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尊敬する人と結婚相手


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記事:深川 薫(ライティング・ゼミ日曜コース)
 
 中学3年生の冬頃、高校受験の面接練習ということで、先生が面接官となって生徒を一人一人呼び出して模擬面接をやっていたことがあった。もちろん、教室は先生がいないため、自習という名目であったが、みんな隣同士などで自分の面接で何を聞かれて、どう答えたかなどについて話していて、ガヤガヤしていたことをよく覚えている。
 
 周りの話し声を聞いていると、質問項目はほとんど皆一緒らしく、その中で「尊敬する人は誰ですか?」というものがあった。周りの同級生の回答を聞いていると、圧倒的に「両親」が多いのだ。両親? 僕の中ではありえない回答だった。こいつらは「両親」以外の大人を知らんのか? と半ばバカにしたような目で周囲を見渡してしまったほどだ。断っておくが、僕は当時グレていたわけではなく、両親に対しても従順で、手のかからない中学生だったと自分でも思う。そんな僕でも「尊敬する人=両親」というのは、頭をかすめもしなかった。かなり従順に育っている僕でさえ、風呂を急かしてくる母親にイラっとし、居間でダラダラ酒を飲み続ける親父に呆れかえっていた毎日だったのである。結局、僕が答えた尊敬する人は「宮﨑駿」だった。先週の金曜ロードショーで、ラピュタでも放送されていたのかもしれない。

 さて、そんな僕も歳をとり、会社勤めをし、結婚をし、家族というものを持つようになる。そうすると「尊敬する人」ランク外が定位置だった両親が、一気にランキングを駆け上ってくるではないか! とは言っても、僕の中の「尊敬する人ランキング」はそんな10人、20人もいるわけではないので、上がってくるのは簡単なのだが、それでも両親に対する尊敬の度合いは、中学生の時と比べ物にならないほどになっていた。

 これはおそらく「尊敬する」という言葉の捉え方が、中学生時分と大人ではだいぶ変わってきたのではと思われる。中学性では、実際周りにいる大人は親・親戚・近所の大人・先生くらいである。そうすると、尊敬する人の選択肢としては、かなり少ない。自分の周りに尊敬する人がいなければ、あとはテレビや本を介して自分が一方的に知った人になってくる。これが僕のパターンに当てはまる。昔の子どもの「尊敬する」対象者は、プロ野球選手やサッカー選手、芸術家や僕が言った宮﨑駿など所謂スーパースターで、「尊敬する=憧れ」といった意味合いが強かったように思う。しかし、大人になるにつれ、「尊敬する」の意味合いは変わっていく。30、40歳になってプロ野球選手を尊敬していると、明言する人はあまりいない。もし、本当に尊敬していると言う人がいるとするなら、そのプロ野球選手の野球技術というよりもむしろ彼の精神性を尊敬しているのだ。

 そう、子どもの時の尊敬の対象は、その人の「技術」であることが多かった。ホームランを何本も打てる、凄いシュートを打てる、面白い映画を作る、などなど。大人になってからの尊敬の対象は、その人の「精神性」に変わってくる。イチローのプロ意識の高さや、何度失敗しても練習し続けるアスリート、細部にとことんこだわる芸術家、などなど。僕たちオッサンになると、彼らまたは彼女らの技術やパフォーマンスは「精神性・心構え」によって維持され、そして進化していくのだと、ようやっと分かるようになる。

 では、結婚相手(好きな相手)はどうだろう? 中学生や高校生の頃はまず第一に「顔」だ。批判されるのを承知で言えば、中学生の時などは選択基準が「顔」だけしかないと言っても、過言ではないかもしれない。でも、大人になれば、選べる権利が当方にあるのかどうかはさておいて、顔だけで選んではいられない。これも「精神性」が大きな位置を占めるようになってくる。

 そう、尊敬する人も結婚相手も選んでいる「対象」は、実は「自分自身」なのだ。尊敬する人は、「こんな風になりたい自分」、結婚相手は「自分が異性であれば、こんな風にありたい自分」。簡単に言えば、「自分自身」を選んでいるのだ。そういう意味では、大人になった僕らは、大人になった分だけ「自分」に囚われているのだとも言えるかもしれない。
 
 これからの時代、そもそも「尊敬する人」という言い方が、聞き手を固くさせるので、言い方を変えたほうがいいのではと考えた。 

 
 「今、ハマっている人」、そういう言い方でいいのではないだろうか? 尊敬する人が別に取っ替え引っ替え替わっても、それほど問題はない。ただ、結婚相手となると、取っ替え引っ替えは何卒ご注意いただきたい。そんなことすると、誰一人からも「尊敬」されなくなりますから! 

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2017-05-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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