メディアグランプリ

2回目のケーキをうまく焼けたら、遅刻しなくなるかもしれない。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:バタバタ子(ライティング・ゼミ日曜コース)

ボソボソして、口の中の水分がすべて奪われるような感触だった。美味しいとか不味いとか、そんなことを言うよりずっと前の段階。口に入れたひとかけが、食べ物のように思われない。
切り分けるナイフを入れただけでも、ボロボロと崩れるし。全体の40%は、こぼれて屑になってしまった。
そもそも、オーブンから出した時点で違和感があった。想定の半分の高さにしか膨らんでいなかった。

ミルクで流し込みながら考える。もっときれいに、美味しくできるはずだったのに。何がいけなかったのだろう。

たまたま、ココアの賞味期限が近付いていたから、ココアたっぷりの濃厚パウンドケーキを焼こうとしていたのだ。
先週、同じレシピでプレーンのケーキを焼いたときは、想像していた通りに美味しくできた。ふんわり膨らんで、しっとりして、幸せになる食感だった。見た目だって、こんがりきつね色で、断面もきめ細やかで、初めてとは思えないくらい、うまく仕上がったのだ。

前回は上々だった。今回は自己流にアレンジして、ココアを足してみよう。そのぶん小麦粉を少なくすれば、きっと問題なく仕上がるはずだ。
そう考えて、なんとなく、大さじ山盛り3杯くらいのココアをがばっと加えて、小麦粉と一緒にふるっていた。
通りかかった母が、
「あら、今日はココアを入れているの。ちゃんとレシピ見てやってる?」
と覗き込んだが、自信満々だった私は、
「大丈夫だって」
と、耳を貸さなかった。

ちょっとスマホを手に取って、「ココア パウンドケーキ」で検索すれば、レシピは何十件と出てくるだろう。でも、この前うまくいったレシピをちょっとアレンジするだけだから、わざわざ調べなくても、なんとかなるさ。

その結果がこれである。

せっかくレシピという、先人たちの知恵の結晶が、手の届くところにいくらでもあったのに。空っぽな自信にうつつを抜かして、きちんと調べもせず、食材を残念なことにしてしまった。

最初の成功に慢心して、2回目で手痛い失敗をするというのは、このケーキに限った話ではない。

たとえば、半年前に訪れた場所を久しぶりにたずねるとき。
半年前、初めてこの場所に行ったときは、バスや電車の時刻、行き先、乗り場などを、前の晩までに事細かく調べ、ノートに書きだした。アプリや紙の地図を何度もみて、大まかな地理を頭にたたきこんだ。現地で迷うことを想定して、早めに着くように逆算して家を出た。その効果か、多少のトラブルはあったものの、時間までには無事にたどり着くことができた。

ところが半年後、2回目に同じ場所を訪れたときは、汗だくで、時間ぎりぎりになってしまった。

そもそも、前日に大した下準備をしていなかった。ぼんやりと「バスと電車で90分くらいだった気がする。だから、開始時刻の90分前に家を出ればいいや」と考えていた。
そんなつもりでバス停に来ると、バスが来ない。そこで初めて時刻表を見ると、1時間に3本しかなかった。前の便が出たばかり。ぼーっと次のバスを待って駅につくと、目的の電車は出てしまっていた。次は20分後。最寄駅になんとか到着したときには、予定の7分前。駅から目的地までの移動時間を失念していた! 慌てて改札を出るが、ここから右と左のどっちに進めばよかったっけ? この路地に見覚えがあるから、ここを突っ切れば近道になるんじゃない? あれ、明らかに違う住宅街に出た。さっきのところまで戻ろう。いそがなきゃ、あと3分!

二十何年も生きてきて、なんで毎回、このパターンで失敗するんだ私!

とどのつまり、初回の成功に油断して、慢心するのがいけないのだ。
初回に、あれほど時間をかけて綿密に準備し、最新の注意を払って実行したという記憶は、成功の喜びとともに、あっという間に彼方へ流されていく。
「喉元過ぎれば熱さを忘れる」というやつだ。

ではどうすれば良いのか。
慢心しないようにしよう!
言うのは簡単。でも、歴史上あまたの英雄豪傑、偉人たちですら難しかったことではないか。
私のような凡人にできるとは思えない。

では、慢心は不可避として、それでも失敗しにくい仕組みを作ったらどうか。
私の場合、めんどくさがりという性質があって、普段は腹の底に押し込んでいる。ところが慢心すると、のったりと出てきて、我が物顔でのさばるようになる。こいつのせいで事前の調査や準備を怠るから、失敗するのだ。

めんどくさい、めんどくさいとゴロゴロしているうちに、タイムリミットが迫り、ギリギリのところで見切り発車的にとりかかるのがいつものパターン。これを逆手にとったらうまくいくのでは?

つまり、何かにとりかかる前に、必ず調査や準備のタイムリミットを設定しておく。
たとえば、今からケーキを焼くなら、5分後までにレシピを調べる。明日、久しぶりの土地に行くのなら、22時までに乗り換えを調べ、脳内シミュレーションまで終わらせる。

この自分ルールを守って、習慣化して、めんどくさがりが出てくる前に体が動いている、くらい馴染ませれば、2回目に失敗することも防げるはずだ。
それが実現できたら、ケーキも美味しく焼けるだろうし、乗り換えに失敗して遅刻することもなくなるかもしれない。
そんな自分、素敵だな。早速やってみよう。まずは10分後までに、この文章を投稿する!

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2017-05-03 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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