メディアグランプリ

自転車からはじまる小さな冒険のはなし


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:口中大輔(ライティング・ゼミ)

僕は自転車で町を走るのが好きだ。

今、住んでいるのは天神からそう遠くない街の中。
利便性の良いところではあるけれど、
時には福岡空港に飛行機を眺めに行ってみたり、
すこし離れたアウトレットモールに買い物しに行ってみたり、
片道5キロくらいでなら自転車で向かうことはなんてことはない。

初めて会う人に「自転車好きなんですよ」なんて話してみると、
10人に1人くらいは「私も自転車に乗るの好きなんです!」という返事がきたりする。
おお! 共通の話題! 会話も弾む!
……と思いきや、どうも話が合わないこともしばしば。
どうやら僕の感じている自転車の魅力は、ちょっと変なところにあるらしい。

自転車移動のメリットとって何だろう。
移動手段としてみれば交通費もかからないし、エコだし、健康的だし、
車両にこだわればお洒落なアイテムにもなるし。

確かにこれらは僕からしても魅力的。
しかし、悲しいかな、
僕はお洒落に鈍感な質だし、
節約だのダイエットだのと言った目標では、容易く意思が折れがちな性格だ。
こんな理由でチャリを使っていたなら、
きっとこの生活は続いていないんじゃないかと思う。

僕にとって自転車の魅力。
それはなかなか言葉にしづらいのだけど、
敢えてまとめればこんな風に表せるのかもしれない。

「自転車は映画みたいな世界に連れてってくれるもの」

映画館でのお話。
照明が落ちて暗闇の中。
しばらくすると始まる物語。
画面から迫る映像と音。
そして物語の世界観が、わわっと僕らを包み込む。
主人公とともにドキドキし、時に笑って、涙する。
物語は終わりを迎え、
エンドロールとともに再び照明が薄く灯ったとき、
はっと現実に戻されたような感覚を覚える……
「あぁ、あの夢の世界、楽しかったなぁ」
こんな思いとともに。

一方、自転車のお話。
毎回通る、いつもの帰り道。
繰り返しているとやっぱり飽きても来るものだ。
そんな時は、ふと1本だけ路地を変えて家路を目指してみる。
確かに「いつもの場所」に向かってるはずなんだけど、
そこに流れる、普段、僕が知らない日常時間。
よそのお宅にお邪魔した時のような、
少しの居心地の置き場所の困る感じを覚えつつ、
どことなく不思議な空気感の中を走る……

そんな時のドキドキやワクワク。
これにデジャブを感じて、
自分なりの答えを探してみたら、
「あぁ、映画館で映画を見たときのあれか」
という答えに落ち着いたのだ。

思えば僕は、
小さなときからこれまでずっと、
愛しの自転車でたくさんの「冒険」をしてきた。

向かいに住んでいた「ひでくん」とともに、
補助輪を外すかどうかの幼い時から、それはもうあっちこっち走り回っていた。
お隣の小学校校区になろうかという遠い場所の公園まで遊びに行って、
時も忘れて遊んでいたときなんか、
「もうすぐ陽が落ちるのに、あの子たちが帰ってこない、いったいどこへ行ったのかしら」
と親たちを心配させ、こっぴどく怒られたなんていう思い出もある。

中学に入ってからもそれは変わらなかった。
近所に、ひとむかし前まで鉄道の線路道だったという道路があった。
今は自動車が走る、その廃線跡をたどれば、その先にはどんな町があるのだろう。
そんなわくわく感から、ただひたすらに西へ走ってみたりしたこともあった。

京都での学生時代はそれに拍車がかかる。
博多でしか暮らしたことのない僕が、何も知らない町に放たれたのだ。
そこには冒険しかない。
こんな忘れられない経験もあった。
サークルがある大学の裏手にすこし小高い山があった。
その山にどんな「僕の知らない日常」があるのか気になって、
住宅ひしめく細い路地を自転車で縫ってみた。
ようやくたどり着いたその先に、厳かな人気少ない神社。
しかも、そこに着くやいなや、雷様とともに激しいにわか雨。
境内の軒先で雨宿りした後、空に架かる虹。
狐でも出てくるんじゃないかと本気で思った。

きっと僕は「自転車そのものが好き」というよりも、
こういう「僕の知らない世界の空気感」を吸いたくて、
身近な異空間に連れて行ってくれる「自転車」が好きになったんだと思う。
だから、自転車ブランドの話だとか、健康のためとか、節約だとかいう話と、
どこかあわなかったんだなぁ。

今日もテレビからいろんなニュースが流れてくる。
近くの町のどこどこ何丁目で火事があったとか、
今日は〇〇商店街からの中継でございますだとか、
様々な風景が僕らに届けられる。
でも、なんとなく聞いたことある町名であっても、
なんとなく知っているだけだから、いまいち自分の日常とは連結していない。
なので「えっ!?」ではなく「へー」で終わってしまうこともしばしばだ。

意外と自分の見知った景色は限られているものだ。

でもね、そう。
自転車はだったら、そんな僕らのまだ知らない景色に簡単に連れて行ってくれるのだ。
普段の道をたった1本外すだけでいい。
今日はひとつ向こうの駅までペダルを漕いでみるのでもいい。
ほんのちょっぴりした冒険。
思い返せば、僕が気に入った本屋さんや雑貨屋さんやcafeは、
みんなこうした「小さな冒険」の途中で出逢ったものばかり。

毎日にドキドキを。
毎日をワクワクで。

こんなおもしろい世界を教えてくれるんだもの。
これからも小さな冒険書を自転車で開いていこう。

***

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2017-01-07 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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