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メディアグランプリ

車体が跳ねるような運転は気が狂ってしまいます

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

記事:成田陸(ライティング・ゼミNEO)
 
 
彼の目は血走っていた。呼吸は浅く、息が荒い。だが汗はかいておらず、体は動かしていない。時折、奇声を上げながら、一心不乱に前を見据えていた。
 
彼の目の前には白い世界が広がっている。それはバケツをひっくり返したような豪雨だ。20m先から見えないような雨のカーテンだ。彼は焦っているようだ。まるで締切に追われるような作家にみえる。事実、彼は時間に追われていた。あいにくの豪雨で、飛行機の到着が遅れ、約束の時間に間に合うか、間に合わないかの瀬戸際だった。
 
その日の天気は、到着先の空港周辺が荒れており、遅延、欠便のアナウンスが相次いでされ、出発しても羽田空港に戻るかもしれないといわれていた。幸い、彼が搭乗した便は無事に到着したが、約30分遅れだった。
 
彼は空港に到着と同時に電話を取り出して、
 
「お世話になっております。〇△田です。ただいま空港に到着したため、もしかしたら遅れるかもしれません。
ええ、はい。
ありがとうございます。
後ほどよろしくお願いいたします」続いて、「お世話になります。〇△田です。ただいま到着しました。今が向かいますので、レンタカーの準備をお願いいたします」と電話をかけていた。
 
彼は手続きをしてレンタカーに乗り込み、車を出発させた。
 
そして、今、彼は目を血走らせながらレンタカーのハンドルを握っている。チラリとチラリの目をやる先には、スマートフォンで開かれたGoogleMAPがあり、目的地までの予定時間が1時間17分と出ている。もう1つの視線の先には、速度メーターの数字が60km/hを超えるかどうかのところだった。
 
今、針が超えて、63km/h、69km/h、75km/h、80km/hに届いた。
 
彼が走っているのは北海道のだだっ広い道だ。新千歳空港から苫小牧方面に向かっている。平坦で車線の幅も十分にあり、スピードも出しやすい。そして、すれ違う車はあれど、追い越す車はない。加えて雨で周囲の視界はほとんど見えない。スピードも比較する対象がなく、速度メーターが表示する数値のみ。彼の体感はそこまで速度は出てないような感じなのだろう。その証拠にまだ速度は上がっていく。
 
車は山あいに入っていった。道路の脇を見れば、ホオノキやカエデ系の広葉樹、反対方向を見ればトドマツなどの針葉樹の姿も確認できる。生き物の気配はほとんど感じられない。どの生き物も雨に濡れたくなくて棲家から出てこない。大型トラックなどが走っていて、補修が間に合っていないのか道路がデコボコしていて、水溜りがあちこちにある。彼は車を蛇行させながら、だがブレーキを踏まずに速度を決して緩めることなく水溜りを避けていく。
 
 
「ヒャッッホッッーーーー!!!!
楽しぃぃいぃぃ〜〜〜〜!!!!」
 
 
彼は叫んでいた。まるでジェットコースターに乗ったようなテンションで大声を上げていた。周囲の視線をはばかることなくひたすらハイテンションで奇声を出している。叫んだ後は、カラオケに入ったかのようなノリでいきなり歌を歌い出した。はたからみれば変人・奇人の類だ。歌っているからといって速度が落ちているかというとそうではない。むしろ先ほどより上がっている。小さい水溜りを通れば車体の高さを超える水飛沫が飛ぶぐらいの速度が出ている。彼は調子に乗っていた。もしくはそうでもしなければ気が狂いそうだったのか。
 
そして、車体が跳ねた。
 
フッと浮き上がった。
 
ハンドルが取られた。
 
左側のタイヤが大きな水溜まりを通って、水切りのようにタイヤと水面がぶつかって車体が浮いたのだ。車体のバランスが崩れる。
 
「ヒッ」と彼の口から音が出た。
 
キィィというブレーキ音が鳴った。
 
車体は蛇行しながら速度が落ちていく。
 
彼は「ハァハァ」と肩で息をしながらハンドルを持ち直して運転を続ける。
憑き物が落ちたような、九死に一生得たような表情で、また右足でアクセルを踏み込んだ。
 
「アハッ、アハッ、アハハハハ」と、彼は狂った機械のように笑い声を上げながら車を走らせる。目線の先にはGoogleMAPで23分と出てる。ラストスパートかと言わんばかりに再びアクセルを踏み込んで速度をあげた。
 
そして、彼は目的地に到着した。約束時間より12分が経過した時刻だった。
 
サイドブレーキを踏み、パーキングモードにしてエンジンをきった。
「はぁ〜〜。死ぬかと思ったー。アタマがおかしくなりそうだった」とひとりごつ。
 
なんとか、彼は、私は、事故ることなく車から降りた。もう二度とこんな気が狂うような危険な運転をするもんかと思いながら取材に臨んだ。そして、取材先で話が盛り上がってしまい、もう一度同じような運転をするハメになったのだ。
 
 
 
 
***
 
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2022-06-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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