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ライティングはタイムマシンのようだと思った話

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:伊藤あさき(ライティング・ゼミ冬休み集中コース)
 
 
ライティング・ゼミの2日目が終わったときのことだ。
課題記事に取りかかろうとABCユニットを考え始めたとき、ライティングはタイムマシンのようだとふと思った。
 
書くことは嫌いではないし、読書感想文を書くのも好きなほうだった。
だからわざわざお金を払ってまで文章の書き方を習うという発想はなかった。
 
そんなある日、「天狼院っていう本屋さん知ってる?」
突然会社の先輩からメッセージがきた。
「聞いたことないですが、何かあるんですか?」
「いろんなおもしろい取り組みをしてる本屋さんなんだけど、今度そこのライティング・ゼミ受けるよ~」
「へぇ~先輩また新しいこと始めるんだ。天狼院ていう名前、なんか本屋さんぽくないな。どんなことしてるんだろ」そう思いながら送られてきたURLをクリックしてみた。
 
目に飛び込んできたのは、「人生を変える」というキャッチーな一言。
その日から、このフレーズが頭から離れなくなった。
 
いったい何を教えてくれるのだろう?
「人生を変える」って具体的にどういうこと?
自分の意志には反して、ライティング・ゼミに対する興味がどんどんわいてくる。
まんまと「マーケティング・ライティング」にはまっていたのだとこの日判明することになったのだが。
 
興味をひかれた私は、自分が受講料を払うのに納得できるだけの理由を探し始めた。
「人生を変える」というくらいだから、きっとすごいものにちがいない。
「そんなライティング力を身につけて何がしたい?」と自分に問いかけた。
 
そのとき、ある思いがわきあがった。
 
「誰かに発信するわけでなくとも、自分自身の人生の軌跡を文字に残していくのはどうだろう」
 
そんな風に思ったのにはある理由がある。
 
ちょうど3年前のことだ。
 
「それじゃあよいお年を!」
 
年の瀬にもなれば、誰とでも交わすこんなありふれた挨拶が最後になってしまった。
2017年の冬、大学のときから10年以上お世話になっていた美容師さんが亡くなったのだ。
 
いつものように予約の電話をすると、受話器の向こうが一瞬しんとなって、
「ご存じないでしょうか。半年前に亡くなったんです」
 
携帯のアドレス帳からできる限りのお客さんには連絡をしたのだが、
連絡先が変わっていて連絡がとれなかった人が私も含めて何人かいたのだそうだ。
 
最後のお別れさえできなかったんだ……
涙が溢れて私はそれ以上話すことができなくなってしまった。
 
大学で上京して初めて訪れた美容院で、たまたま担当してくれたというだけのご縁だったのだが、社会人になって岐阜県に移り住んでからも、髪を切るためだけに横浜に通った。
 
いつかはお別れのときがくる。
当たり前のことだがこんな形で実感したくはなかった。
 
最後にお別れができなかったことが心にひっかかったまま、3年が経った。
そして、ライティング・ゼミに出会った。
 
日々のできごとを、自分自身のために文字で残していくのはどうだろうか。
いつでも思い返せるように。
 
そんな思いがわきあがってきたとき、
ずっと心にひっかかっていたのは、最後に会えなかったことではなく、
いろいろなことが当たり前と思い込んで日々を過ごしてしまっていたことだったのかもしれないと思った。
 
いつでもそこにあると思い込んでいるもの。いつでも会えると思い込んでいる人たち。
当たり前のように感じるけれど、当たり前じゃない毎日をちゃんと文字にして日々残していけたなら、後悔も少しはなくなるだろうか……
 
そう思ったとき、心のひっかかりが少し取れた気がした。
 
講義を終えた後、私はさっそくライティングにとりかかろうとスマホを手に取った。
美容師さんとお客という関係だったから、一緒に撮った写真は1枚もない。唯一残された思い出は、スマホのトークルームだけだ。
ずっと消せないでいたトークルームを呼び出すのは、いつぶりだろうか。
 
2013年10月23日。これは、私が初めてメッセージを送った日だ。
その日から亡くなる2週間前までやり取りしていたトークルームには、たくさんの会話が残っている。
 
「●●が退出しました」という画面が表示されたトークルームは、
いつもなら悲しみがこみ上げてくるのに、なぜか今回はちがっていた。
「どんな思い出があったっけ」
私はむしろ少しわくわくしながらトークを見返していた。
 
「シャンプー、なくなりそうなのでお願いしたいです!」
「了解だよ!」
 
「シャンプー、まだ届かないみたいなんですが…ご手配いただいてますよね~??」
 
―数日後―
 
「ごめん! 明日送るよっ!」
 
やっぱり忘れてたか…!
次回はもっと早めにお願いたほうがいいな。
 
トークを見返していると、そんな当時の心のつぶやきまでも思い出す。
 
日々の些細なできごとでも、文字を読み返すとそのときの情景が、気持ちがよみがえってくる。
メッセージのやり取りをたどりながら、私は思い出を紡いでいくことにした。
 
「亡くなっても、その人を思い出しているときは側にいるんだよ」
 
悲しみにのみこまれそうになっていた私に、住職である叔父が言ってくれた言葉だ。
 
「思い出しているとき、その人はそばにいる」
 
ならば、ありったけの思い出を綴ろう。そして会いたいときに会いに行こう。
そんな風に考えることで、楽しかった思い出を悲しみや寂しさではなく、笑顔で思い出すことができる気がした。
 
ライティングはまるでタイムマシンのようだ。
文章を読み返せば、会いたい人に会える。その時の自分に会える。
いつか忘れてしまうかもしれない思い出を、感情を自分の代わりに覚えていて、いつでもそこに連れて行ってくれる。かけがえのないタイムマシンだ。
 
 
 
 
***

この記事は、天狼院書店の大人気講座・人生を変えるライティング教室「ライティング・ゼミ」を受講した方が書いたものです。ライティング・ゼミにご参加いただくと記事を投稿いただき、編集部のフィードバックが得られます。チェックをし、Web天狼院書店に掲載レベルを満たしている場合は、Web天狼院書店にアップされます。
 

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2021-01-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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