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メディアグランプリ

神様、できることならそろそろ許してはいただけないでしょうか?


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:よめぞう(ライティング・ゼミ)

「卒業確定している人の学籍番号が学生課に出てるみたいよ」

「ホント? じゃあ見に行ってみようか」
大丈夫、きっと大丈夫。
単位は取れているから卒業できないわけがない。
「……あれ?」
おかしい。何かの間違いよね。
「番号が……ない」
見間違いだと信じたいけど、私の番号1番だから見間違えようがない。
「うそ……」
どうして? 単位は間違いなくとったはず。
じゃあ、何が足りないんだろう……。
卒論か? お粗末過ぎたけど、オーケーくれるって言ってなかったっけ?
やっぱり、ダメだったのかも……

どうしよう。

変な汗が一気に噴き出してきた。
苦しい、苦しいよ……。
とりあえず、会社にはなんて言おう。
お客様にもどう謝ったら良いんだろう。
上司にも迷惑がかかるなぁ。
……ん? 会社って言った?
ふと、冷静さを取り戻してようやく気づいた。
あ、そうだ! そういうことか!
私はいつの間にか真っ暗な水の底に沈んでいた。

(どおりで苦しいと思ったんだ……)

力の限り、上へ上へと泳いでいく。
早くしないと息が持たない。

(もうすぐ……光が見えてきた!)
とにかく上に。間に合って……
「ハァ……ハァ」
なんとか助かったらしい。
嬉しいはずだけど、どこかモヤモヤする。

「あぁ……またこの夢か」

そう、夢を見ていた。それも悪夢。
心臓のバクバクは未だ止まらない。
チッと舌打ちをしながら、朝の支度を始める。
心臓の音は少し落ち着いてきた。
この夢を見るのはこれで何度目だろう。
もうため息しか出てこない。
「あーイライラする」
大学を卒業してもうすぐ6年になるってのに……
自業自得といえばそれまでだけど、私の唯一の後悔の念は風船のようにどんどん膨れ上がり毎年この寒い時期に悪夢として襲ってくるようになった。
私が通っていた大学は、福岡にあるキリスト教系の私立女子大だった。
中高大一貫の女子校で、世間ではお嬢様学校だとかセーラー服発祥のところとかで知られている。
大学だけしか行ってないけど、女子校のダークなイメージを吹き飛ばすくらいのアットホームな女子大で、午前中には礼拝の時間もあるし卒業式の際は黒マントと角帽のアカデミックドレス姿で臨むいかにもキリスト教な大学で英語を専攻していた。
学業はそこそこにアルバイトを掛け持ちしながら部活と恋愛と……という具合に決して真面目で優秀な方ではなかったけど、なんとか無事に4年間で卒業できたことだけはまぁ良かったと思っている。
だから、英語はほぼ喋れないし話せてもルー大柴みたいに日本語とイングリッシュがトゥギャザーしちゃう感じだからもうお恥ずかしい限り。
そんな私の唯一の心残りは卒業論文だ。
英語学科の卒業論文は英語で書かないといけなくて、とにかく大変だった。
ましてや所属していたゼミが英語文体論における研究という頭の痛くなるような内容だった。簡単にいうと本の中で、主人公の元気がないときは背景で雨が降って逆に生き生きしているときは晴れてというような、作者が意図的に表現しているものを探ることをしていた。
日本語でも頭が痛いのにそれを英語の本でやって英語で書くというから本当に辛いものだった。

ただでさえ頭が痛いのに私が研究対象にした本がまた暗い内容の本だったので一気に気持ちが病んでしまった。

読み込みながら気持ちをやられ、うまくできない英語に頭をやられ、おまけに実生活でも色々追い込まれ……正直卒論どころじゃないなんて時期もあった。
だけどなんとか卒業できた。
というのも、卒論は卒論とはいえない内容だったけど先生のお情けをいただいたような形で今読み返してもとてもひどい。

それでもアカデミックドレスを身にまとい、帽子を投げて卒業した。
だけど少しばかり後ろめたい気持ちが私の後ろにずっとずっとつきまとっていた。
卒業してもうすぐで6年になるそんな時だった。
Facebookでたまたま福岡天狼院のことを知った。
ライティングゼミという不思議なゼミがあるということも知った。
ライティングゼミを受講したきっかけはなんとなく面白そうだと思ったからだった。
だけど今思えばこれは神様が私にくださったあの時の罪を償う時なのかもしれない。
別に、キリスト教徒でもないし特に何かを信仰するわけでもないけれど、ふとそう思ってしまった。皮肉にもあの時勉強した文体論は、書く側に回った今になってようやく「そういうことか」と納得させられてしまう形になった。
どんなに後悔しても、私が書いた卒論のお粗末さは変えることができないし、あの時に戻ることはできない。
だから「書く」のかもしれない。
まだまだお粗末だけど、私が私のことをさらけ出しながら「書く」ことと懺悔はどこか似ていると思った。
大学を卒業してもうすぐ6年になろうとしている。
そういえば、今年はあの悪夢をまだ見ていない。

ひょっとしたら少しは許しがもらえたのかな?
いつか大学に遊びに行ってみよう、そう思った。

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2017-02-26 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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