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でも私は、居酒屋のカニが好きだよ。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:荒川未帆 (ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「結局私は居酒屋のカニなんだよねー」
久しぶりに会った高校の友人が言う。思わず聞き返してしまった。
 
「え?それってどういうこと?」
 
「だから、所詮私たち平民は頑張っても居酒屋レベルのカニにしかなれないんだよ。世の中には3種類のカニがいるの」
 
 
あなたは彼女のこの発言、理解できただろうか?
 
 
話は大学生、周囲の人間関係になりがちである。
自称“居酒屋のカニ”の彼女は、所属はしていないものの半ばオーラン(オールラウンドサークル)一員のような存在として、日々Instagramのストーリーズを更新している。
とういのも、元カレがそのサークルの中心メンバーらしく、彼女時代に仲良くなった人たちとは別れた今も仲良しらしい。
オーランといえば、恐らくどの時代も“陽キャ集団”という共通認識だろう。ファッションセンスが良くて、なぜかみんなお酒が強い。基本的に要領よく遊びと生活とを満喫している、そんな印象を持っている人も多いのではないだろうか。
類は友を呼ぶとはまさにこのことで、オーラン所属の彼女の友人たちもその条件を満たしている人たちばかりだ。
 
そんな彼らは、とにかく“モテる”らしい。
容姿、服装、清潔感、趣味、感性、と様々な要項が高いレベルにある、キラキラした私生活。陽キャという響きが文句なしに似合う。
一見理由なく嫌われそうなその眩しさを持ち合わせながら彼らがモテるのは、恐らくそのことを嫌味に感じさせない雰囲気にあるのだろう。
 
「あの人たちはね、北海道産のカニなのよ。身も味噌もいっぱい詰まってて大きくて。キラキラして見えるでしょ? 誰もが食べたくて北海道に向かうの。そこにいるだけで人が寄ってくるの、まさに王道! 分かるでしょ?」
 
「なるほどね!!!」
人間の世間的評価をカニに例えるなんて。流石のセンスだ、と何度も頷きながら思わずスマホのメモアプリに入力してしまった。
 
「じゃああの人は? さっき言ってた、メンヘラだけどなぜか彼女絶えないあの細くて長身の……」
 
「ああ、あの人は瀬戸内海のカニだよね。上質な身がたっぷりで、だから内子や味噌が少ないって文句をいう人はまずいないし。北海道ほど王道じゃないけれど、好きな人は超好き! みたいな」
 
「はいはいはい! めっちゃ分かる!!」
こういうなぜか分からないけれど常時モテる人、どの年齢のときにもいた。クラスのミステリアスな彼や、よく恋愛漫画に出てくる「なんで? あの子より私の方がかわいいのに!」の、あの子だ。
なんてコミカルな表現なんだろう、メモをする手が止まらない。
 
「はあ~なるほどね。でもそういうあなたもモテるでしょ?」
そう言った私に、彼女は食い気味に答える。
 
「いや、どんなに頑張っても男ウケする顔や性格にはなれないんだよね。だから居酒屋のカニなの。申し訳程度に味噌があって、不味くはないけど北海道とか瀬戸内海と比べちゃうとああ……みたいな」
 
そうやって彼女は自分を卑下した。
けれど私は、そんな居酒屋のカニが好きだ。
 
 
北海道や瀬戸内海は、まず行くのにお金がかかる。そのうえカニ自体も結構ないいお値段で、決して気軽に食べになど行けない。
 
その反面、居酒屋でカニを食べるって紛れもなく“ちょっとの幸せ”だと思う。
嫌なことがあった日、逆にとってもいい気分の日、はたまた「無性にカニが食べたい!」と思ってしまった日、普段は安いお酒と焼き鳥で済ませるところをふらっとカニに食べられるお店に行っただけで、きっと誰もがこのうえない幸福感に包まれる。
いつもよりも“ちょっとだけいい自分”になったような気がして、次の日も頑張ろうと思える。
それで十分じゃないだろうか。
 
確かに、ほとんどの人が高級ガニにはなれないかもしれない。
けれど全人類がお高いカニが好きとも限らない。
 
私も彼女も高級ガニにではないけれど、お互いの良いところをたくさん知っている。自分にはない発想を持っていて、人間の世間的評価を思わず笑っちゃうような例えのできる彼女が、やっぱり好きだ。
 
人の好みも食の好みと同じ、本当に人それぞれだ。
キラキラしている手の届かない人にもちろん憧れはあるが、日常の中で少しの幸福を与えてくれる人の方が、私はずっと一緒にいたいな、と思ってしまう。
だからこそ話の最後、彼女に言った「でも私は、居酒屋のカニが好きだよ」という言葉は本心だった。
 
“誰からも愛されていない、認められていないのではないか“
 
日々過ごす中で、どうしても自己肯定感が低くなる瞬間。
けれどそれぞれのカニを好きな人がいるように、必ず、そんな自分のことを好きな人はいてくれている。きっと身近にも。
自分の中身を知り理解した上で、「あなたが好き!」と言ってくれる人を大切にしていければそれだけで幸せで、産地なんて微塵も関係ないのだ。
 
以前はそんなことを思うのも惨めなように感じていたが、そこも含めて自分を居酒屋のカニだと思ったら、少しだけ失った自己肯定感を取り戻せたような気がした。
 
 
 
 
***
 
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2020-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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