メディアグランプリ

変なあだ名をつけられるのが、むしろ好きだった理由


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:吉田裕子(ライティング・ゼミ)

大学に入って不思議だったことの一つに、「大学生はやたらあだ名を付けたがる」ということがありました。

クラスやサークルで自己紹介冊子を作ると、そこには必ず「あだ名」「ニックネーム」の欄がありました。団体内の掲示板とか、メーリスとかに投稿する際には、そのあだ名を使って投稿することが多かったように思います。

吉田だからヨッシーみたいな、ベタなあだ名もあった一方、大人になって振り返ると、ちょっとこっぱずかしいものもありました。

今でも覚えているのが、「ジェル」。最初は何かいじめられているのではないかと思いましたが、由来は「エンジェル」。「天使のように良い人だから」とのことでした。そんな良い人なのに「ジェル」かよ、と笑ったものです。

そして、かく言う私は、友人たちから「セブン」と呼ばれていました。

このあだ名の由来、何だと思いますか?

名前に7が関係するから?
(私は吉田裕子です……)

ウルトラセブン?
(時代が違う……)

セブンスター?
(当時18歳です。タバコ吸いません……)

正解は、セブンイレブンでした。

大学のそばのセブンイレブンのあるビルに住んでいた。ただそれだけで、私のあだ名は「セブン」になりました。

……セブン(苦笑)

サークルの人といるときに、クラスメイトから「セブン!」と呼ばれると、「え?」という顔をされたものです。

クラスでカラオケに行くたびに、サザンオールスターズの『エロティカ・セブン』を入れられるという、イジられ方もしました。あれです。「わーれは、エロティカー、セブン、セブン、セブン……」というやつです。

セブン。この無機質なあだ名は、元の名前とも、体や性格の特徴とも、何も関係のないあだ名です。でも、ずっと呼ばれていると、愛着が湧いてくるものです。歳を重ねて、今は、当時のクラスメイトも「セブン」とは呼ばなくなってきましたが、それを少しさびしく感じています。

思えば、あだ名がつくとなると、変なあだ名がつくことが多かったものです。

高校時代、演劇部の仲間からは「おやじ」と呼ばれていました。呼ばれ始めた経緯は忘れてしまいましたが、たしか、演劇部を引っ張る部長だから「おやじ」とか、そういうことだったと思います。

一癖も二癖もある人間の集まるのが演劇部。他にも「ジョニー」や「教祖」がいましたので、「おやじ」が浮くことはありませんでした。でも、演劇部の仲間が、教室に教科書を借りに来たりすると厄介でした。教室の入り口で、
「おやじぃ!!」
と叫ばれると、そこに出て行くのはちょっと恥ずかしかったものです……。

中学時代にさかのぼると、中1の頃のあだ名がなかなか変わっていました。

「原人」です。

中学1年生のうら若き乙女を捕まえて、「原人」はないだろうと思うのですが、「おい、原人」というようなノリで呼ばれていました。別に、いじめられていた、というわけではないと思います。

あだ名の付いたキッカケは、本当に幼い、他愛のないものでした。

当時、英語を習いたてで、英語に興味のあった中学1年生の私たちは、学級文庫に置かれた英和辞書や和英辞書を使って、色々な単語を調べることにハマっていました。

その遊びの中、和英辞書で悪口・軽口の単語を調べ、相手のノートなどに書き込むことも流行りました。

「Foolish」(バカ!)

「Childish」(ガキ!)

書かれた側は英和辞書で、その意味を調べてプンプンするわけです。

そんな中で、ある男子が私に「Primitive man」と書いたわけです。それを英和辞書で調べた私は、「はー!? ふざけんなよぉー」とか、「せめてPrimitive womenだろ!?」とか、色々なことを言い返したわけですが、それがそのままあだ名になりました。

中1の女子が「原人」と呼ばれているのもヘンな話ですが、私はそれなりに気に入っていました。単純な話ですが、その男の子が好きだったからです。その子と、上記のようなエピソードを持ったということが、何だか嬉しかったのです。

セブン。

おやじ。

原人。

どれも珍妙なあだ名でした。

でも、私はこの珍妙なあだ名それぞれを愛していました。呼ばれることを嬉しく思っていました。

それは、長年の愛着ということもありますが、むしろ大きいのは、その珍妙なあだ名以上に、嫌な呼ばれ方があったことです。

あだ名で呼ばれるよりも、はるかに多く呼ばれる機会のある、とある呼び方が嫌いだったからなのです。

その呼び名は、

「吉田さん」

でした。苗字に「さん」付けです。

私は、中学生の頃から、さん付けで呼ばれる傾向があり、特に高校生になると、演劇部以外の場では、ほぼ「吉田さん」と呼ばれました。苗字が「吉田」だから「ヨッシー」というように、何かしらのあだ名がついても良さそうなものなのに、私はあまり、あだ名のつかないタイプでした。

吉田さん。

大人になった今では、そんな風に呼ばれることの方が、むしろ当たり前です。でも、高校生のとき、苗字+さん付けというのは、決して多くはありません。

吉田さん。

この「さん付け」は、10代後半の私には、とても冷たい響きに聞えました。

野球に「敬遠」という言葉があります。バッターを恐れ、まともな球を投げないことですが、この「敬遠」に近いモノを感じていました。「さん」を付けることで、尊敬したり尊重したりしていることを表現しているのだろうけど、それと同時に、遠ざけられている感じがしました。

吉田さん。

そう呼ばれるたびに、距離を置かれていることを痛感して、さびしくなったのです。

だからこそ、それが「セブン」だろうが、「おやじ」だろうが、「原人」だろうが、「吉田さん」よりも嬉しかったし、好きになれたのです。

大学生がやたらあだ名を付ける。それもきっと、仲良くなりたいからこそ、なのですよね。仲が良いから付ける場合もあるでしょうが、これからもっと仲良くなりたいという思いをこめて付ける場合も多いのでしょう。

大人になった今、私は、学校や塾で教えることを指導にしました。そうすると、基本的には「先生」「吉田先生」なんて呼ばれているわけですが、時々、うっかり者の生徒がいます。つい、裏で呼んでいるあだ名で呼んでしまうことがあるのです。

「吉田ちゃん!」

「ゆうこ!」

なーんて呼ばれてしまうことがあるのです。生徒同士で何と言っているかが、バレてしまうことがあるのです。

これは立場上、私は叱らなくてはいけないのかもしれませんが、私は何だか叱れません。

無礼さよりも、そこに込められている親愛の情を、つい愛してしまうのです。

 

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2016-12-01 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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