結婚ラッシュと閉店間際のスーパー
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記事:ときね(ライティング・ゼミ)
「・・・・・・無い」
仕事が終わって、閉店間際のスーパーに来ると、たまに空振りしてしまう。
いつも買っている6個入り卵のパック。特価の札がついた食パン。
「買おう」と心に決めてきたものが売り切れている。
残っているのは、ひとりで使い切るにはちょっと消費期限が気になる10個入りの卵や、うずらの卵。食パンは高級志向な商品しか残っていない。いつも買っているものと、いくら値段が違うのだろうか・・・・・・。
ちょっとその日の料理の手を抜いてお惣菜を買うにしても、半額シールが貼られたあとのお惣菜は、他の時間帯よりも随分と減っている。あとから来る人もどんどんお惣菜を取って行って、お惣菜は売り場から消えていくばかりだ。
想定外の状況に、焦る。焦っている間にも閉店時間は迫るし、売っているお惣菜は減っていく。
焦ったところで、選択肢は売っているものを買うか、買わずにお店を出て他の店に行くか、また別の日に出直すかくらいしかないのだけれど。
周りの様子になんだか焦ってしまう場面が、私にはもう1つある。
友人の結婚ラッシュ。
「星野さんも、結婚か・・・・・・交際何年だっけ? 一緒に住んでるあのふたりも、近いうち結婚するんだろうなあ・・・・・・」
27歳。それまではあまり感じなかったけれど、だんだん私のSNSのタイムラインにも、結婚報告や、結婚の準備をしている様子が現れるようになっていた。
おめでたい。祝福の気持ちは十分にある。その一方で、なんだか焦る。
この先の人生、私は結婚できるのだろうか?
ちなみに、恋人もいなければ、恋の気配も今のところまったくない。書いていて悲しい。
他人は、他人。自分は、自分。
これこそ、焦っても仕方ないことなのに、どうして心は焦り、ざわつくのか。
「休みの日には婚活とかしてるの? 行ってみたらどうなの?」
という母からの電話にも追い打ちをかけられている気がする。
きっと私は、無意識に「母の理想通りにしておきたい」と思っているのだ。
私の母は、ほとんど褒めてくれない人で、テストで90点台を取ってきても「どうせなら100点取ってくれば良かったのに」と言う人だった。
「テストで良い点を取る」「大学に合格する」「安定した企業に就職する」
このあたりは、私と母の理想はほぼイコールだったから、私は私の意志で母の理想の道を進んでいた。
しかし、「適齢期に結婚する」
この理想はすぐには叶えられない。お相手の要ることで、一人でどうにかできることではないのだから。
それでも、母の理想通りにした方が自分の心は平穏に保たれる、と無意識に思っている。
なるべくなら、母に婚活のことなど聞かれたくないもの。
心の平穏のために理想に沿いたいのに、理想通りにはならない。
そのことに、焦るのだ。
「テストで良い点を取る」「大学に合格する」「安定した企業に就職する」「適齢期に結婚する」
母の理想は、おそらく世間一般的にもよく望まれる理想だと思う。
だからこそ、そのよくある理想の道から外れてしまうことに不安を覚える。
結婚もできない、人並みの人生も送れないダメな私。
そんな風にはなりたくない、と。
友人の結婚ラッシュはそういう焦りや不安を呼び起こす引き金なのだろう。
と言いながら実は今、母の理想から少し外れた生活をしている。
転職しても地元に戻らず、福岡で一人暮らしを続けることは、自分だけの意志だった。
「地元で働く」という母の理想には外れた。
別に、母の理想の道から外れても、「人並みの人生も送れないダメな私」ではないし、私はちゃんと福岡で生きている。大丈夫なのだ。母には悪いけれど。
恋人はいないけれど、仕事と趣味に関しては日々充実しています。
買う予定のものが売り切れてしまっている閉店間際のスーパーで、焦りながらもその後の買い物をどうすればいいか考え、他の商品を買って帰ることができるように。
友人の結婚ラッシュに焦りながらも、他人は、他人。自分は、自分。ちゃんとわかっている。
焦りや不安に支配されず、これからどう生きるか、考えることができる。
それが理想の道でなかったとしても、前向きに進むことができる。
閉店間際のスーパーと同じように、焦っている間にも、歳はどんどんとっていくし、周りの結婚ラッシュはこれからも続くだろう。
焦ったところで、選択肢は、ご縁を待つか、探しに行くか、開き直って仕事と趣味に励むかくらいだろうか。
婚活市場を考えると、20代のうちに頑張ったほうが良さそう。
「結婚したい!!」なんてメラメラ燃えているわけではないけれど、20代も残り3年、やるだけやってみますか。
この記事を投稿し終わったら、婚活パーティーを検索しよう。
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