不器用な男は不便であり、おトクである
記事:大場 理仁(ライティング・ゼミ)
不器用な男は何かと損することが多い。
恋愛ドラマでも、脇役で必ずいるのが、どうしようもなく不器用な男だ。
すごく心の中で好きな人に対して、想っているのに言葉にすることをためらっていて、なのに周りの人には気持ちが完全にバレていてという、不器用さだ。
そうして、たいていは「好きだ」の一言を言う前に、ライバルが出てきて、気付いたらライバルと彼女が付き合い始めるということになってしまう。
ただ、彼女に対して本当に大切にしたいという気持ちがあるから、幸せであればいいという風に想って、見守る傾向がある。そのため、いわゆる「優しい人」になる。
ドラマでは、密かにその脇役を好きになる女の子が出てきて、みんながハッピーエンドになりがちだが、現実世界では、そうはいかない。基本的に、友達として好きな女の子とずっと付き合い続けたりする。もちろん、そんな態度をとるため、なかなか彼女はできなかったりする。
その結果、不器用こじらせ男子が生産される。
実は、私もまた不器用な男だ。
好きなはずなのに、後回しに無意識にしてしまったり、しっかりと向き合おうと思えば思うほど、避けてしまいがちになってしまう。
一つのアプローチをするたびに、自分は間違ったことをしていなかったかと確認をしてしまい、誰よりもゆっくりと歩をすすめることになってしまう。
「どうして、自分はこうなんだろうか?」となんども思ってしまうのだ。素早く行動さえすれば、早く結果が得られることもわかっている。その早い結果で、一緒にいることができる時間も増える。もちろん、後少ししかない冬の季節を一緒に楽しめることは間違いなしだろう。
ただ、どうしても前に進むことができないのだ……
どうしても、この冬に決めた「マフラーを編む」という行動が前に進まないのだ……
自分の不器用さを恨むほどに、マフラーが編めないのだ。1時間に数cmしか進まない。そのため、後回しにしてしまう。そして、なぜだか編み目の部分がおかしくなったり、どこまで編んだのかを確認しながら、編まなければいけないため、時間がかかる。
早く時間をかけて作ってしまえばいい。そうすれば、キャメル色のウールのマフラーが首に巻けるのだ。柄もかわいくしているため、きっと女の子からの食いつきも期待出来る優秀アイテムになるはずなのだ。「これかわいい! 貸してよー!!」と人気アイテムになるハズだ。
そうした期待を胸にするものの、不器用な指はそれを拒む。
たがしかし、これは課題なのだ。課題をやらなければ、女の子からの賞賛も学校からの単位もどっちも無くなってしまう。
焦る気持ちと不器用な指が格闘する。
そうやっていき、ある程度できてきた。前に進めば、なんとかなるものなのかもしれない。後少しで、形になるのかなというところまで来た。
紆余曲折いろいろなことがあった。ただ、前に進めた。
キャメル色のマフラーは今にも産声をあげそうだ。
冬休みの課題「編み物で何かを作る」は、こうして不器用な男に襲いかかり、一つ一つ編んでいき、何とかハッピーエンドがきそうだ。
高速で作ろうと超低速で作ろうとマフラーはマフラーで、手がかかるほど愛着がわくから、出来る限り長く使い続けたいと思ってしまう。かわいがる気持ちも人一倍だ。どこかで手に入れることができるものでないから、なおさらその感情は強くなる。これはこの世でひとつだけのものなのだと。もしかしたら、高速で作る人よりも、手がかかるだけ、不器用な人の方が愛着を持てる。それは不器用人間の特権だ。そのスピードで前に進むことに意味があるということもあるかもしれない。
きっと、この冬そのマフラーと過ごす時間が増えると思う。それを楽しみに今日も編んでいく。一目一目を大切に編み続けていく。いつか、それが完成する日まで。
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