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体育が苦手な息子の運動会


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記事:中村 美香さま(ライティング・ゼミ)

小学2年生の息子は、体育が苦手だ。幼稚園の時から、体育に該当する『運動遊び』の時間が嫌いで、その時間がある日の朝はいつも泣いていた。小学生になっても、しばらくは、体育のある日に泣いていたけれど、最近は、不機嫌になる程度に変わっては来ていた。それでも
「あーあ、今日は最悪だ。体育がある!」
と言って、大きなため息をつかれると、こっちまで気が滅入ってしまう。

そんな息子にとって、夏休みが明けた途端に始まる運動会シーズンは、体育の時間が増えるから、やはり嫌なのだろう。時間割の中に体育を表す『体』の字が増える度に、不機嫌になっていった。何が嫌なのか、聞いてみると
「着替えるのが面倒くさい」
と言ったり
「運動不足だから、足が去年より遅くなった」
とおじさんみたいなことを言った。
「そうか」
と相槌を打ちながらも、どうにかがんばってもらうしかないと思っていた。

「明日は、小雨、明後日は天気が回復するとの予報が出ています。そのため、運動会は日曜日に延期します。ご理解・ご協力どうぞよろしくお願いいたします」
という連絡メールが前日の午前中にきた。
普通だったら、当日の朝に、運動会をやるか延期するか決めることが多く、前日の連絡は珍しかった。天気予報が、降水確率100%だったからかもしれないが、メールをもらい、大変ありがたかった。それは、もし、天気が微妙で、土曜日の朝に、日曜日に延期と決まった時は、土曜日も、日曜日もお弁当を作らなければならないからだ。迅速な勇気ある決断に感謝した。

そして、日曜の朝を迎えた。学校への登校時間は普段と変わらなかった。違っていたのは、私が、家族と、近くに住む私の両親の合わせて5人分のお弁当を作ることと、旦那が保護者の観覧エリアの場所取りで早めに並ぶこと、そして、息子が背負うものがランドセルではなくリュックだということくらいだった。息子のメンタルのケアをする余裕もないほど、バタバタだったからか、自分で起きて、朝食もしっかり食べて、特に、気持ちの落ち込みも見せずに出かけて行ってくれたのでホッとした。

開会式を終え、応援合戦が始まった。息子は白組だった。背の順は、今まで、真ん中から少し前の方のイメージだったけれど、いつの間にか、真ん中よりだいぶ後ろの方に変わっていた。保護者がそれぞれお互いの隙間から、ビデオカメラで我が子の撮影をする中、我が家も、息子の撮影に夢中になった。やっとの思いで息子が見える場所を確保し、旦那にビデオ撮影を任せた。私は、その隣で、ビデオの液晶画面に映る息子の姿を見ていた。思わず、吹き出してしまうほど、顔をくしゃくしゃにして、一生懸命に応援歌を歌う姿に、笑いながらジーンとしていた。

プログラムのその3つ後に、息子たち2年生のダンスがあった。“こども八木節”というその踊りは、体育着の上に、大きめの黒のTシャツを着て、バンダナを頭に巻き、細いばちのような竹の棒を持って踊るものだった。

実は、バンダナの結び方で、数日前に、一悶着あった。少し前の保護者会で、先生から
「もし、本人が、うまく結べなければ、あらかじめ結んでおいてかぶるようにしておいていいですよ」
と言われていたので、私は、きっと、まだ、結ぶのは難しいだろうと決めつけて、結んだ状態のバンダナを用意していた。しかし、どうやら、練習の時に、他の友だちのほとんどが自分で結んでいたらしく
「結び方を教えてほしい」
と言われたのだった。私は、あまり教え方が得意ではなく、いつも教えてもなかなか息子ができないと、イライラしてしまっていた。そして、そのイライラが息子に伝わり、結果的にもめることが多かったので、正直面倒だった。だけど、息子のやる気をそぐのも、母としていけないと思い、教え始めたら、案の定、うまく伝わらずに、もめた。
「今回は、結んだ状態でいいじゃない!」
と説得し始めたら、側にいた旦那が、冷静に、自分の頭に結んで見せて、教えてあげてくれた。すると、一回で結べて、
「お母さんの説明はわかりにくい。お父さんのはよくわかった」
と言われて、反省したという経緯があった。

当日、児童席の後ろを通りかかると、息子が、焦りながら準備している姿が見えた。他の子は、だいぶ準備が進んでいたのに、息子はまだ、ようやくバンダナをリュックから取り出して、三角にたたみ始めたところだった。頑張れ! と心で応援しながら、側に行って手伝いたい衝動に駆られ、慌てて、保護者席へ向かった。息子が、うまくいかなくて泣いている姿が目に浮かび、苦しくなった。

「プログラム5番。“こども八木節”です」
のアナウンスがあって、息子たちが登場してきた。しっかり、黒のTシャツを着て、バンダナも結んであった。私が用意した、しっかり畳んで結んだバンダナよりも、無造作で髪の毛も少し立っていて、格好よく見えた。

音楽に合わせて、息子たちが踊りだした。保護者会で、作成を手伝った、竹に紅白のビニールテープを巻いたものを、それぞれ両手に持ち、太鼓のばちのように叩いたり、振りかざしたりしながら踊っていた。よく振りを覚えたな! とみんなのことを感心しながら見ていたけれど、途中から、息子の踊る姿にくぎ付けになった!

真剣な顔! 一重で切れ長の目がより鋭く見えた。腕は誰よりもまっすぐに伸び、姿勢もいい! しっかり膝を落とすところ、頭上に重ねたばちをしっかり見るところ、どこをとっても素晴らしかった!

そうか! そういえば、小さい頃から、リズムに合わせて体を動かすことは好きだったな! と思い出した。その頃は、上手ということではなかったけれど、小さい頃からリズム感はあったんだなと改めて感じた。

私が感動していると、横で両親も目頭を熱くしていた。運動会で、まさか、こんな感動をもらえると思っていなかった。だからか、余計に嬉しかった。

その後の50m走の結果は、残念ながら、予想通り、最下位だった。だけど、あの踊りを見せてくれたから、それでいいと思えた。

家に帰り、息子に、踊りが本当に素晴らしかったことを伝えた。すると
「そう? 僕は、そう思わないけれど……」
と言いながら、少し嬉しそうだった。
「ひいき目かもしれないけれど、一番、一生懸命にやっていて、うまかったと思ったよ!」
と言ったら、
「そんなことないよ。みんな、一生懸命にやっていたよ」
と言っていた。自分では、気づいていないらしかった。はたまた、本当に、私が親バカなのかもしれない……。

体育の時間を好きでないのは、もしかすると、先生の言うことをしっかりやろうとすればこそ、思い通りにいかないことに苛立つからかもしれない。それでも、自分なりに頑張ろうとする気持ちがあることを知って、私は嬉しかった。

そして、ふと、子どもを伸ばす3Hというのを、聞いたことを思い出した。

ほめる! 励ます! 視野を広げる!

息子の可能性を信じて、見守ることが大事なんだ。

うっかり
「ダンスをやったら?」
と勧めてしまうところだった。

本人が、もしやりたくなったら、その時にやればいいんだ。自分で考えて、やってみたくなったときに、ちゃんと相談に乗れる親になろうと思った。

 

 

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2016-10-05 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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