2回は、テレビ放送でこの映画を観た。ミュージカル好きの母の血を受け継いだのか、私も少年少女合唱団で歌っていたこともあって、子どもたちがどんどん楽しい歌を覚えていったり、きょうだいならではのハーモニーが充実していくことにワクワクしたり、最年長のお姉さんの初恋エピソードにときめいたり、マリアと大佐の惹かれ合う過程にドキドキしたりしていた。そして、こんなふうにみんなで歌える家族って、楽しそうでいいな、と憧れていた。
もうその初恋のお姉さんの年も、マリアの年も、とっくの昔に超えている私だが、先日、見るともなくつけっ放しになっていたテレビで流れた『サウンド・オブ・ミュージック』に、釘付けになってしまった。
 
空から俯瞰するアルプスの山々の美しさ。広々とした緑の山で歌うマリア(ジュリー・アンドリュース)の伸びやさ。個性豊かな子どもたちが、それぞれの味を持ちながら、マリアに心開いていく喜び。一つ一つのシーンが、名画たる由縁としてとてつもなく説得力をもっているのだ。
 
さらなる驚きは、意外なところに訪れた。ストーリーは知っていたから、次はこんなことが起こるのよね、と冷静に予測しながら見ていたのだが、トラップ大佐の恋人エルザの人物像は、全く予測していなかった形で浮かび上がってきたのだ。
 
子どもの頃は、エルザのことは、主役であるマリアの恋敵であり、「お金持ちで美人だけれど、なんとなく好きになれない、この人をママと呼ぶことが想像できない」と、トラップファミリーの子どもの目線でしか見えておらず、どちらかというと嫌いな人物として認識していた。しかし改めて見てみると、エルザはおしゃれで、プライドも知性も慎みも優しさもある、とてもすてきな大人の女性だったのだ。
 
彼女は、自分が子どもたちからあまり好かれていないこともわかっている。それでも、それを受け入れた上で、トラップ大佐と一緒になろうと思っていた。トラップ大佐のスキのない堅物な態度と、子どもを顧みず忙しくしている様は、先の妻をなくした悲しみから立ち直っていないからだと看破して、こんなふうにもいうのだ。「思い出から逃げてるみたい」と。
自分がトラップ大佐の一番の良き理解者だと自負しながらも、子どもたちにはそうなれない。その寂しさと不安が拭えないが、都会でパーティ三昧だった彼女は、5歳から16歳までの7人の子どもたちと、どう接したらよいのかわからない。
 
なのに、新しくやってきた若い家庭教師は、子どもたちの心を鷲掴みにしていき、さらにはトラップ大佐の頑なな心も溶かそうとしている……。マリアと大佐がお互いに惹かれ合っていることを、本人たちよりも先に、いち早く気づいた彼女は、恋敵であるマリアの背中を押してやり、私にはウィーンの都会の水の方が合っているのだと言って、スマートに身を引くのだ。
 
なんとカッコいい大人の女性なんだ!
 
長い年月を経て改めて観た映画から、子どもにはとうてい気づくことのできない魅力を再発見したとき、物語の持つ力、作品のもつ力というものを、改めて思い知った気がした。
 
「いやぁ、映画って、本っ当にいいものですね」と、飽きもせず言い続けた映画評論家の淀川長治氏の言葉の本当の深さが、初めてわかった気がした。
 
 
 
 
***

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2020-11-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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