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歌は世につれ、世は歌につれ


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記事:右手を上げた招き猫(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
最近、若い人たちの間で昭和歌謡が流行っている、というニュースを目にした。少し前から、我が家では昔の歌謡曲を聴き直すのが流行っていたのだが、このややマニアックな趣味が、なんとなく時代とシンクロした気がして、うれしくなった。
 
ニュースによると、彼らにはメロンクリームソーダが「エモい」と人気なのと同様に、昭和歌謡もエモくていいらしい。メロンクリームソーダは、緑色の甘いソーダの上に、バニラアイスと、缶詰の真っ赤なチェリーが乗っている、昭和の喫茶店の定番メニューだ。インスタグラムには昭和を知らない若者たちのクリームソーダの写真が数多投稿され、昭和歌謡についてはサークル活動などで、改めてその時代のウェルメイドな歌詞などを味わって楽しんでいるそうだ。
 
実は家で昭和歌謡を聞くようになってから、日本のヒット曲の歌詞の変化が気になっていた。例えば、昭和の(とざっくり括ってしまうが)ヒット曲の中に出てくる一人称は「私」「俺」、二人称は「あなた」「おまえ」が多かった。平成の(とこれもざっくり括ってしまうが)ヒット曲では、一人称が「わたし」「ボク」になり、二人称「キミ」になった。昭和から平成にかけてさまざまな職業の呼称が変わり、「看護婦」が「看護師」になったように、歌の世界の中でも言葉がジェンダーフリーにシフトしているのが興味深い。
 
また、昭和のアイドル全盛期と令和の時代では、歌の半径というか、歌詞の描く距離が変わってきたように思う。例えば松田聖子時代のアイドルソングには、白いビーチやサンゴ礁、高原のテラスにセイシェル島など、日常生活とは遠く離れたリゾート感があふれていて、果ては地球が瑠璃色だと俯瞰したりもしていたし、夜行列車やミッドナイトフライト、車の中から流れる街の景色などのドライブ感が広がっていた。私は最近のヒット曲に詳しい方ではないが、年末に『紅白歌合戦』の歌詞を意識しながらみている限り、最近の歌でそこまで「日常からの物理的な距離」を感じさせる歌詞は、あまり多くなさそうだ。
 
5年前にNHKで、過去65回の『紅白歌合戦』で歌われた曲の歌詞のビッグデータを分析した番組があった。番組内では、歌詞にまつわるさまざまな分析が行われていたが、その中の一つとして、1950年代から2010年代まで10年刻みで、歌詞に登場する頻出ワードベスト5が列挙されていた。それはこんな感じだ。
 
1950年代 1位「花」、2位「ああ」、3位「呼ぶ」、4位「月」、5位「灯」
1960年代 1位「恋」、2位「夜」、3位「知る」、4位「娘」、5位「淋しい」
1970年代 1位「恋」、2位「人」、3位「女」、4位「愛」、5位「涙」
1980年代 1位「心」、2位「夢」、3位「涙」、4位「愛」、5位「男」
1990年代 1位「夢」、2位「愛」、3位「涙」、4位「心」、5位「夜」
2000年代 1位「今」、2位「空」、3位「夢」、4位「心」、5位「風」
2010年代 1位「未来」、2位「信じる」、3位「明日」、4位「自分」、5位「手」
[以上のランキングは番組内のパネルより]
 
1950年代から1990年代まで続いていた夜っぽい空気(「月」「灯」「夜」「涙」)が、2000年以降は日の光がさしているような明るい空気(「空」「風」「未来」「明日」)に変わっている。若い人がお酒を飲む量が減ったことや、車に乗らない人が増えて夜のドライブが減ったことなども、影響しているのかもしれない。
 
また、時代が進むにつれ、ジェンダーに関わる単語が消えて中性的になり、2000年代以降は「恋」も「愛」も「涙」もなくなった。代わりに台頭してきたのが、「今」「空」「未来」「信じる」「自分」。抽象概念よりも、「自分ごと」が増えたトレンドの背景として考えられるのは、一つには歌詞を自分で書く人が増えたことだ。それによって、専門家が書く文芸寄りの言葉よりも、若い歌手が等身大に綴るリアルな言葉が増えたのではないか。もう一つは、この時代に起こった出来事の影響だ。2010年代は大規模な自然災害などが相次いだことで、「未来」を「信じ」て、「自分」を「信じ」て、「手」を携えて生きていこう、と歌わずにはいられない時代だったのではないか。
 
歌は世につれ、世は歌につれ、という言葉がある。ヒット曲の歌詞の変遷をみると、確かに歌詞が時代を写しているな、と思う面と、歌詞が時代を作ろうとしているな、と思う面がある。特に2000年代以降は、閉塞感を破っていきたい、未来に希望をつないでいきたいという空気を、歌詞の側から作ろうとしているようにも感じられる。
 
2020年代は、どんな歌詞が歌われるのだろう。会えない淋しさとか、だからこそのつながりや信頼の大切さとか、そんな中でも前を向いて生きていこう、的な歌詞が増えて、「ああ、2020年代は確かコロナで始まったんだよね」などと振り返る日がくるのかもしれない。
 
 
 
 
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2020-11-22 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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