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メディアグランプリ

わたしもいつかあの秘密結社に入るのだ



 

記事:H. Tomokoさま(ライティング・ゼミ)

 
*この文章は、「天狼院ライティング・ゼミ」の受講生が投稿したものです。
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相手がだんだんと自分に近づいてくる。

ひそかに彼らの表情を見て判断する。

秘密結社のメンバーであるか、そうではないか。そう、この社会には秘密結社があるのだ。

 

どうやら入会するにあたり、年齢、性別、人種の制限はないようだ。とはいえ誰でも即日入会可でもない。人によってはそれなりの訓練が必要である。わたしのように日本人であるならば、なおのこと。

 

結社のメンバーになれば普及活動は必須。それは実にさりげなくそつのないもので、特に新生児を連れた親がいようものなら恰好のターゲットだ。わたし自身が秘密結社の存在に確信をもったのも、子供を産んでから。「あらかわいいわね。何ヶ月?」早速会話が始まる。赤ちゃん一人でもそうなのに、3人の年子連れであったため、声のかけられ方が半端なかった。スーパーのレジに並んでいるとき、レストランでテーブルが空くのを待っているとき、あるいはエレベーターの中では百発百中。例え会話が始まらなくても、にっこり微笑まれる。ついついそのパワーにはやられてしまう。

 

そう、彼らのパワーは微笑み力だ。そうやって微笑んで挨拶して周囲を少しでも明るくするのがミッションなんだ。そう思うぐらい、フレンドリーなアメリカ人の多いこと! もちろん彼らの中にも根暗やシャイが当然いて、誰でもというわけでは決してない。だが散歩中やジョギング中、ビルの廊下、子供を遊ばせている公園など、通りすがりに目が合えば結構な確率で、”Hi!” となる。

 

その秘密結社の主力メンバーはおばあちゃんだと、わたしは信じて疑わない。なぜだろうと考えてみた。

 

彼女たちが青春時代を謳歌していたころは、アメリカの繁栄期で、幸せな人生を送ってきたから?

それとも人生の酸いも甘いも体験して、到達したひとつの境地?

単純に時間の余裕があるから、気持ちにも余裕がある?

わからない。わからないけど、それぐらい彼女たちの微笑みはチャーミングだ。

 

おばあちゃんほどの活躍ぶりではなくとも、おじさんたちも負けてはいない。彼らが活躍するのは移動の場だ。どうやら飛行機がその持ち場らしい。「どちらまで?」にこにこしながら、隣の席に座ったおじさんたちにはよく話しかけられた。彼らの愛読ビジネス本には、「飛行機で隣りあった人と会話をし、ビジネスネタを仕入れ、雑談力を磨きましょう」と必ず書いてあるのではなかろうか、と思うぐらいに。

 

ちょい独特だなと思うのは黒人男性。通りすがりに ”Hi!” だけではなく ”How are you doin’?” と少し長めの挨拶が入る。How are you doing? と言ったって別に何かを聞いているわけではなく、ただの挨拶である。 ”Fine, thank you” なんて答えたくとも、とっくに通り過ぎてしまっているのだから、にっこり ”Hi!” と短く返しておけばいい。じっくり観察していると、黒人同士はしっかりお互いの目を見て、敬意を払って挨拶している。マイノリティとして生きる者同士の結束感があるのだろう。わたしもマイノリティだから声を掛けてくれるのかもしれないし、あるいは誰にでもしっかり挨拶することで、タフな人生を生きやすくする生活の知恵かもしれない。

 

南部の州に行けばサザン・ホスピタリティと呼ばれる特有のフレンドリーさがある。旅行者でもレストランに行けば感じることができるはず。目上の男性に返事をするときは ”Yes, sir” 女性には ”Yes, ma’am” と、sirやma’am(madamの略語)をつけてくれる。オーダーを聞くときにも、”What would you like to have, honey?” 普段北部に暮らすわたしには、え、は、はにー?いきなりわたしがあなたのハニーですか、とそのフレンドリーさがいつも照れくさいのだけれど。

 

アメリカ人がフレンドリーなのは、西部開拓時代の名残であるという説を聞いた。広大な国土を開拓していたころは人口密度があまりにも少なく、他人にであうこと自体がめったになかった。だからであったときには「わたしは決して悪者じゃあないっすよ」と示すために、フレンドリーさをアピールした、というものだ。あるいは移民社会で異なる文化を持つ者同士、フレンドリーさが必須だからという説もある。

 

日本のように人口密度が高い国で、いちいちアイコンタクトをとって挨拶していたら、四六時中挨拶だらけで大変なのかもしれない。だから、知人とそうではない人の線をきっちり引く必要があるのだろうと推測する。

 

でも、アメリカでの挨拶をやってみたら病みつきになる。もちろん初めはタイミングを計ってどぎまぎしたり、気疲れしたりもしてしまう。でも「やる」と決めれば、やれるもの。自分は今こちらに向かってやってくるあの人に挨拶するんだ、と決めてしまう。

 

そうしてわかったこと。挨拶されるのもうれしいけれど、自ら挨拶しにいくほうがずっと気分爽快、どんどん楽しくなっていく。運気が上がるのを感じられる。これってすごい! 自分がポータブルパワースポットになっちゃうんだから! 赤の他人と通りすがるたびに、彼らの力を借りてパワーが生まれる。そう、メンバーが普及活動に励むだけのことはある。だから、自分もやってみよう。第一ステップは、口角を上げて、目じりを下げて!

 

そうして、いつかわたし自身も秘密結社のコアなメンバーになれますように、と訓練中。叶うころには、わたし自身がおばあちゃんになっているのかもしれないけれど、そのうちあなたにも、普及活動をしに行きますね!

 

 

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*この文章は、「天狼院ライティング・ゼミ」の受講生が投稿したものです。

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2016-03-29 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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