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メディアグランプリ

筍ごはんが教えてくれる、「誰のために書くのか」が大事な理由。


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:桝田綾子(ライティング・ゼミ日曜コース)
 

「ええっ、今日はまた筍ごはんなの」
 
5歳の娘がイヤな顔をする。
そういえば先週、私が家を空けている時に、夫も筍ごはんをつくったのだった。たしかに、外から帰ってきてから、私も食べた記憶がある。
 
「筍、きらーい。いやー」と、眉間にしわを寄せている。
 
はて、おかしい。娘は茶色いごはんが大好きだったはずだ。五目炊き込みごはんにした時などは、三杯もおかわりする。筍の水煮も、五目のひとつに入れて、喜んで食べていたはずなのだが。
 
「そう? Yちゃんまぜごはん、好きじゃなかったかしら。おいしいよ、食べてみたら?」とすすめたけれど、娘はいっこうに箸をつけようとしない。
 
食べていると、夫が仕事から帰ってきて食卓についた。「お、今日は筍ごはんか。春だねぇ」。そして一口食べて、「うん、おいしい。結構しっかり味がついているね」と言った。
そこで私は、「ははあ」と思ったのだ。たしかに、先週夫がつくった筍ごはんは味つけがもう少しうすかった気がする。
 
私は、娘の好きな炊き込みご飯をつくる時のように、筍を一度おだしと醤油で煮てから、お米と煮汁を一緒にしてごはんを炊いた。夫はおそらく、おだしと醤油と筍をお米のお釜に入れて、そのまま炊いたのだろう。
夫のつくり方だと、筍のえぐみや苦味もそのまま残った状態で炊きあがる。私のつくり方だと醤油味が強くなるために、そこまでえぐみや苦味を強くは感じなくなる。
 
夫に「味がついているのは、炊く前に一度筍だけ醤油で炊いたからだと思うよ」と伝えると、「そうか、一手間だなぁ。Yちゃん、この間お父さんがつくったのより筍の味が濃いから、苦くないよ。おいしいから食べてごらん」と、夫も娘にすすめた。
 
娘は「ほんと?」と少しだけ食べた。「ほんとだ、おいしい。筍ごはん、大好きー!」と、もりもり食べ始める。やっぱり。娘のお茶碗にあった筍もごはんも、すっかりなくなった。
 
夫のつくった筍ごはんもおいしかったのだ、私には。筍の味、えぐみや苦味、歯ごたえがあって、ほんのりとおだしの香りがして。春だなぁ、という味だった。その時、娘はごはんだけを食べて、筍をぜんぶ外して食べたらしい。娘の外した筍は、夫がおいしくいただいたそうだけれど。
 
これからつくる筍ごはんは、誰に食べてもらいたいのか? ……誰に。
私が食べるならば、うす味で、筍の風味を味わえるものも私は嬉しい。
娘が食べるならば、醤油味がしっかりして苦味やえぐみがあまりない、まぜごはんとして食べられるものが娘は嬉しい。
 
今私がこの天狼院のライティング・ゼミで学んでいる「書くこと」も、きっとこの筍とごはんと同じなのだと思う。
書こうとするテーマや素材が筍だとすれば、どのように書くかが調理法。あの人に、この筍を楽しんでもらうならどのように調理しよう? そう思い浮かべることから始まる。
 
このテーマを、素材を、楽しんでほしい。読んでほしい。さあ、どうやって書こうか? その視点に立って書こうとする文章を考えることで、テーマのどの側面を、どのように書いたら楽しんでもらえるだろうか。それ以前に、読んでもらえるだろうか。ということも少しずつわかってくるのかもしれない。
夫がつくった筍ごはんの筍を、娘は食べなかったけれど、娘だって筍だって、悪くはないのだ。そもそも筍という素材を選ぶのが間違い、という相手もきっといることだろう。
 
私は、なにを書きたいのか? 誰に読んでもらいたいと思って書くのか? いま一度、それを考えながらキーボードをたたく。
このライティング・ゼミの課題として書く文章ならば、web天狼院書店に掲載されるかもしれない。Web天狼院書店のゼミ生の書く記事を楽しみにしている方とは、どんな方だろう? 書くこと、読むこと、文章が好きな方、が多いのかもしれない。これからライティング・ゼミに参加しようか、という方もいるかもしれない。天狼院書店のこれからの展開を楽しみにされている方も多いことだろう。小説家、ライターへと育っていくような光る才能を探している方も読まれているのかもしれない。
その方々にライティング・ゼミ生という立場で楽しんでもらえるようなテーマを、素材を、と考えて選ぶところもまたひとつの練習だなと感じている。
 
ではこのゼミを終えた後、私が文章を書いていく、という時に。私は、私のメディアで、なにを書きたいのか? 誰に読んでもらいたいのか?
それは、文章を書くことによって、私にとって何が起きればよいのだろう、と考えることと同じだ。
 
少なくとも、今の私は小説家やライターを目指しているわけではない。ではなんのために「書くこと」を学んでいるのだろうか。
それは、私の伝えたいなと思う内容を読み物としても楽しんでもらえるといい。伝えたい内容そのものは、今は興味がない、関心がない方にとっては、ストレスに感じるものかもしれないからだ。でも、私が伝えたいと思う内容は、今は興味がない、関心がない方にとっても、いつかご自身の役に立つ、という時が来るかもしれない類のものだと思っている。
そのいつかが来るかもしれないし、来ないかもしれない。ただ、その内容を読み物としておもしろいなと楽しんでもらえるならば、私はとても嬉しい。
そのために、なにを書きたいのか? それを誰に読んでもらいたいのか? を、もっともっと、深く考えていきたい。
 
娘に食べてもらいたい、とたった一人の顔を思い浮かべながらつくる筍ごはんは、つくる前からレシピ、調理法に迷うことはない。
筍のような旬の素材を今、楽しんでほしい! と相手を思う気持ちも自然に湧いてくる。
迷わずつくる筍ごはんのように、文章も迷わず書けるようになりたいと、学び書く日々である。
 
 

***

この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加いただいたお客様に書いていただいております。
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2017-05-10 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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