メディアグランプリ

就活を楽しくする方法。


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記事:まつしたひろみ(ライティング・ゼミ)

「最後の質問なんだけど、君って、運がいい方だと思う? それとも悪い方だと思う?」
「えーっと、いい方だと、思います」
「それはなぜかな?」
「それは・・・・・・」

・・・・・・それって、今聞くことですか? さっきまで、「長所はなんですか?」とか「前の仕事では何をしてましたか?」とか聞いてましたよね?

初めて面接に立ち会った時のこと。うちの部署で働いてもらう人を面接するのでということで、この場にいた。
最後にって前置きまでして、その質問ですか?
私の方が部長に「なんでその質問なんですか?」って聞きたいんですけど・・・・・・。

後で部長は、私が疑問に思ったことを自分から説明してくれた。
最後のこの質問は、松下幸之助さんが面接で必ずしていたものらしい。この質問で人柄がわかるというのだ。運がいいと答えた人はプラス思考。悪いと答えた人はマイナス思考。
本当かな?
それにしても、面接ってこんな質問もされちゃうんだね。

仕事を決めるのは、大変だな。

世間では就職氷河期と言われていた。リーマンショックなんて新しい話よりももっと前。
4年生になり、大学の就職課には求人情報があった。その求人情報の中から就職を決めるというのが、行っていた大学では通例だった。
どこがいいとかはよくわからないので、名前と給料と、条件でしか見ていなかった。ここなら家から近いしとか、聞いたことあるところだし、といくつか就職試験を受けた。
あるところでは、筆記試験で問題を見た瞬間、鈍器で殴られたかのようにショックを受けた。問題が日本語ということはわかる。でも、解答が全く浮かんでこなかった。緊張してて真っ白になる、ということではなくて、何にもわからないのだ。ショックを受けた筆記試験の後に、その解答を見た面接官に、「こんなものもできんのか」と言われながら、その場で不採用とわかるような態度を取られた。どうやって帰ってきたか、覚えていない。覚えているのは面接会場だった、真っ白な会議室の風景のみ。
他のところでは、面接で最後に「短大出の子がいいのよね」と言われ、だったら求人に書いといてよ、と思い帰ってきた。
給料が微妙で応募しようかと迷っていた会社は、いざそこにと思ったら、求人期間が終わっていたり。
同級生はどんどん就職先が決まっていくのに、私は全然、決まる気配がなかった。

秋が来る頃になると、国家試験の勉強がヤバくなってきた。国家試験に受かる見込みがなければ、卒業ができない。就職は決まらないが、まずは卒業か? 卒業しなくては話にならない。仮に就職が決まっても、資格がなければ採用が取り消しになってしまう。国家試験なのか就職活動なのか、何を優先すればいいのかわからなくなった。

そして、就活を諦めた。まずは合格してから、と自分に言い聞かせた。でも、本当は不採用が続いて就活が嫌になっていて、国家試験を言い訳にしていたのだ。

国家試験が終わったのは、4年生の3月のことだった。あと残すのは卒業式のみ。

・・・・・・私は4月から何をするんだ?

仕事を決めるのって、本当に大変だ。

就職をしている人があんなにたくさんいるのに、どう仕事を見つけていいかわからない。同じやり方をしても、決まらない。自分に合うやり方が全く見つからない。いざ就職できたって辞める人もたくさんいる。学校では正解をたくさん教えてくれたのに、何が正解かなんて、全くわからない。
就職するのはなんでだろう? 仕事をするのはなんでだろう?

仕事を決めるのは大変だ。

・・・・・・仕事を決めるのは、本当に大変なんだろうか?
本当は、もっと気軽に考えた方がいいんじゃないか。

旅行先を決める、くらいの気持ちで。

例えば、パリ。パリだったら、聞いたことあるし、華やかで憧れる有名な都市だ。観光地も多くて食べるものも美味しくて、いろんな人が行ったことあるっていうし、ネットにも情報がいっぱい載ってるし。すごく行ってみたい。
行ってみたら、どうだろう? すごく素敵で、憧れていた通りの街だ! 住んでみたくなるほど好きになっちゃった! また行きたくなってしまう。
ただ、そんな人もいれば・・・・・・
行ってみたら、言葉が通じないし、治安が悪いし、ご飯もずっとフランス料理では胃がもたれるよ。
こんなふうに、合わない人だっている。

パリが合わない人でも、ハワイが大好きだったり、海外はあんまりだけど日本の聞いたこともない秘境の温泉にハマる人だっている。

仕事も、聞いたことのあるような大企業ばかりがいいわけではない。知らない会社の方が多いんだから、もっと調べて、もっと聞いて、挑戦すればいい。
不採用の通知をもらっても、それで全てが終わりじゃない。そこは自分に合わないだけで次は違う仕事を考えればいい。
アジアの国ばかりじゃなくて、南米で旅先を探してみるように、職種を変えたり、大企業ばかりじゃなくて中小企業を見てもいい。
いざ就職してみれば、最初の印象とは全く違ったりもする。聞いたことのない会社だって、ものすごいことをしている会社かもしれない。中小企業だと思っていたら、吸収合併で気付いたら大企業の社員になっていた、なんてこともある。
もし違うと思えば転職という手もあるし、仕事をすること自体を休んだっていい。
あれもダメこれもダメ、ではなく、あれもイイこれもイイ。そんな風に楽しんで仕事を決めることができないだろうか。
自分を活かせる場所が、どこかに必ずあるはずだから。

卒業したら、4月からどうしようと思っていた私には、国家試験から1週間ほど経ったとき、1本の電話があった。
「◯◯という会社があって、募集してるっていうから行ってみなさい」
という、大学の先生からの就職先の紹介だった。
聞いたこともない会社だったけど、何もないよりはいい。連絡して面接に行ってみると、ほぼ採用という感じで話をされた。
よかった、とりあえず仕事がある。こんな私でも拾ってくれるところがあるんだ。

それから15年くらい経つ。
今もその会社で働いている。

私は絶対、運がいい。

***

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2017-02-14 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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