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手紙


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記事:ゆうこさま (ライティング・ゼミ)

母が亡くなり1年。
遺品整理のため、母の持ち物の確認を始めた。
引き出しの奥にはたくさんの手紙やハガキの束。
年賀状、暑中見舞い、祖母や友人知人からの手紙など、そのほとんどを保管していたようだ。
その中に、厚めの封筒の束があった。
見慣れた字。差出人は私。

私の部屋の引き出しにも、たくさんの封筒がしまってある。
見慣れた字。あて先は私が書いているが、差出人は母。

emailだSNSだと、簡単に連絡が取れるようになったのは、いつの頃からだったのだろう。
簡単に連絡でき、近況を伝いあうことが出来る。
それが当たり前の世の中となり、年賀状以外、ハガキも手紙も書かなくなってしまった。
それこそペンで字を書く行為自体がめっきり減ってしまった。
便利な反面、味気ないなと思っている人も多いのではないだろうか。

手紙やハガキは、思い出を形として残すことが出来るから。

私が学生だった頃は、雑誌の後半には「チェッカーズが好きな人、文通しませんか?」
そんなコメントが載った文通相手を募集するページがあった。そのコーナーを見ながら、この人ならと思った人にお手紙を書く。
気が合えば、文通のスタート。
可愛いレターセットを買って、きれいな切手を選んで、ポストに投函。
返事が来るのが楽しみで、ポストを見るのが楽しみだった。

高校生の頃、何人かの人と文通していた覚えがあるが、当時の手紙を残していないので、どんなやり取りをしていたのか、今となってはまったく覚えていない。
残していたら、笑い話のネタのひとつにでもなっただろうに・・・・・・。残念だ。

ほんのわずかな時間だったけれど、私にとって一番の文通相手は母だった。
もうふたむかしも前のことになる。
その頃は、携帯電話と言えばバッグのような箱に受話器がついている、携帯するにはあまりにも大きすぎる装置だった。パソコンも一般には普及しておらず、スマホなんてものが世の中に出てくるなんて、夢にも思っていなかった時代だ。

若かった私は、会社を辞め、4年間かけて貯めたわずかな資金を元に、ワーキングホリデー制度を利用して、オーストラリアへ旅立った。

お嬢様育ちではないけれど、門限やら何やらうるさい両親の元で育った私。
1年もの長い間、家から離れるのは初めて。
両親もさぞかし心配していたと思う。

当時の連絡手段と言えば、電話か手紙のみ。
お世話になっていたホームステイ先から国際電話をかけるわけにはいかず、テレホンカードを購入し、業務連絡のように「無事に生きている」ということだけ、時折公衆電話から連絡していた。その費用も貧乏ワーホリメーカーには高額で、めったに連絡することはなかった。

その期間の後半、バックパックをかつぎ、4ヶ月間かけてオーストラリアを一周する旅に出た。
海外旅行はおろか、国内でも飛行機すら乗ったことがなく、外国人になんて接したこともなかった両親にとって、4ヶ月間もの間、遠く見たこともない場所をふらふらと動き回る娘、どう思ったのだろうか。限られた予算しか持たない旅なので、高額な国際電話は最低限のみ。
選んだ通信手段は、やはり手紙だった。

旅の最初に、オーストラリア全土の地図を買い、おおよその移動計画を記入して送った。
旅に出る上での母との約束は、下記の3項目。
1)時々は電話で生存確認の連絡をすること。(週1回と言われたが、予算削減により叶わず)
2)移動するごとに、ハガキか手紙で連絡すること。
3)連絡が一方通行にならないよう、母からも連絡できるようにすること。

電話は最低金額で終えられるよう、テレホンカードではなく、コインを入れて切れるまで。「今、どこどこの町にいる」というわずかな時間のその連絡で、両親は英語表記の地図を一生懸命探し、見つけられないときはご近所の人も総動員で地図を眺めていたらしい。

こちらからの郵便を利用した連絡は簡単。
移動した町できれいな絵葉書を買って、切手を貼って送るだけ。オーストラリアには、かわいらしい切手が多かったので、郵便局で選ぶのも楽しかった。

問題は、母からの連絡。
両親ともに、まったく英語を書いたり読んだりが出来なかった。
加えて、移動している私には住所がないわけで、郵便局留めで送ってもらい、受け取る以外に方法がない。
そこで考えたのが、私から送る手紙の中に、オーストラリアと日本の往復輸送時間を考慮し、その日程に到着するであろう町の郵便局の住所を書いた紙をいれておく。
母は、私宛の手紙の封筒に、私が送った紙を貼り付け発送する。
その方法は上手く機能し、一度も受け取れなかった手紙はなかったはずだ。

このことにより、次の町へ移動するのも楽しみの一つとなった。
到着すると郵便局に行き、手紙が到着していないか尋ねる。
調べてくれている間、わくわくがたまらなかった。
好きな人からのラブレターでもないのにね。
母がどんなことを書いてくれていたのか、はっきり覚えていない。
ただ、時折、芸能人の○○さんが結婚した、亡くなったという、芸能ネタの切り抜きが入っていた。そうそう、雅子様だったかしら?結婚の儀のニュースなどの切り抜きが入れられていて、同じホステルに滞在していた人たちと楽しく読んだり、外国の方とそれをネタに話したことも覚えている。

一方、私からの手紙。旅の途中の出来事などを書いて送っていたと思う。
怖かったこと、辛かったこと、寂しかったこと・・・・・・。そんなことは心配させるだろうから、書いていなかったと思うけれど、まだまだ子供の精神を持った私は、泣き言も書いていたのかもしれない。それに遠く離れたことで、両親へのありがたさなども感じ、直接は恥ずかしくて口にできないことも、素直な気持ちで手紙をかけていたような記憶もうっすらと残っている。私の字を見て、なんとなくそのときの心情を感じていたこともあったようだ。

たった4ヶ月だけのやり取りだったけれど、お互いの手紙は軽く20通を超えた。
あれほど母とのやり取りが濃密だったのは、後にも先にもこの期間だけとなった。
はっきりと内容は覚えていないけれど、手紙という形あるモノだけでなく、その期間のやり取りの思い出は、暖かくて大切な宝物の一つとなっている。

もともとの持病が原因で、急に悪化したと思ったら、あっという間に逝ってしまった母。
もう1年もたったけれど、まだその手紙のやり取りを読み返すほどの心の整理がついていない。
二人分の手紙を一緒にまとめ、引き出しの奥にしまった。
いつかじっくり読み返すことが出来る日を楽しみにしながら。

大切な人へ、たまには手紙を書いてみませんか。

 

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2016-07-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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