人生初の人間ドックは、遊園地だった理由。
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記事:八千子(ライティング・ゼミ)
小さい頃から人間ドックに異様に興味があった。ドックという言葉の意味も知らず、何か秘密めいた出来事が行われているに違いないと思っていた。学生の時の彼氏に「誕生日何が欲しい?」と聞かれて「人間ドックを受けてみたいから、その費用を出してくれない?」と答えて軽く引かれた事もある。
大人になったら、人間ドックを受けてみたい。
ずっとその気持ちを抱えていたが、ついにそれを実現する時がきた。
四捨五入したら40歳。精神的にも大人です、と言い切れないところは自覚しているが、年齢としてはもう中年だ。そろそろ自分で決断して人間ドックを受診するのは健康管理の一環としても良いはずだ。そう自分に言い聞かせ、人間ドックを受診する決意を固める。
受診コースを選ぶことからワクワクした気持ちが高まってくる。この検査オプションをつけようかな? ここの病院は人間ドック後にランチがついているのか。さて、どうしよう。どの受診コースにしようかな。数日間悩みながら胃カメラや婦人科検診のある30代の女性にお勧めですと紹介されている受診コースに決定し、えいっと申し込む。
数日後、病院から問診のための記入用紙や受診前日からの注意事項が一式郵送されてきた。当日の検査スケジュールや、前日の夜21時以降の食事は禁止、検便の注意事項、受診当日に申込みをすれば可能である血液検査のオプション紹介など、事細かに詳細が記されていた。じっくりと読みながら、これは私にとって「遠足のしおり」と同じだと感じた。事前の注意事項や、当日の予定、持ち物などまだ数日先の話だけれど、読んでいるときから、ちょっとした不安とワクワクする気持ちが高ぶってくる。
人間ドックで何か大きな病気が見つからないとも限らないが、ワクワクした気持ちで数日間を過ごし、ついに明日、人間ドックだと思うとなかなか寝付けない。明日の遠足が楽しみで目が冴えてしまって眠れない子供のように、期待と緊張で夜を明かした。
人間ドック当日の朝。問診票、持った。検便キット、持った。病院の地図、持った。鞄の中の荷物を何度も確認し、いざ出発。朝食を抜かねばならない為、空腹を抱えながら、遅れては行けないと予定の時間より少し早めに家を出る。
指定されていた時間より少し早く到着した病院で速やかに受付を済ませる。受付で手渡された検査着に着替え、看護師さんに誘導されるまま検査の順番を進んでいく。それぞれの検査自体はこれまでに受診したことのある内容も多い。眼科検診、血液採取、レントゲン……。体験済みの検査は、コーヒーカップや、メーリーゴーラウンドのように、「ああ、これね。前に乗ったことあるから知ってるよ」という気持ちもあるが、高揚した気持ちと安心感から、看護師さんとの和やかな会話を弾ませ、一つずつ検査を受けていく。
「次の検査は胃部レントゲン検査ですので、1階に移動して下さい」ついにきた。いわゆるバリウム検査と言われている、本日のメインイベント。ジェットコースターに乗る時がやってきた。既に何人も順番待ちで並んでいる。前の人の悲鳴こそ聞こえてこないが、待たされているとドキドキが止まらない。メインアトラクションに乗るまで、一歩ずつ進んでいく。
名前が呼ばれ、バリウムを飲む説明や、台に乗ってからの指示を受ける。安全ベルトをお締め下さい。走行中は立ち上がらないで下さい……。乗ってしまえば、あっという間に進んでしまう。私の意思とは関係なく、検査はあれよあれよという間に終わってしまう。なんだかとってもあっけないけれど、無事に終わってホッとした。
「最後に問診がありますので、こちらでお待ち下さい」と看護師さんに指示され、バリウム検査後に受け取った下剤を飲み、水分を摂りながら待っていると、私と同じ検査服を着た人達が、あちらです、こちらですと指示を受けながら目の前を通り過ぎていく。自分の意思で検査を受けに来ているのに、ここでは自分の意思とは関係なく順番にアトラクションをこなしていくしかない。
最後の問診を受け、いくつか健康上の指摘を受けたため、会計時に血液検査のオプションを追加することになる。そんなはずじゃなかったけれど、ジェットコースターで撮影された写真を買い取ることになったな、と思いながら検査着を脱ぎ、帰り支度を始めた。楽しい時間が過ぎるのはあっという間だった。事前に経験していたこともいくつかあったけれど、非日常的な体験はあっという間に終わってしまった。終わってしまえば、たいしたこと無かったな。でも、楽しみにしていた気持ちは嘘じゃない。遠足は前日の準備が一番楽しいものだと思う気持ちと同じだった。
人生初の人間ドックは、小学生の頃の気持ちを甦らせてくれたとともに、自分でも気付かない健康の問題を気付かせてくれた。子供のころに戻ったような気持ちになったのは何時ぶりだろうか。初めてだからこその期待と不安。何年か後に、また人間ドックを受けることになっても、遠足に行くような気持ちにはなれないだろう。
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