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「もう男なんて信じない」と思っていた私が、おカタイ警察官と一夜限りの恋をした話


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記事:斧田 唄雨さま(ライティング・ゼミ)

――大丈夫ですよ。
耳をくすぐる、甘い声。低すぎないトーンはひどく優しいくせに、裏に情熱を秘めている。
カランと音を立てて、グラスの中の乳白色が揺れた。あなたの声が持つ熱に、氷を溶かされたのだと思った。
今日初めて聞く声なのに、どうしてこうもすべてを委ねてしまいたくなるのだろう。
「お巡りさん。本当に?」
――本当に、大丈夫です。
あくまで堅い口ぶりを貫く、実直なところも素敵。
カーテンを閉め、灯りを消した。ワンルームの部屋が闇に包まれる。
今夜は久しぶりに、深く眠れそうな気がした。

――来るな。
来るな来るな、来るな……!
かすかに足音が聞こえた気がして、玄関に視線を遣った。ワンルームのアパートだから居間からドアがよく見える。暑くもないのに汗が吹き出して、みっともなく手がふるえた。動きを止めて、じっと息を殺す。
――うそでしょ? どうして、また来たの。
ドアをにらみつけていると、「気配」は部屋の前で歩みを止めた。
じわり、とドアノブが下げられていく。試すような動きだ。
鍵は閉めている。あんなことがあってからは、毎晩用心のためにチェーンまでかけていた。
案の定、「気配」がドアを引いても錠に阻まれて開かなかった。だからといって安心もできないけれど。
「気配」は強引にドアを開けようとするでもなく、鍵が閉まっているのを確認すると消えるようにいなくなった。引き際があまりに呆気なくて、かえって不気味だ。
私はその一部始終をリビングから見つめていた。恐怖に負けないように、必死の思いでダイヤルを押す。
1、1、0。

――助けて。

思えば昔から、男運が悪い、と言われてきた。
子供の頃は通学路で声かけ事案に遭い、大人になってからは露出狂に遭遇したり、後をつけられたり。ナンパの類いも軽そうなチャラ男ではなく、どこか粘着質な人にばかり声をかけられる。友人曰く、「いるよね、”そういうの”に遭いやすい子」いかにも、私がそうだった。
そんな私の元にある日、「彼」がやってきた。
「しまったなぁ……」
駅に自転車を置いていたのに、どこかに鍵を落としてしまったらしい。
アルバイトの後、終電で降りた午前1時の最寄り駅には、まだちらほら人影があった。駅からアパートまで5分。大通りはこの時間でもそこそこ車通りがあるし、まぁ5分くらいいいか。
歩いて帰ろう。
途中、近所のコンビニに入り、缶ビールとピスタチオを買う。コンビニ袋を提げてアパートの階段を上っていると、後ろから足音が聞こえた。
完全に油断していた。同じアパートの人か、と思った。大学生が多く住む安アパートでは飲み会帰りの酔っぱらいが深夜に帰宅するなどザラにあることだ。でも、なんとなく顔を合わせたくなくて急いで階段を駆け上がり、上りきったすぐの自室、201号室に飛び込む。いつもなら最初に玄関の電気をつけるところだが、この日はなぜか先に鍵をかけた。
これが、幸いした。
――ガタッ。
ノブがいきなり引き下げられ、頭の中が真っ白になった。
ドアの向こうに誰かがいる――。
誰だ? いや、わかりきっているじゃないか。
さっきの足音の人だ。階段を上ってきている音も聞こえた。足音から察するに、女ではなさそうだった。
アパートの人ではない? もしかして、つけられていた? あなたの尾行はどこから? 駅から? コンビニから?
「彼」が鍵のかかっているドアを引き、開けようとする。パニックのあまり手がふるえて、チェーンがうまくかからない。安アパートの古いドアが悲鳴を上げるようにガタガタと音を立てた。
深夜1時、頼りないドア1枚隔てての攻防は30分にも及んだ。ふと我に返った頃には「彼」はいなくなっていた。

「――で、不審者の姿はご覧になってないんですね?」
「……すみません、怖くて、頭が真っ白になってしまって」
「彼」が去った後、私は警察に連絡した。2時過ぎにもかかわらず、警察はすぐにやってきた。はじめから通報しておけばよかったのに、緊急事態ではうまく思考が働かなくて適切な対処ができなかった。
「彼」がいなくなってから通報しても意味がない。二人組のお巡りさんは、辺りを何度かパトロールしてくれたけれど、不審な人物は見当たらなかった。
「この辺は暗いですし、以前から不審者の目撃情報がありますからねぇ。女性の一人暮らしは心細いでしょう。何かあったらすぐ警察に連絡してくださいね」
お巡りさんは交番へ帰っていく。何はともあれ、「彼」はいなくなった。喉元過ぎれば熱さも忘れるとはよくいったもので、私は制服の二人組を見送りながら、こう考えていた。
『今日はたまたま、いたずら心で狙われただけ。いたずらだけなら今までも何度もあった。さすがに、二度目はないだろう』――と。

この期に及んで油断し続ける私の元に、「彼」が再び訪れるのは5日後のこと。その後は1日おきにやってきた。決まって鍵が閉まっているのを確認し、消えるようにいなくなる。不気味だった。じきにこの鍵を破ってやると宣言されている気がした。
プライベートな領域に踏み込まれた。しかも、何度も。部屋の電気が点いているときを狙ってやってくる、ということは、ターゲットは間違いなく私だ。
四度目の来訪以降、ついに私は家に帰らなくなった。心配した友人のあおいが泊まりに来るように誘ってくれたのだ。こんなときだからこそ、派手に遊ぼうとオールナイトでカラオケに付き合ってくれたりもした。
けれど、どんなに楽しい時間を過ごしていても、少しの物音で不安になる。「彼」の気配に敏感になりすぎていた。ふと沈黙が訪れた瞬間に、風でドアが音を立てただけで、それだけでもう、だめだった。急に泣き出したどうしようもない私に、向けられた目は優しかった。
「もう、引っ越した方がいいよ」

オートロックつきのマンションに即決して、月末には引っ越す算段をつける。実に2週間ほど。夜はあおいの家に泊まり、引っ越しの作業は昼だけで進めていくことにする。その日も昼間家に戻り、大量の本を段ボール箱に詰める作業をしていると、突然、携帯電話が震えた。
……知らない番号からの電話、しかも携帯電話だ。
最初の着信は無視した。二度目も無視した。しばらくしてかかってきた三度目の着信は、留守番電話につながった。
しつこい着信に怖くなる。おそるおそるメッセージを聞くと、男の、声がした。
『――さんの携帯電話でしょうか? 私、警察の者で、宮森と申します』
――警察?
宮森を名乗る男は、少し早口だった。勢い余ったのか、メッセージの頭の部分が切れてしまっている。彼の言葉を聞くために少し集中する。
『先日、不審者が家に現れたということで通報されたようですが、その後お変わりないでしょうか? また、連絡します。失礼します』
丁寧に断ってから、メッセージは切れた。
警察官にしては声が優しくて、穏やかだ。今までお世話になった警察官は皆親切だったけれど、どこか鋭く、もっと雄々しい声をしていた。交番のお巡りさんだって。
そうだ、駆けつけてくれたお巡りさんの中に宮森という人はいなかった。
タイミングを見計らったかのように、四度目の着信がある。同じ番号からだ。思いきって、電話に出てみた。
『あぁ、よかった、つながった! 私、警察の宮森と申します!』
「あの、すみません。私、引っ越すことになりまして。最近はずっと家を空けているので、不審者が来ているかどうか、私にもわからないんです」
かなり慎重に、言葉を選んだ。この段階で、私は宮森と名乗る男のことを全く信用していなかった。素性の知れない男に、あまり手の内を晒したくない。
私の思惑を知ってか知らでか、男はこんなことを言い出す。
「あなたにお願いがあるんです」
「お願い?」
「実はですね、お宅の周り、不審者が出るということで何度か通報を受けていて、私たちも警戒していたんです。しかし……」
「捕まえられなかった、と?」
「残念ながら。あなたの家にやってくる不審者と同一人物かわかりませんが、可能性は高い」
興奮気味に、早口が加速する。
「一晩だけ、家に帰っていただけませんか?」
あなたは何もしなくていい。普段通りに過ごして、家にいてくれるだけでいい。在宅中に不審者がやってきたら、絶対に私が捕まえます。
だから、と宮森と名乗るその人は続けた。
「一晩、あなたの家を張り込ませてほしいんです」
不審者を捕まえる、それは願ってもない話だった。引っ越し先はセキュリティーこそしっかりしているとはいえ、今の家からそう離れていない。もしかしたら、次の家もいつか知られてしまうかもしれない。本当に「彼」が捕まるなら、見えない「気配」に怯える必要もない。私だけじゃなく、近隣住人の安全も守られる。そうできるなら、それが一番だ。
だけど、私には夜の家に一人でいることが、何よりおそろしかった。
そもそもこの男は、本当に警察官なのだろうか。たぶん、まだ若い。年にして30代。声は低すぎず、どちらかというと高い方。軽快な口調で、少し早口。
――詐欺師のような話し方だと思った。
詐欺師の声なんて、聞いたこともないけれど。とにかく、そう感じたのだ。
「あの、今、電車の中なので!」
「え?」
「すみません、一旦切ります。降りたらこちらから連絡しますから!」
ムリヤリ電話を切って、息をついた。
もし、この男が「彼」だったら――? 「彼」が何かの拍子に私の電話番号を知ったとしたら?
警察の張り込みを信じて家に帰り、一人、この部屋で夜を過ごす私の元に「彼」がやってくるイメージがわいて、頭から離れない。部屋でくつろいでいると「宮森」からの電話があり、「宮森」の指示で私自らドアを開けると、向こう側に「彼」がにやけ顔で立っている。
『こんばんは。私が宮森です――』
妄想だ。極めてタチの悪い妄想。しかし、私の油断が「彼」の来訪を許してしまったのも確か。
そっと、電話の電源を切る。
絶対に踏み込ませない。怪しいものは最初から信じない。私はもう、油断しない。
電源を切ったまま、今日もあおいの家に出かけた。

「うわ、どうしたの、それ」
2時間後、携帯電話の電源を入れると、着信が10件近く入っていた。あおいに、「どう思う? 」と画面を見せると、彼女は眉をひそめる。
「ねぇ、気持ち悪くない?」
「気持ち悪いってか、怖い」
「警察っていう人から連絡が来たんだけどさぁ」
「警察? だったらそれ、ちゃんと連絡しないとヤバくない?」
「うーん、でも本当に警察なのかなって、思っちゃって……」
留守電もたくさん入っていた。
「宮森です」「大丈夫ですか?」「何かあったんですか?」「連絡ください」「心配、なんです」
どうして、ここまでしてくれるんだろう。顔も知らない、会ったこともない、今日初めて会話しただけの私のために。
警察の仕事は、市民の安全を守ること。それはわかっているのだけど、たかが一市民のためにここまでしてくれるもの?  本当に? 警察でもなんでもない人が、私を騙そうと、おびきだそうとしているんじゃない?
着信履歴を辿り、あおいは「あ、」と声を上げる。
「最後の着信、固定電話からかかってんじゃん」
「え、ほんと?」
「ちょっと番号調べてみるわ」
彼女は自分の携帯電話でその番号を検索し始めた。
最後の着信は45分前。メッセージが録音されている。携帯を耳に押し当てて、目を閉じた。
私だって、本当は信じたいのだ。宮森とかいう、声しか知らない男を。
最後のメッセージは、それまでの早口が鳴りを潜めていた。言い聞かせるような、真剣な声が胸に染み入る。
「ねぇ、この人、本物だよ。本物の刑事さんだよ」
「うん。……うん、本物だ」
彼は、本物だ。

――宮森です。怖がらせてしまって、すみません。これを最後の電話にします。

最後の電話の発信元は、警察署だったらしい。あおいの携帯に表示された検索結果を見る前から、私は宮森さんを信じようと決めていた。

――私は、××署の刑事です。署にお問い合わせしていただいても構いません。あなたのお気持ちを考えずに不躾なお願いをしてしまって、申し訳ありませんでした。
――けど、どうか。どうか。

――私を信じてください。お願いします。

宮森さんを信じるのは、油断でも無用心でもない。この人は信頼できると思った、私の判断だ。
すっかり覚えてしまった11桁の数字を打ち込み、待機音を聞きながら開口一番に非礼を詫びようと決めた。無意味な嘘をついてしまったお詫び、電源を切り連絡を絶ったお詫び、心配させてしまったお詫び。
そして、宮森さんを信じられなかったお詫び。
すべてを込めて、信頼で返そう。3コールで電話に出た彼は「信じていただけて嬉しいです」と、少し早口で言って笑った。

あおいの家を出て、夜の我が家に帰る。暗い帰り道を歩くのは久しぶりだ。
「22時には家に着きます」
『了解です。お気をつけて』
「あの、普通に帰ればいいんですよね?」
『はい。もう待機してますので、普通に夜道を歩いてもらって大丈夫です』
事務連絡だけ交わして、電話を切った。
「彼」が初めてやってきたあの夜と同じく、途中でコンビニにも寄った。店内を一周したところでいいことを思いつく。今日はビールはやめにしよう。あんパンと、牛乳にしよう。
急にドキドキしてきた。張り込みの定番食が入ったコンビニ袋を提げ、安アパートの階段を一気に上る。背後から近づく足音は聞こえない。嬉しいのに少しだけ残念だ、と現金なことを考えた。
帰宅してドアに鍵とチェーンをかけ、部屋に灯りをつけると、再び携帯が鳴る。連絡先に登録したおかげで、液晶に『宮森さん』と名前が表示された。
『帰られましたね』
「はい。ただいま帰りました」
『おかえりなさい』
刑事さんにおかえりなさいと言われるなんて、なんか変な感じ。
どこでこの部屋を見張っているのだろう。宮森さんを探して、電話をつなげたままカーテンを開け、ベランダに出た。アパートの前の道は狭い路地だ。隠れる場所もない。宮森さんらしき人影は見当たらなかった。
『あ、こら。カーテンを開けないでください。ベランダにも出ちゃダメですって』
「宮森さん、どこにいるんだろうと思って」
『わからないと思いますよ。そちらからは見えない場所にいるので』
「どこですか、そこ。聞いてください、私、あんパンと牛乳買ってきたんですよ」
電話越しにプッと吹き出す音が聞こえた。
『刑事ドラマじゃないんだから』
姿は見えないけれどすぐ近くで見守ってくれている、仕事熱心で真面目な刑事さん。声だけが警察らしくない。宮森さんの声は、月明かりの下ではなんだか甘く聞こえる。
『今日は怖いこと全部忘れて、ゆっくり寝てください。最近あんまり休めてなかったでしょうから』
「彼」は今も近くに潜んでいるのかもしれない……と、つい数時間前までもて余していた不安は、宮森さんの声で溶かされてしまった。怖いはずなのに、まだ22時なのに、ねむたくてしょうがない。大きくあくびをすると、くすくすと忍び笑いが聞こえた。そうだ、見られているんだった。
大丈夫ですよ、と優しい声が言う。
『――守ってますからね』
続いた笑い混じりの甘い囁きに、大きく心臓が弾んだ。

おやすみなさい、と言って慌てて電話を切った。まだドキドキしている。
守ってますからね、かぁ……。
そんな台詞、現実に言われる日が来るとは思ってもみなかった。
熱いシャワーを浴び、グラスに注いだ牛乳を飲み干し、早めに電気を消す。普段通りに過ごせと言われても、今夜はとっくに、人生で一番非日常な夜になってしまっていた。
守られている、宮森さんに。そう思うだけで、久しぶりに深く眠れそうな気がした。

翌朝7時に起きて、カーテンを開けると電話が鳴った。結局、不審者は現れなかったという。電話越しに報告する徹夜明けの声に、隠せない疲労の影を見た。
「すみません、ずっと張り込みしてもらったのに収穫なしで」
「いえ、何事もないのが一番ですから。あなたや、市民の皆様が一晩安全に過ごせたのなら、何よりです」
と、最後まで警察官として100点満点のコメントだ。私は昨日からずっと感じていた疑問をストレートにぶつける。
「刑事さんって、お忙しいんでしょう? なんで、こんなに良くしてくれるんですか?」
なんでって、と宮森さんは苦笑した。
「最近ストーカー被害が重大事件に発展すること、多いですからね。通報があったら最善を尽くすように上からも言われてるんですよ」
「警察も大変ですね」
「まぁ、私の場合、個人的な感情もありますが」
疲れのせいか、持ち前の甘い声がかすれてしまっている。妙に色っぽく聞こえていけない。電話の向こうに心臓の音が伝わらないか、心配になった。
「うちの妹も以前、一人暮らしをしているときにストーカーの被害に遭っていたんです。あなたはあのときの妹と同い年で、なんだか他人事に思えなくて。……すみません、私情を持ち込んで。刑事失格ですね」
あぁ、こんな余計なこと言うつもりじゃなかったのに、疲れてんのかな、俺。宮森さんは小さくため息をつく。朝日を浴びる小さな住宅街のどこかで、私からは決して見えない場所で。一晩中守ってくれたあの人の元に今すぐ駆けつけて、疲れた体を抱きしめたいと思った。どこにいるかもわからないから、絶対に叶わない願いだけれど。
「私、昨日からずっとドキドキしてるんです」
「……ドキドキ?」
「はい。あなたに『守る』と言われた瞬間から」
真面目な宮森さんは決して姿を現してくれないだろう。彼はあくまで仕事で私を守ってくれただけなのだ。
だから、私も、いたずらっぽく言ってみるだけ。疲れた彼を、少しでも笑わせたくて。
「宮森さん。これって、恋、ですかね?」
一瞬の沈黙。
そして、案の定笑い混じりに返ってきた答えは、
「……吊り橋効果、だと思いますよ」
おカタイ警察官らしい、至って真面目な正論だった。

あの一夜以来、宮森さんからの連絡はない。慌ただしくもなんとか無事に引っ越しを終えてから、不気味な「気配」が新居のドアを開けにくることもなかった。
私はもう、夜道をふらふら歩いたりしない。隙を見せることもない。だからきっと、あの真面目で優しい刑事さんと言葉を交わす日も一生来ないのだろう。
けれど、電話帳にはいまだに『宮森さん』の名前が登録されたまま。
何かあったらいつでも相談してくださいと言ってくれた、彼の最後の声をお守りみたいに持ち歩いている。低すぎない甘い声、こちらから見えないように情熱を隠した声。
今もきっと、彼は私じゃない誰かに囁いているのだろう。まったく、おカタイくせに、ナンパな人。
これだから男って信じられない。
『大丈夫ですよ。守ってますからね――』

さて、今夜も眠りにつく前に牛乳を飲もう。月明かりの下で。
氷の代わりに、一夜限りの恋の記憶を溶かして。
優秀な日本の警察に、乾杯!

***
この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、店主三浦のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。

 

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2016-08-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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