20代の新入社員の扱いに悩んでいる大人がいたら……
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記事:kiku(ライティング特講)
「今の新入社員は何を考えているのかわからない」
そう会社の上司に言われたことがある。
入社20年目のその上司は、わりと後輩指導に力を入れている方で、いろいろと新入社員の扱いに思い悩むことがあるらしい。
タクシーで一緒になった時、ボソッと思っていることをつぶやいてくれた。
「今の若い人は本当に何を考えているのかわからない。ちょっと仕事のことで叱ったりすると、すぐにパワハラになりそうで怖いんだ。本当にビクビクしながら一緒に仕事しているよ」
私は驚いてしまった。
新入社員の私は、飲み会の席でも、上司に気を使ったりして、いろいろ疲れることもあるが、上司の方々も私たち20代の新入社員に相当気をつかっているというのだ。
「今の若い人たちはすぐに会社を辞めてしまう気がする。理由を聞いてみると、意外とどうでもいい理由だったりするんだ」
私はそんな40代の上司の言葉を聞いているうちに、上司の方々もいろいろ大変だなと思ってしまった。
私は92年生まれのゆとり教育の影響をもろに受けた世代だが、私たち20代と40代以上の方々との間では、価値観があまりにも違う気が薄々と感じていた。
たぶん、40代以上の方からしたら20代の新入社員など、宇宙人と会っているくらい何を考えているのかわからないのだろう。
「昔は毎日、終電まで仕事したもんだ」
「何で今の若い人は欲がないんだ」
「何でみんな恋愛に興味がないんだ」
92年生まれの自分からしたら、欲がないのでもなく、恋愛に興味がないわけでもないのだが……
一般的に40代以上の方から見た今の若者はこう見えるらしいのだ。
何でこうも価値観が違うのだろう。
そんなことをずっと私は思っていた。
私たち90年代生まれは、生まれた時から日本は不景気だった。
バブルがはじけ、失われた20年などと呼ばれ、
「今の若い人たちは景気が良い時を知らなくて可哀想だ」
などとよく言われた。
私は日本が不景気の時しか知らないため、物心ついた時には、日本の経済を支えていた大手企業が次々と経営破綻する姿を見ていたのだ。
「〇〇企業が大量のリストラ!」「世界の〇〇会社が経営破綻!」
などのニュースを当たり前のように見て育ったのだ。
そのためか、自分の周りにいる新卒の人たちは、みんな3〜4年で会社を辞める前提で入社してくる気がする。
一般的に新入社員の3割は3年で辞めると言われている。
ゆとりの世代は打たれ弱いなどという理由もあるだろうが、それ以上に、自分も含めた今の20代は、誰一人として会社のことを信用していないのだと思う。
不景気の時代しか知らないため、入社した会社が10年、20年続くとはどうしても思えないのだ。
だから、会社のために汗水垂らして働くという考え方が理解できないような気がする。
正直言うと、私も会社のために10年、20年働くという考え方があまりピンとこない。
それよりも、どんな環境にいっても個人が働けるだけのスキルを身につけた方が良い気がする。
私自身の個人的な考え方も入っているが、自分の周りの人たちと話をしていて、どうもみんな、このような価値観のもと、会社に入って働いているようなのだ。
何で20代の考え方と40代以上の人たちの考え方はこうも違うのか?
何で今の若者は欲がないなどと言われるのか?
そんなことをずっと疑問に思っていた。
いつものように会社帰りに本屋に寄って、本を見ている時、
ふとこの本のタイトルに惹きつけられた。
「若者離れ 電通が考える未来のためのコミュニケーション術」
それは大手広告代理店、電通の人たちが、今の若者たちの動向や価値観を調べ、本としてまとめたものだ。
私はこの「若者離れ」というタイトルが気になってしまい、手にとって読んでみることにした。
読んでみて驚いた。
すごい!
ここまで10代から20代の考えていることをまとめているなんて……
その本は、多くの広告を手がけてきた電通が、若い人たちが本質的に何を考えているのかをまとめ……
「大人に自分たちのことをわかってもらえない」と悩む10代〜20代から、「今の若い新入社員の扱い方がわからない」と悩む大人たちに向けて書かれた本だったのだ。
この本を読んでいて、何度も驚いてしまった。
自分たちはこんなことを考えていたんだ……
90年代に生まれた若者たちが、どんな経緯から、どんな価値観が形成され、今に至ったかをまとめられてあったのだ。
そうなんだよ!
物や恋愛に興味がないんじゃなくて、こういうことで悩んでいたんだよ!
私はこの本を読んでいて、1ページ1ページ、うんうんと頷きながら読みふけってしまった。
それは40代以上の大人から見た若者論ではなく、徹底的に若者目線で捉えた若者論だった。
若者代表として、テレビドラマで活躍する松岡茉優さんなどの声もまとめられ、人前に立って表現することが苦手なゆとり世代がどんなことに悩み、どんなことに挑戦したいかが書かれてあったのだ。
この本がすごいのは、徹底的に若者というものを捉えていると同時に、
「今の若い人が何を考えているかわからない」と会社で悩む、40代以上の人に向けても書かれているところだと思う。
自分たちの価値観を押し付けるのではなく、今の若い人たちが本質的に何を考え、どうしたいのか?
それぞれお互いに理解し合うことが大切だと何度も書かれてあるのだ。
バブルの時代を経験した人と、平成の不景気しか知らない人では、価値観が全く違うのは当然だ。
価値観が違うからこそ、自分たちの価値観を押し付けるのではなく、お互いに理解し合うのが大切なのだという。
そして、大手広告会社が若者層に広告をPRする際に、どういったプロセスで、CMを作っているのかがまとめてあった。
日々情報に振り回され、疲れてしまった若者が心のそこで抱えている
「思いのままやりたいことをやってみたい」という欲求に向け、キャッチコピーが考えられたカップヌードルのCM……
選挙に興味がないという10代に向けて、政治への関心を高めるためにしたマスコミの広告戦略……
なるほど……
こんなことを考えながら、あのCMは作られていたのか!
そんな驚きが連発する本だった。
「今の新入社員は何を考えているのかわからない」と会社で悩む人が読んでもいい。
「自分たちの主張が大人にわかってもらえない」と思う10〜20代の人が読んでみるのもいい。
きっと、「今の若者は〇〇だ!」などと自分たちの価値観を押し付けるのではなく、お互いに理解し合うことの大切さが身に染みてわかる本なのだ。
世代間の価値観のギャップに悩む人には、きっとよく効く薬になる本だと思う。
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