メディアグランプリ

「生きづらい」と言うのは「おもちゃ買ってー!!」と泣き叫ぶことと同じなのかもしれない。


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記事:との まきこ(ライティング・ゼミ)

 

「そんなふうに真面目に考えちゃうから、私たちは生きづらいんですよ!」

 

 

智恵子からLINEでメッセージが送られてきた。仕事のことで相談があるから夜に電話していいか、という内容だった。

はて、引き継ぎ不足のことがあったかな。辞めてから半年もたっているから、今さら何か訊かれても困るなと思いながらも、「電話待ってるよ」とメッセージを返した。

 

智恵子は、私が以前働いていた職場の後輩だ。

顔はお人形さんみたいにかわいいし、全体的にいわゆる「ゆるふわ系」な雰囲気だ。三十代半ばだが、十歳は若く見える。

 

ただし、黙っていれば。

 

ひとり旅なんて朝メシ前、ひとり居酒屋、ひとり焼肉、ひとり(回らない)寿司なんてのもへっちゃらな男前。ともすると、店に居合わせたおっちゃんたちと仲良くなって、飲み代を全部おごってもらうなんてこともあるらしい。

若干前のめりなところはあるが、仕事は早いし、いつも100%の力でアウトプットする。顧客からの評判もいい。すきあらば手を抜こうとするトウが立った私とは大違いだ。

外側は「ゆるふわ系」、内側は豪快かつ有能。智恵子はそんな人だ。

 

でも、不器用なところのある智恵子は、痛い目に合うことが多い。とくに職場で。

智恵子は契約社員だ。ほかの正社員よりよっぽど成果を出しているのに、なかなか正社員になれない。

それから、課のチーママ的な立ち位置の男に、陰湿なイヤミを言われ続けているらしい。

それから、顧客に気に入られていることを、お局さまたちにねたまれているらしい。

それから、それから……。

 

私は、愚痴や悪口関係は5割減で聞くことにしている。でも、5割減で聞いていても、智恵子自身がもう限界に来ているような気がした。

 

智恵子は会社でのつらいことを話し、私はひたすらふむふむと聞いているのだが、どうにも彼女が電話してきた意図が読めない。「相談がある」と言っていたはずなのに、「どう思うか」とか「どうすればいいか」といった言葉が彼女の口から出てこない。

アドバイスがほしいのか、それとも相談といったのは口実で、ただ聞いてほしいだけなのかはっきりしてくれないと、延々と話を聞くはめになる。あいづちマシーンと化す私のいつものパターンだ。

はっきり聞けばいいのだろうが、こういうちょっと弱っている人には、それもなかなかしづらい。

 

でも、しょっちゅう連絡を取り合っているわけでもない相手にわざわざ電話をかけて、愚痴を聞いてもらっておしまい、ではないだろう。

智恵子もこの話にオチがないことを感じているような気配が、受話器越しに伝わってくる。彼女が、自分の迷いを口に出せないでいるような感じもする。

 

だから、私自身の話をしてみることにした。

やっていた仕事がまったく何の役にも立っていないような気がしたから、仕事を辞めたこと。

新しい仕事の話もあったけれど、共感できない会社には入りたくないと思って断ったこと。

お金のために好きでもなければ、自分で納得もできない仕事を割り切ってすることはできなかったこと。

いい歳をして、なんとも青臭い。

 

「私も同じです。そんなふうに真面目に考えちゃうから、私たちは生きづらいんですよ!」

智恵子は、私の話したことに同感だという意味を込めてこう言った。

難しいこと考えないでお金さえもらえばいいのよ、などと言う人もいるから、共感してくれるのは私も素直にうれしい。

確かに、仕事の意味なんか考えずに稼げばいいし、仕事は仕事で割り切って、生活の安定を優先して生きていれば楽なのだろうとは思う。それができない智恵子や私のような人は、いささか面倒くさいやつらだ。

 

だからといって、そういう生きかたができないことが「生きづらい」ということとイコールではない気がする。

生きづらいと思うのは、周りの大多数に合わせようとしているからではないだろうか。自分と合致しないものに無理やり合わせようとするから、苦しくなるのだ。だけど、それは誰に強制されたものでもなく、自分で選択した行為の結果なのだ。なのに、自分で選んだというその事実に気づいていない。

だから、周りを悪者にして自分の生きづらさを正当化している。上司が、会社が、社会が、制度が、時代が……と。

そんなのは、おもちゃを買ってもらえなくて泣き叫ぶ子供と同じだ。自分の思う通りの生き方が手に入らないから、泣き叫ぶかわりに文句を言う。

 

なんてえらそうに書いたけれど、この原稿を書きながらそんな考えに至ったばかりの、できたてほやほやの持論&仮説である。こうしてえらそうに書いているそばから、私も明日にはおもちゃほしさに泣き叫んでいるかもしれない。

 

 

 

智恵子に「辞めれば」と言ってみた。

 

「やっぱり、そうですよねー!」

彼女は待ってましたと言わんばかりだ。

なんだ。辞めたかったんだ。そうならそうとはやく言ってよ。

 

「私、独身だし、将来のことを考えると、頑張って正社員にならなければと思っていたんです」

と智恵子は話した。

なんだ。そんなことにがんじがらめになっていたのか。

 

会社の求めるものに自分が合わせられないのなら、会社を変えるか、そこから離れるか、自分を殺すか……、ん? ほかにもあるのかな。

とにかく選択肢が一つしかないと思えば、どうしてもそれを手に入れたくなる。手に入らなければ、地べたにひっくり返って泣き叫んででも得ようとする。

けれど、おもちゃは一個ではないし、与えられるだけのものでもなくなった。大人になった私たちは、自分でおもちゃを手に入れることができるようになったのだから。

 

 

来週、彼女に会う。どんなおもちゃを手に入れたのか見せてもらうのが楽しみだ。

 

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2016-11-16 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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