文章を習おうと決めた。オリーブオイルをつけたトーストが美味しかったから。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:やまどり(ライティング・ゼミ)
どうしようかなぁ。
その朝、私は迷っていた。ベッドで目覚めて、まず一番に「どうしようかなぁ」と思った。起き出してトイレに行くまでにも、同じことを考えていた。
前々から気になっていた「天狼院書店」のライティング・ゼミ。とても興味はあったけど、そこが実際どんなお店かも知らない。まずは普通の客のふりをして店の様子を偵察しよう……と思ったまま数ヶ月が過ぎた。個人の意見として受け止めて欲しいのだけど、私にとって池袋は敷居が高い街である。はっきり言えば苦手。理由はと言えば、あそこに行くと必ず道に迷うからだ。他の場所ではそれほど迷子にならないので、きっと磁場が合わないのだと思う。相性の悪さをはっきり感じる上に、日常の生活圏からも外れている。そんな場所にある店にふらりと寄る、なんて機会はそうそうやってこなかった。
そんな状態になっていたところに、ライティング・ゼミのキックオフ説明会が行われることを知った。職場での昼休み、自席でiPhoneをいじっている時に。すでに当日である。人知れず、動揺した。どうしよう。行こうか。今日なら、残業しないであがれるはずだ。やるべき仕事はあるけど、まだ余裕もあるし。でも、行ったらその場で契約を迫られたりするのかな。それは嫌だな。けどもし、今日行かなかったら、また何ヶ月後か分からない開講を待つのか。
それはないな。
たまたま行ける今日、たまたま気がついたんだから、生かすべきだ。
そう思った。
慌ててチケットを押さえ、少しだけ残業して職場を脱出。Googleマップを使ったにも関わらず駅を出たところで方向を見失ってやっぱり道に迷い、説明会の冒頭を少し聞き逃すタイミングで初めてその本屋に滑り込んだ。聞いた説明は面白かった。それだけで勉強になった、と思う。それなのに聞きながら、頭のどこかで自分がものすごく抵抗しているのを感じた。説明のメモを取りながら、なんでだろう、と考えていた。とても面白かったのにその場で参加を決めることはせず、迷ったまま自宅に帰り、迷いながら寝た。
それが前夜のことである。寝て起きたら何か腹落ちする、ということもなく、トイレですっきりしても頭の中は眠気以外のものでモヤモヤとしていて、そのままの頭で顔を洗って朝食の用意を始める。「どうしようかなぁ、参加しようかなぁ」そう思ったままヤカンで湯を沸かし、紅茶を入れ、ポップアップ式のトースターに冷凍したままの食パンを突っ込む。作り置きしてあった大根のサラダをお皿に少し取り分ける。
文章を習う、のか。
そんなこと、できるのかな。
習っても、いいのかな。
正直に言うと、これまでいくつか文章教室に通った。けれどもこんなにはっきりしたロジックで書き方を教えてくれようとした場所は、ない。文章を習いたいと思っているのに、教えてやると言われたら今度は抵抗して迷っている。そのロジックもチラ見させてもらって面白いと感じたのに、だ。我ながら面倒くさい。
ぽんと勢いよく焼きあがったトーストを捕まえ、少し考えてオリーブオイルを垂らす。大根サラダとの組み合わせなら、この方がさっぱり食べられる。さっそく歯を立てると、サクリと音がした。
トーストにオリーブオイル。この食べ方を初めて知ったのは10年前だ。今でこそイタリアンレストランでも当たり前だけど当時は見かけず、かなり抵抗感があった。パンにたっぷりのオリーブオイルをつけて食べていたのは体の大きな男子で、居合わせた女友達と二人「だから太るんだ」ということまで言ってしまった。海外生活が長かった彼には常識だったのだろうし、きっと気分が悪かっただろう。後悔する気持ちもあって、はっきり覚えている。
そしてあんなに騒いだ癖に、今、私は日常的にオリーブオイルでパンを食べている。
食べてみたら、美味しかったからだ。
出勤まで時間がない。サクサクとどんどんトーストを齧る。合間にサラダをつつき、紅茶を飲む。
そうか。
試したら、美味しいかもしれないのか。
オリーブオイルのトーストが今の私には当たり前になったように、新しく習う文章の書き方にもなじめるだろうか。楽しいと思えるか。いや、きっと、思うだろう。
だって文章が書けるようになりたいのだ。
薄緑のオリーブオイルがかかったトーストの、最後のひとかけらを口の中に放り込んで飲み下す。お皿は空になる。
よし、文章を習おう。
そう思ってしまうと、少し肩の荷が下りた。もう家を出なければ。食器を流しに下げて急いで歯を磨き、服を着替え、一応すっぴんではない、という申し訳程度の化粧をする。コートを羽織り、肩にバッグ。玄関で靴を履く。
ドアを開けると、隙間から新しい空気が入ってきた。
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