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零細企業の世代交代は倒木更新のように


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記事:成田陸(ライティング・ゼミNEO)
 
 
その森を歩くと巨木の聖地だった。目の前に見える巨木は、私一人の腕では幹を一周できない、いや二人でも足りない。5人か10人かが手を取り合わないと囲えないぐらい大きく太い木だ。それが1本だけではない。歩くルートに何本、何十本、何百本とあるのだ。
 
2週間前、私は縄文杉がある屋久島の森を歩いた。
 
巨木には見上げるような存在感がある。まるで神様が宿っているのではないかと感じてしまうときもある。観光客の多くはその存在感に圧倒されて、上を向く。枝や葉もあり華やかで、インスタ映えもしやすそうだ。だからか、誰も根を注視していないようだった。みんな、どれだけ高い木なのか、太い木なのかを気にしても、根がどんな形をしていて、どれだけを根が張り巡っているかを気にしない。
 
樹木に最も大事な器官は“根”だ。根がしっかりしていなければ、どんな木も倒れしまう。
 
屋久島の巨木にはある共通点がある。それは、根にぽっかり穴が空いているのだ。まるで、そこに何かがあったかのようだ。それもそのはず。その穴はむかし、倒木があった跡なのだから。これを専門用語で倒木更新という。
 
そして、「もしかしたら、自社の世代交代も倒木更新のような姿を目指すとうまくいくのかもしれない」と考えた。
 
私は、森林関係の零細出版社の社員だ。大学で森林科学を専攻し、日本中の山村を旅した。それなりの専門知識と人脈があり、コロナ禍が始まった年に新卒で今の会社に入った。大学の同期が受けたような新卒教育などは一切なく、社長が時間あるときに教えてもらうか、横から見て技を盗むか。はたまた、取材先の経営論で学ぶか、本で学ぶか。だけど、本当に大事なことは森から教えてもらったことが多い気がする。
 
私が所属する会社で雑誌や書籍の編集を担当するのは、社長と先輩、そして私だけだ。その実態は、職人の世界のような師弟関係になっている。私は、社長や先代が積み上げてきたことを尊敬しているし、社長も新事業のアイデアなどは私に任してくれることも増えてきている。付け加えると、社長もあと数年したら引退する方針をたてているし、そして、その跡を継ぐのはどうやら私らしい。つまり世代交代は私にとって他人事ではなく、自分ごとなのだ。そんなとき、屋久島の巨木をみたらすべて倒木更新だったのだ。
 
倒木更新というのは、倒木の上に新しい芽が育って成長することだ。
 
樹木にも寿命があり、老衰で幹が折れて倒れる。あるいは、台風や土砂災害、地震などの天災によって、はたまた、人の手によって樹木は倒される。この倒れた木の上に種子が落ちて、芽吹き、木が大きくなる。この短いプロセスだけをみたら成長というかもしれない。しかし、木は森の一部で、森は森全体で生態系を考える。古い世代の木がなくなり、新しい世代の木が生まれる、この世代交代のプロセスを森の世界では更新という。
 
通常の更新は、古い世代の木がなくなり、その日光や栄養分、水分などを新しい世代の木が吸収して成長するだけだ。だが、倒木更新は違う。倒木の上に芽吹いた新しい世代の木は、下駄を履かせてもらっているようなものだ。
 
まず、倒木から栄養分を吸収しやすい。加えて、倒木の上にあるからシカに食われるなどの被害にあう確率も減り、地中の病原菌などからの被害も少なくなる。なんといっても、地表の新芽よりも太陽に近い位置にあるから、より多くの日光を浴びて成長しやすくなっている。
 
この倒木更新のプロセスは、当社のような零細出版社が世代交代を行う上でお手本とすべきものではないかと考える。つまり、社長や先代、先輩などが積み上げた資源を活かし、新しい事業の芽を育てる。
 
ここでいう資源は、まず会社としての資本や信用を含む。他には、社長や先代などが出版した書籍・コンテンツだ。そして、ニッチでオタクな知識、そういった情報集めるネットワークやその張り巡らせ方だ。これらは一朝一夕で身につくものではなく、同様の事業を展開しようものでも、ベンチャー企業などではおそらくできないものが多いだろう。なぜなら、当社のようなニッチなジャンルに属する出版社や企業、伝統工芸は、時間の価値が出やすいからだ。これは倒木更新も同じで、倒木という先人が積み上げた栄養や立地などの資源、つまり時間を活かして新芽は育つ。
 
私達のような零細出版社は、先人の積み上げた時間を否定する余裕はない。社長や先代が積み上げた価値の上に、新芽が日光を多く浴びられる空間に枝を伸ばすように時代に合わせて新たな価値を育てるしかない。そして、いつか、新しい世代の人が芽吹く場所になりたいものだ。そのときは、森をみて学んでほしい、と伝えたい。
 
 
 
 
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2022-04-13 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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