メディアグランプリ

なぜ、少人数のクリエイティブエージェンシーはかっこいいと思われるのか

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記事:たかさま(ライティング・ゼミ)

「なんで、クリエイティブな人ってかっこいいって思うんすかね」

月曜日の昼過ぎ、渋谷にあるwi-fi、電源が使えるカフェで、アイスコーヒーをすすりながら、僕は先輩に尋ねた。

「ブレーンとか読んでると、よく小さいクリエイティブエージェンシーとかが取り上げられてるじゃないですか。あれって、なんでカッコよく見えるんですかね」
「少数精鋭だからじゃん?」
先輩は、ラズベリーグレープフレースジュースという、おしゃれなカフェにありそうな飲み物を片手に答える。

「それも一理あると思うんすけど、なんでクリエイティブな人ってカッコよく見えるんですかね。例えば、空間デザイナーとか」
「あぁ、最近流行ってるよね」
「目に見えないものを生み出してるからなんですかね」
「それはあるかもね」

ふと、視線の端にギーク系の雑誌、WIREDが目に入る。

「例えば、WIRED作ってる人と、ポカリスエット作ってる人だったら、なんとなくWIRED作ってる人の方がカッコよくないですか?」
「言われてみればそうかも」
「あれってなんでなんすかね」
「さぁ。まぁ、でも広告とか作ってる人は、真の意味での創造者じゃないのかもね」
「なんでっすか」

僕は、グイッっと体を乗り出して聞く。

「本当に新しいものを作るなら、メーカーとかの人の方が、新しい商品とか作ってるわけじゃん」「確かに」
「あとは、見た目の問題じゃない」
「あぁ、なんかおしゃれな服着て、仕事してる感じっすか」
「そうそう」
「それでいうと、あそこに座ってる帽子かぶった二人組の人とかクリエイティブっぽいすよね」

そう言いながら、先輩に目配せをする。
視線の先には、キャップを被り、偶然にも2人とも白いTシャツを着た30台くらいの男性二人が、テーブルの上でMacを開いて、真剣そうな顔で話している。

「あれって、端から見たらクリエイティブっぽくないですか。なんかの企画作ってるって感じで。まぁ、それでいうと俺らもクリエイティブっぽいすよね」

ハハハと笑いながら、続ける。

「だって、私服だし、Mac開いてるし、内容はくだらないすけど、遠巻きに見たらなんかの企画会議してるかもしれないし」
「あぁ、自分では意識してないけど、そうなのかもね」
「やってることも全然クリエイティブじゃないですけどね」
「まぁな」

クリエイティブ=かっこいい、という図式が自分の中で立ち上がったのはいつからだろう。
きっと、就職活動の時だ。
大学三年生まで、クリエイティブのクの字も意識してなかったのに、なんとなく業界研究を始めると、横文字が踊る会社の方に目がいく。主に広告代理店だった。

広告代理店がなぜカッコいいのか。
就活生にも人気な広告代理店。

CM作ったり、キャッチコピーを考えたり、デザインのディレクションをしたり、空間デザインをしたり。なんとなく、なんでも作る、アイデアマン集団というイメージだったからだろうか。
採用ホームページには、私服で楽しそうに仕事をする写真がたくさん並ぶ。
なんとなく、そんな集団の中に入ってる自分はかっこいい気がした。

別に、広告で心を動かされたことなんてなかったし、営業なんて絶対やりたくないとかわがままな考えしか持ち合わせてなかった。あの、おしゃれなオフィスで、毎日企画会議だけをするという、いかにも現実を見れていない就活生の考えるようなことが、頭の中を支配していた。
OB訪問も、コピーライターとか、クリエイティブなことをやってる人にしかしなかった。
メーカーの営業とか、銀行とか、自分の中で絶対ありえないと思っていた。なんか、泥臭いし、好きでもない商品とか売れないし。

クリエイティブが何たるかを対してわかってもいなかったくせに、クリエイティブに憧れていた。
中身を見ずに、外見だけで女性を付き合うようなものだった。綺麗な女性を隣に連れている自分、すげー、と思われたい人と考えてることは同じだった。

人は自分の都合のいい事実しか受け入れないものだ。
当時の自分は、絶対広告代理店に入れると思っていたし、クリエイティブな仕事をするもんだと思ってた。周りに、営業になる確率の方が圧倒的に高いと言われながらも、広告関係の会社以外はほとんど受けなかった。
結果は余裕で全滅。綺麗な人に「あなたの見た目が大好きです! 付き合ってください!」と言ってるようなものだ。付き合う上で起こるゴタゴタとか、受け入れ難い部分とかも全部飲み込む覚悟じゃないと、広告代理店はおろか、普通の会社にだって就職できない。

結局、広告代理店に入ってブランディングされた自分が欲しいのであって、その先のことを何も考えてなかったのだ。コピーライターになったら、新人は毎日何百本もコピーを書くとか、営業は靴に入ったビールを飲まなきゃいけないとか、毎日タクシー帰りとか、どこまで本当かわからないけれど、そういう類のことを見て見ぬ振りしていた。働いている人みんながみんなそう言った覚悟があったかどうかは知らないけれど、少なくとも僕は、世間の評価しか気にしていなかったのだ。

自分が欲しい情報だけをすくい取っていたら、そりゃあ「クリエイティブ=かっこいい」みたいな図式が立ってしまう。メディアなんてかっこいい部分しか見せないのに、かっこいい部分を寄せ集めた雑誌だけを見ていたら、自分が求める像しか浮かび上がらない。例えば、もっと他の職種に目を向けていたら、もしかしたらメーカーの人かっこいいとか、銀行の人かっこいいとか、思っていたかもしれない。

僕は、先輩にとってかっこいい職業が何なのか、ふと気になって尋ねてみた。

「俺? 俺は中小企業の社長とかかっこいいと思うよ」
「え、なんでですか」
「大企業になっちゃうと、社長業みたいなのしかやらなくなるけど、中小の人って社長業も現場行もやらないといけないわけじゃん。それに、知られてないだけで、すごい企業とかも中小ってたくさんあるし。そういう会社をずっと存続させてるってかっこよくない?」
「あぁ、なるほどっすね……」

世間的評価じゃなくて、やってることで人を判断している先輩には、ぐぅの音も出なかった。

「クリエイティブ=かっこいい」なんて図式は、全員共通で成り立つ式ではない。
そもそも、クリエイティブの定義が曖昧すぎる。
考え方によっては、みんなクリエイティブに働いている。
クリエイターって名前の付いた人だけが、創造的な仕事をしているわけでもない。

少人数だろうか、大企業だろうが、スポットの当たる数が違うだけだ。
メディアが何をどう切り取るかの問題と、どういう人がいるのかが、どれくらい見える化されてるかの問題で、何となくかっこいいって個人的に思ってるに過ぎない。メディアの情報を鵜呑みにしすぎているのだ。だから、少人数のクリエイティブエージェンシーはかっこいいと思ってしまう。

まぁ、少なくとも自分がどう思われているかの世間的評価を気にする人は、クリエイティブじゃないんだろうな。
本当に仕事内容で尊敬される、かっこいいクリエイティブな人になるには、まだまだ遠い。

 

***
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2016-07-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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