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メディアグランプリ

いつも逃げる君を追いかけたくて


 

記事:大場理仁さま(ライティング・ゼミ)

 

昔から好きになると時を経たずして、僕の前を去っていった。「この気持ちは”好き”なのかもしれない」と思うとなぜだか気持ちがどんどん高ぶって楽しくなっていく。だけれども、相手はその気持ちを知っておいて、そっけなく接して、どうにか目を合わせずに去ろうとしてくるのだ。ただ、相手にも悪いところがある。確信できるほどに、少し遠い場所から僕のことを見ていたり、待っていたりするからだ。そんなことをされたら、どうすればいいかわからないじゃないか。大好きなミュージシャンのライブで目があったとキャーキャー言っている人のことを今まで小バカにしてきたが、もしかしたら自分もその類なのかもしれないと思ってしまう。だけれども、これは確かなことなのだ。相手もひっそりと自分のことは好きなはずである。

 

今日も帰り道にヤツはいた。僕がヤツのいる場所まで歩いていくと、やはり逃げていく。だが、5m程度先まで行くと、立ち止まった。もしかしたら、今日はいけるのではないかと思って、歩くスピードを若干上げて、声をかけた。そうしたら、やっぱり逃げていった。恥ずかしそうに。

 

いつも逃げられてしまう。だが、やめられないのだ。この気持ちをなくすことはできない。それくらいかわいいのだ。うちの近くにいるミケネコは。

 

昼間は自由に近所を走り回っている。そして、夜になるとネコの声ってこんなだっけと思うほどの図太い声で喧嘩をしている。いつ起きて、寝ているのか、何を食べて生きているのかが全くわからない野良ネコはどこか自由な雰囲気を醸し出しながら、人前に現れる。しかも、その独特な雰囲気の中には、「私は学校で一番の美女よ」と言わんばかりの堂々とした感じが漂っている。そして、「私を口説こうなんて早いのよ」と男を早いうちから牽制しておきながら、貢がせるような感じもあるのだ。なんてヤツだと時々思うが、それでもかわいいと思ってしまう感情が勝って、餌をあげてしまう。ヤツはその餌もありがたみを感じていないかのように、それをくわえて、そそくさとどこかに行ってしまう。ちょっとくらいかまってくれたっていいだろうと思いながらも、どこで食べているかなと想像して和んでいる自分がいることに気づくのだ。

 

そんなネコ好きな僕が生きやすい時代が今きている。アイドルが握手会やライブなどを頻繁に行うことでお客さんと近くなったように、ネコカフェやネコの写真集がたくさんできたことによって、日々目を潤すことができるのだ。そして、ネコ好きと公言する人が多くなってきたことによって、延々とネコのどこが好きかというトークをすることができるようになった。そういうことを日々繰り返すことによって、ネコへの愛は深まっていく。

 

さらに、ネコグッズも増えている。もうネコ好き男子にとって、それを持っている女の子を見るだけで好感度50パーセント増しであり、仲良くなりたい感情がふつふつと湧いてくるのだ。とにかく、ずっと会話しても大丈夫だという安心感がそれによって担保されるのだ。それは本当に困った時に弁護士バッチをしている弁護士さんが「このくらいのことなら大丈夫ですよ。がんばりましょう」と笑顔で言ってくれて、安心するのと同じくらいの効力を発揮するのだ。

 

でも、ちょっと前まではここまでネコへの熱が世の中にはなかったはずだ。猫ひろしがいた頃は確実に「にゃー」と言っても、白々しくあしらわれるくらいだった。それが今となってはガラリと変わって、女の子が道端で「にゃー」と猫に話しかけている姿を見ると心の底からキュンとしてしまうようになった。

 

どんどんネコがかわいいキャラとして世間に受け入れられるようになっていっている。アイドルの宣材写真のようなキレイに写ったネコたちがかわいいと言われるようになってきている。だけれど、それは本当にかわいいネコなのだろうか。ここで僕は主張したい。ネコは絶対に野良ネコがかわいい。人が来たら逃げてしまうとことか、そうかと思うとついてくるとことか、誰にも見られていないだろうと大あくびをするところとか、グッとくるポイントを野良ネコはいくつも持っているのだ。自然で気をずっと張ってないからこそ、自由な姿が見られる。そこにキュンとしてしまうのだ。

 

それはいつも人前でかわいくキレイでいようと小さなことまで気にしている女の子が、自分の前だけでは素の自分を見せてくれるような特別感が実は男心をくすぐるのだ。犬のように、自分にいつも尻尾を振ってはくれないし、小さなことでそっぽを向いてしまうネコだけれども、気分で「遊んで遊んで」と近寄ってきて、撫でてやると「にゃー」とかわいい声でキュンとさせるようなところが、やはり虜になってしまうポイントとなる。

 

だから、今日もネコを追いかける。相手が好きかどうかわからないけれども、自分は好きなのである。この感情を止めることはできない。やっぱり恋は待つのではなく、追いかけるべきだ。追いかけるからこそ理想を叶えることができるし、叶えた時の喜びは何事にも変えることのできない感情になる。さあ、明日も楽しみに会いに行こう。いつもいるだろう場所へ、君に会いに。

 

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2016-03-04 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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