fbpx
メディアグランプリ

森で死にかけたら取材して書く意識を変えた話


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:成田陸(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 
「逃ィゲェェロォォ・・・・・・!」ウィンドブレーカーの胸ポケットからと後ろから班長の全力の声が聞こえてくる。後ろを振り返ると、メキメキと音を立てながら“ソレ”はゆっくりと、しかし着実にスピードを上げながらこちらへ向かって倒れてくる。
 
「ヤバい死ぬ」直感的にそう思った。走馬灯を思い浮かべている暇なんかなく。映画の爆破シーンで見かけるように全力で“ソレ”から逃げた。5秒後、30mぐらい先でドッカーンと地鳴りが聞こえて、無事だったんだと知る。
ハァハァとシャトルランが終わったような勢いで息をしている。良かった、助かった。
 
少しすると「お前、何やってんねん!?」班長の怒声が胸ポケットにつけている無線機から聞こえてくる。「すみません!」という声も聞こえてくる。
あぁ良かった誰も怪我しなくて。息を整えながら、わたしはそう思った。
 
これはわたしが全国の森林を旅して、林業を取材しているときにあった高知県での一幕だ。
わたし達に倒れてきたのは、チェーンソーで伐って倒した全長20m程度のスギの木だ。重さにしたら1トンはゆうに超えるだろう。下敷きになれば、どんな生物だって一撃で天国に向かう。それが伝達ミスと操作ミスが重なって、事故が発生した。そういった命の危険と常に隣り合わせにいるのが、林業の一つの特徴だ。
 
はじめて、木が倒れる様子を見る人だと、「わー、ダイナミックでスゴ!」みたいな感想を抱く。わたしもはじめて見たときは興奮したし、いまでも幹周りが大人二人で囲える樹木の伐倒は見ていて興奮する。
 
しかし、作業している人の表情をみると真剣そのものだ。それはそうだろう。一瞬の油断が自分の命そのものに直結する産業は、そこまで多くはない。それこそ、大統領を守っているSPや戦場に従事している軍人だろう。いや、建設業でも一つのミスで資材を落として大惨事を引き起こした話も聞くから、以外とあるのかもしれない。しかし軍事産業も建設業も機械化が進んでいることを聞くが、林業はあまり機械化が進んでいない。
 
それはなぜか?
日本で森林があるところはだいたい急斜面で、平地で行う林業は北海道か東北の一部しかない。そして、急斜面には重機などの機械が入らないことが多い。建設業や農業、食品工場などは平地で行われる。急斜面にある工場なんて聞いたこともないだろう。
この急斜面というのが厄介だ。平地であれば林業で人が亡くなることは激減すると考えている。
林業は全産業のなかで最も高い死亡率になっている。厚生労働省が発表している死傷千人率では全国平均が2.2%に対し、林業は31.2%、と約15倍倍と高い割合になっている。
ちなみに林業に従事している人口はおよそ4万50000人。ニホンジカより少ないと言われている。だから、だいたい実数に直すと毎年50人ぐらい死んでいる。毎週1人は亡くなっている計算だ。それ以外にも怪我している人は多くいる。たいした怪我でなければ、日常茶飯事すぎて労基署に報告しない事業体もある。「いや、アカンだろ!」と思ってもこれが実態だ。ただ、責められない理由もわかってしまう。林業は補助金産業。怪我や事故などが発生したら、補助金を受け取れず、会社が傾いてしまうこともある。いや、そんな会社潰れてしまえばいいねん、と思うかもしれない。ただ、同じ立場になったとき、潔く認めることができるだろうか。
 
「言うのは簡単。それも批判するだけやったら、簡単よな」
冒頭の事故が一段落して改めて取材している最中、わたしが現場の人から言われた言葉だ。わたしはそのとき実態をはじめて聞いた。そして「だめでしょう」といった。その答えだ。
わたしは卒業論文を書いていた。いうてしまえば取材して、原稿にまとめる作業をしていた。実際に木をチェーンソーで伐ったこともあるし、インターンで重機に乗ったこともあった。けど、日々木を伐っているわけではないのだ。
それなのに、取材して赤ちゃんでもできるような感想を言って、相手を怒らせてしまった。当然だ。貴重な時間をとってもらったのに、マイナスなコメントしかだせない奴が悪い。
 
それから意識を変えた。まずリアルを追求する。ひとつひとつの工程を見逃さないようにして、説明できるレベルを目指す。そのときに注目しているのは些細な動きだ。大まかな動きの意味はわかる。ただ、些細な動きの意味はわからないことが多い。なら注目して、聞いてみるといい。もちろん、ただの癖ということもあるし、あまり深い意味がないことのほうが多い。それでも、重要な意味が込められているときにリターンは大きい。あまりそういったのは気づかれないことが多いから、気づくと聞いた人も嬉しくなっていっぱい話してくれる。たとえばカレーの隠し味に入れると香りとコクが増すインスタントコーヒー。そういったこだわりを気づいてくれたら、嬉しくて話してくれる人が多いだろう。
そして、聞いたものをまとめるのが難しい。良い話であったら、後味よく書けるかが、悪い話だったら批判で終わってしまう。そうではなく、次に繋がる言葉にできるのかを求められた。状況を分析して改善案を書く、たったそれだけだ。結果は、卒業前に、その人に卒論を見せにいったら笑顔だった。どうやら合格だったようだ。リアルを追求して、次に繋がる言葉を書く、それが記者に求められているのかもしれない。業界紙の会社に入って半年そう改めて思った。
 
 
 
 
***
 
この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。

 

 
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

お問い合わせ


■メールでのお問い合わせ:お問い合せフォーム

■各店舗へのお問い合わせ
*天狼院公式Facebookページでは様々な情報を配信しております。下のボックス内で「いいね!」をしていただくだけでイベント情報や記事更新の情報、Facebookページオリジナルコンテンツがご覧いただけるようになります。


■天狼院書店「東京天狼院」

〒171-0022 東京都豊島区南池袋3-24-16 2F
TEL:03-6914-3618/FAX:03-6914-0168
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
*定休日:木曜日(イベント時臨時営業)


■天狼院書店「福岡天狼院」

〒810-0021 福岡県福岡市中央区今泉1-9-12 ハイツ三笠2階
TEL:092-518-7435/FAX:092-518-4149
営業時間:
平日 12:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00


■天狼院書店「京都天狼院」

〒605-0805 京都府京都市東山区博多町112-5
TEL:075-708-3930/FAX:075-708-3931
営業時間:10:00〜22:00


■天狼院書店「Esola池袋店 STYLE for Biz」

〒171-0021 東京都豊島区西池袋1-12-1 Esola池袋2F
営業時間:10:30〜21:30
TEL:03-6914-0167/FAX:03-6914-0168


■天狼院書店「プレイアトレ土浦店」

〒300-0035 茨城県土浦市有明町1-30 プレイアトレ土浦2F
営業時間:9:00~22:00
TEL:029-897-3325


■天狼院書店「シアターカフェ天狼院」

〒170-0013 東京都豊島区東池袋1丁目8-1 WACCA池袋 4F
営業時間:
平日 11:00〜22:00/土日祝 10:00〜22:00
電話:03−6812−1984


2020-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

関連記事