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メディアグランプリ

天狼院書店にはたくさんのキツネがいた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:かのこ(ライティング・ゼミ)

 

――生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。

さっきからもう何十回もシェイクスピアの名台詞が頭の中をぐるぐるしている。

2016年もあと僅かという年の瀬に、私は通っているヨガスタジオで今にも干からびそうになっていた。

 

ヨガのポーズのひとつに太陽礼拝という一連の動作を行うものがある。今回私が参加した「108回太陽礼拝」とは、発祥は諸説あるらしいが、煩悩の数とかけて108回この動作を繰り返していくものだ。主に、年末の日本でしか行われていないらしい。ヨガは自分のペースで無理をしない、という大前提があるのにまるで苦行のような行事を勝手に作り出してしまうところはいかにも日本らしい。

 

健康と美容の為にヨガを始めて早10か月、途中でライティングゼミに通い始めたこともあって、私のヨガ習得度はいまだ初心者に毛が生えた程度だ。そのレベルならば大人しく基礎レッスンに通っていれば良いものを、特別レッスンとか期間限定とか、そういう言葉にとかく弱い私は、いつもの倍のレッスン時間に少し怯えながらも寒空の下を意気揚々と渋谷のスタジオに向かっていた。

 

スタジオに着いてみると、予想をはるかに上回る人数で溢れかえっていた。

幸い早めに行ったおかげでお気に入りのスペースは確保できたが、それでもちょっと油断するとすぐに隣の人と腕がぶつかりそうになる。

「それでは、始めていきましょう――」先生の一言で、長い2時間が幕を開けた。

 

 

10回終わるごとに、先生が合図のベルを鳴らしてくれるのだが、30回目を超えたくらいからはもはや疲労で、これが何回めのベルなのか分からなくなっていた。始まる前に行ったはずなのに、緊張のせいかだんだんとトイレにも行きたくなってくる。でも、途中で休んでもいいですよ――、と先生は言ってくれてはいるものの、周りを見渡しても誰ひとりとして休んでいるものはいない。全員が完璧に、というわけではなかったが、それでも一つポーズをお休み、くらいで再び皆シークエンスに戻っていく。

 

ここで私だけ脱落するわけにはいかない……それは、自分との闘いとか、そんな綺麗な思いからではなかったと思う。周りの人達が必死に頑張っているのに脱落するのがただ恥ずかしかっただけだ。床についた掌にじんわりと痛みを感じ始めた。意識が朦朧としてくる中、それでも何とか遅れないように必死にポーズをとっていると、ふっと先生の明るい声が聞こえてきた。

「はい、あと20回――!」

 

 

えっ! もう私そんなに頑張っていたの?

高校生の時、体育のマラソンであと1週! と言われた時のようなやる気が再び全身にみなぎってきた。そこからはもうあっという間だった。

「いまのポーズで最後です――みなさんお疲れ様でした!」

終わった――!! やり遂げたんだ!! 私は喜びに打ちひしがれていた。まさか、108回やり遂げられるとは思わなかった。2時間の間、ただ終わりだけを目指して自分一人でひたすらポーズをとっていたけれど、恐らく周りの人達がいなかったら30回くらいのところで脱落していただろう。つらかったけどこの達成感はやみつきになりそうだ、と早くもお休みのポーズをとりながら来年の年末のことを考え始めていた。

 

 

ヨガは元来、自分と向き合うひどく個人的なものである。ライティングだって本来はそうだ。でも、天狼院のライティングゼミは少し違った。その名の通り大学のゼミや部活や、アルバイトの時のことをよく思い出させた。

 

この週末から今日にかけて、ゼミ生の皆が投稿した最後の記事を読んでいて、不思議と涙がこぼれることが多々あった。結果的に通信が多くなってしまった私は、顔を合わせて話したことのあるゼミ生は少ない。でも、「星の王子さま」に出てくるキツネにとって、はじめは星の王子さまは他の10万人の男の子と同じだったのに、王子さまと会う回数を重ねてだんだんとお互いに懐いていき、やがて金色の麦畑を見ただけで、金色の髪色をした王子さまを思い出してしまうようなかけがえのない存在になったように、実際にはあったことがなくても、この人の考え方は素敵だな、面白いな、とだんだんと記事を読むことで幸せを感じるようになっていた。

 

記事が上がってくる週末から月曜にかけては、皆は今回はどんなものを書いてくるんだろう、とどきどきしたし、それまでの毎日とは違って見えた。

知らず知らずのうちに、私の生活に光をもたらしてくれていた。

来週からはもう上がってくる記事を読んだりすることもなくなるのだと思うと、とてもさみしい。

 

そして書くほうにしても、108回太陽礼拝が自分ひとりでは成し遂げられなかったように、この4か月間、50人以上のゼミ生達と共に切磋琢磨してこれたことで、少しは自分の書ける範囲も広がってきたのではないかと思う。一人で三浦さんの指導を受けていたら、あっという間にくじけていたかもしれない。

 

108回太陽礼拝の後は、今までで一番強烈な筋肉痛がやってきた。3日以上も、痛みが取れなかったことなんて人生で初めてだ。体にかなりの負荷が掛かることから、きっちりとトレーナーが付いていない場所で行うのは危険だという声もある。

でも、筋肉痛が起こるのは、筋肉が成長している証拠だ。

私の心に湧き上がってきたこの喪失感も、きっと次へのステップなんだろう。私はまだ、次に進むゼミも決めていない。でもいつかまたどこかで、このゼミの卒業生に再会することが出来るよう、明日からも書き続けていきたいと思う。

 

 

 

*** この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。 「ライティング・ゼミ」のメンバーになり直近のイベントに参加していただけると、記事を寄稿していただき、WEB天狼院編集部のOKが出ればWEB天狼院の記事として掲載することができます。 *この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2017-01-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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