マーケティング・ゼミ

仕事も恋愛も人間関係もすべてうまくいくたった一つの法則《マーケティング・ゼミ》


*この記事は、「天狼院マーケティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

未来を変えるマーケティング教室「天狼院マーケティング・ゼミ」〜「通信販売」も「集客」も「自社メディア構築」も「PR」も、たったひとつの法則「ABCユニット」で極める!《全国通信受講対応》

記事:三原明日香(マーケティング・ゼミ)

「私、自分にしか興味がなかったんだな」
本を閉じたとたん、そう思った。
幼い頃から、人が怖かった。いわゆる対人恐怖症だったのかもしれない。母から、「お前は性格がゆがんでいる」と言われて育った影響か、人と接するのが怖かった。「自分なんか」が口癖で、傷つきたくないあまり、人と一緒にいるのをできるだけ避けるようにしていた。
今考えると、これまでの自分は、興味・関心といったベクトルがすべて自分に向いていた。何をするときも、誰と一緒でも、自分の心の動きにばかり目を向けて、「何も奪われたくない!」という被害者意識でいっぱいだったのだ。

本に書いてあるような、「与えること」を私はしてきただろうか? 考えてみれば、朝、夫のコーヒーを淹れる手間すら惜しんでいた。子どもの絵本の読み聞かせも、「眠いから」という理由で断ることもあった。Facebookに投稿された友人の近況にも無関心だった。仕事で気になることがあっても、「私はただの外注だから」と見て見ぬふりをしていた。
私は誰にも、何も与えていない。
その事実に痛みを覚えた。

「ちょっと待って!」
翌朝、私は寝起きの夫がコーヒーを淹れようとするのを止めて言った。
「私が淹れるよ。トーストも焼こうか?」
「ありがとう。でもどういう風の吹き回し?」
夫は不思議そうな顔で、ドリップコーヒーを淹れる私を見ていた。
「いや、たまには何かしてあげようと思って」
「それなら肩も揉んでよ」
ニヤッと笑う夫。いつもなら無視するけど、今日はトーストを焼いている2分間だけ肩を揉んであげた。
「肩を揉んであげたんだから、洗濯物を干してよ」
いつもだったらそう言うけど、今日はガマン。それを言ったら、奉仕ではなく取引になってしまう。あくまでも「与えること」が大事なのだ。キレイ好きの夫のために、部屋もいつも清潔にしておこうと誓いを立てる。
幼稚園へ行く準備をしている娘には、「昨日絵本を読んであげられなくてごめん。学校から帰ったら読んであげるね」と約束したら、ニッコリかわいらしい笑顔を見せてくれた。

夫と娘を送り出し、パソコンを開く。
Facebookを眺めるのは毎朝の日課だ。いつもはほとんど「イイネ」もコメントもしないが、今日は目につくすべての投稿に何らかの反応をしてみた。「出産しました」という友人には、「プレゼントを贈りたいから住所を教えて」とメッセージを入れた。
友人は親愛の気持ちをこめてメッセージを返してくれた。これまで疎遠になっていたのは私の心が閉じていたせいかもしれない。友人たちの何人かに「久しぶり。元気にしてる?」とメッセージを送り、今年の夏休みは苦手な自動車の運転をマスターして、会いに行く約束をした。
それが終わると、次は仕事の関係者に何ができるか考えてみた。

「あの、最近、御社のブランドイメージがブレている気がするんです」
私は単刀直入に言った。相手は4年くらい一緒に仕事をしているお得意様だった。彼の会社の発行物のクオリティが最近下がってきていると感じていたが「外注が口を出すことではない」と思って黙っていた。でも「クライアントに与えられるもの」を考えたときに、その気づきは伝えるべきだと思った。
「前は、一流の人しか取材しなかったじゃないですか。最近キュレーションがうまく働いていない気がするんです。質より量でいいんですか?」
そういう主旨のことをズケズケと言うと、彼は遠い目をして黙ってしまった。
しまった。余計なことを言ってしまっただろうか。
軽く後悔したが、「与えること」「自分らしくいること」を考えると、嫌われてもいいから、その会社のために何かすべきだと思えた。
そこで、採算度外視で、自分の関わるプロジェクトのアイデアを出し続けた。

ある日、クライアントから「仕事の後で、話がある」とカフェに呼ばれた。彼はコーヒーを一口飲むと、改まった口調で言った。
「引き受けてくれるかどうかわからないけど、お願いがある」
その言葉に軽く緊張が走る。
「何でしょうか」
「君は以前、『ブランドイメージがブレてる』って言ってくれたよね。実は前から僕もモヤモヤしていたんだけど、指摘されて『やっぱり今のままではいけない』と気づいたんだ。それで、お願いがある。うちでプロデューサーをしてくれないか」
思いがけない提案をされて、答えに窮してしまう。
「でも、ご存知のとおり、私はライターですよ。プロデューサーはやったことがないので、お役に立てるかわかりません」
「それでもいいんだ。君はいつも、いろいろアイデアを出してくれたよね。それでお金をもらえるわけでもないのに、うちの仕事のことを一生懸命考えてくれた。その気持ちでプロデュースに関わってほしいんだ。もちろん、慣れるまでは僕がつきそう。ブランドイメージを回復するために、協力してくれないか」
私に向かって、クライアントが手をついて軽く頭を下げる。私は彼に向かって言った。
「経験も知識もないので、正直不安はあります。でも、私にできることがあれば、いつでも全力でご協力します」
そう言うと、彼はホッとしたような笑顔を見せてくれた。
ライターの枠を超えて、勝手な提案ばかりしてきた。そうしたら、ライターの枠を超えて、大きなチャンスが与えられたのだ。

その夜、新しい仕事の話をしようと夫を待っていた。
子どもが寝た後に帰ってきた夫は、きれいにラッピングされた包みをカバンから取り出して言った。
「はい、これあげる」
「何コレ?」
「前気に入っていたバラのローション。いつもありがとう」
包みの中には、私のお気に入りのブランドのコスメが入っていた。プレゼントなんて、誕生日にすらしない人なのに。
「え? 私、何かしたっけ?」
「いや、最近家がキレイだし、家事がんばっているから。なんか気が向いたから買ってきたよ」
「そう? 照れくさいな~」
ミルク色のローションを手のひらに少し出して広げると、ふんわりとバラの香りが広がる。そのまま顔に塗り込めると、肌がしっとりとした質感になった。
こんな素敵なプレゼントをくれた夫には、何を与えればいいんだろう? そうだ、晩酌を楽しみにしている彼の好物を、いつも冷蔵庫に入れておくようにしよう。ビールのつまみを探して、博多の明太子を見つけたらきっとすごく喜んでくれるだろう。

与えることを意識すると、心がじんわりとあたたかくなる。しかも、相手に与えたものは、必ず何らかの形で返ってくるので、だんだんと与えることが快感になってくる。「これからマンションの前の掃除でもしようか」「明日は、誰に何を与えようか」そんなことをワクワクしながら考える自分は、この本を読む前にはいなかった。

友達がいない。恋人がいない。仕事がうまくいかない。そんな人はこの本を読んで、書いてあることを実行してみてほしい。「与えること」と「与えられること」が好循環で回り始めたとき、「こんなにシンプルなことで、人生が好転するんだ!」と感激するはずだ。

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この記事は、「マーケティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。

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