メディアグランプリ

押し付けられた押し活と日常プレゼン


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記事:ナギハネ(ライティング・ゼミ4月コース)
 
 
「ジニかっこいい♪」
「前髪作ってる! やば」
女子高生の娘が目をキラキラさせて話しかけてくるが、私には何を言ってるさっぱり分からない。楽しそうに、嬉しそうに動画を私に見せてくる。
 
興味のない者にとって、他人の推し活ほど煩わしいものはない。だから私は自分の推し活を他人に話さない。推しを否定されるのもイヤだし、相手が嫌がるであろうことを知ってるからだ。
 
ところが家族となると、タガが外れる。馬耳東風でもいいから話を聞いて、となる。3年ほど前、私はとある歌劇団に沼った。沼りたての頃、推しがどんなにかっこいいか、夫と娘に熱く語っていた。「へえ」「ほんまにぃ」と2人は無表情ながらも、相槌をうってくれていた。
 
一方、時を同じくして3年ほど前、中学生だった娘は、とあるKPOPグループに沼った。
小学生の頃にコンテンポラリーダンスを習わせていたこともあり、毎日スマホから音楽を流して踊っている。
 
夫は愛おしげに目を細め、踊る娘の様子を眺めているが、掃除に洗濯、夕食の準備、と忙しなく動いている私に余裕はない。とはいえ、私も家族に推し活話を熱心に語っていた時期があったのだ。夫と娘同様、馬耳東風とはいえ、うなずいてあげていた。
 
ところが、である。彼女の推し活がグッズへと深化していくと、馬耳東風では済まなくなった。
サブスクで聴けばいいのに、限定盤のCDが欲しいといいだした。ハイタッチ券があたる、と騒いでいる。当然、未成年の彼女にネット購入させるわけにはいかない。親が代わりに買ってあげなければならない。
 
「買い方ようわからんからパパに頼んで」
「パパ、仕事やもん」
 
すぐにソールドアウトになってしまうので、今すぐ買ってほしいという。推し活の気持ちは痛いほどわかる。しゃあないな。なんか怖いなあと思いながら海外のサイトにアクセスしてカード情報を入れた。これでいいねんな? ちゃう! これ! どれよ? はよせな売り切れる! やいやいケンカしながら無事購入。
それからも、あれを買って、これをお願い、と大変な日々。
 
それに加えて、タスクが増えた。夜、家事を終えて一息つく時間、娘が私の前で踊り出すのが日常になっていた。ただ踊るだけではない。しっかり見て!  と頼まれる。普通にうまい。そう、コンテンポラリーダンスを習わせたのは私だ。親のエゴの習い事の弊害なのか? と思いつつ、しっかりと娘の踊りを目に焼き付けざるを得なかった。
 
そうだよな、娘があんなにキラキラして私に話してくれるなんて、幸せだよな。私は素直に娘の推し活を日常として楽しみはじめていた。それぞれの推し活にいそしむ仲良し親子。この構図の中には、娘の思惑があったとも知らずに。
 
家族を巻き込んで、娘が日常にKPOPを取り込んで数年後の現在。
先月、私の推しが、とある歌劇団を退団した。とてつもないロスと共に、私の推し活は終わろうとしていた。
 
そのタイミングで、娘にとっての大事件が起こった。
推しであるKPOPグループが、多くのメディアが注目するイベント会場で人種差別発言を受ける、という事件が起こった。娘の憤りは半端じゃなかった。
 
何気なく、本当に何気なく、ネットでその事件の詳細を調べてみた。事件が起きた動画を見て、思わず涙がにじんだ。
煌びやかな会場入口で、見目麗しい男の子たちが、ひどい言葉をなげつけられ、それでも気丈にふるまってる!
 
どんな子たちなの?
YouTubeで検索してみたら。とあるオーディション番組に行き当たった。
ぽろりと涙がこぼれた。
デビューを目指し、彼らが奮闘するまでのリアリティ番組だ。無事デビューが決まった最終回をみただけで、涙ぐんでしまったのだ。
 
この番組、最初から見てみたい。
私の願いは簡単にかなった。KPOPの推し活女子たちの熱意はすごい。ファンたちが、韓国語の番組に字幕を入れてミックスリストでアップしてくれてる!
 
やだ、作詞作曲も自分たちだけでやってるの?
数ヶ月にわたる番組動画は、18本以上あったと思う。3日ほどで一気見した。気づけば、泣いたり笑ったり、喜んだり。彼らの成長を見守り涙を流し、心震わせる私がいた。
 
ライブに行きたい。
調べてみると、今年、ワールドツアーで日本に来る可能性があるという。
 
ファンクラブに入らねば。
本会員とモバイル会員があり、2つ入ると優先チケット販売に参加できるらしい。年間数千円? 月数百円? 女子高生の娘にとってはハードルが高いだろうが、とある歌劇団に投資していた私にとっては安いものだ。
 
「ジニよりチャニがええわあ」
「チケット、取るで」
次の推しを見つけた私は、キラキラと娘に語った。
 
スマホ画面に目を落としていた娘が、うなずきながらにやりと笑った。我、戦略勝ちなり、と言わんばかりの表情だった。
 
その表情を見て、思い出した。
娘が小学生の時、「好きなマンガとか、ママにすすめたらいいねんて。そしたらママが夢中になって、全巻そろえるからって友達がゆうてた」と私に少女マンガをすすめてきたことがある。
 
そう、万単位になるライブチケットを手に入れたい、という数年にわたる娘の日常プレゼンは、完全勝利に終わったのだ。
 
 
 
 
***
 
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2024-06-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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