憧れは日本刀
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記事:及川智恵(ライティング・ゼミ平日コース)
「愛のある日本刀」というニックネームを持っている。
私の発言や文章は、何かと相手の痛いところを突いてしまうらしいのだ。本人はまったく無自覚なのだが、無駄なくすぱっと核心に切り込むということで、いつからか「日本刀」と呼ばれるようになってしまった。
ただ、実際には「じっくり話してみるとそこまで怖くはなかった」「相手のことを本気で思っているから厳しいことを言うのよね」などといった意見もたくさんもらう。そこで、書道家の知人が「愛のある」という言葉を付け加えてくれたのだった(ついでに揮毫までしてもらった)。
「愛のある日本刀」。やさしさと厳しさが同居した良いフレーズではないか。個人的にはとても気に入っている。
しかし、私は日本刀自体にはまったく興味がなく、何の知識も持っていなかった。さすがにこれだけ日本刀と呼ばれている以上、何も知らないのは日本刀にも申し訳ないのではないだろうか。そう思って、ためしに日本刀について検索をかけてみた。
最初にたどり着いたサイトを見て、真剣に思った。
私、日本刀のように生きていきたい、と。
京都国立博物館のサイトによると、日本刀は世界のどの刀剣よりも鉄の構造が細やかで、「折れず、曲がらず、よく斬れる」のだという。武器として完璧で、機能に文句のつけようがないのだ、と。
折れないうえに曲がらない刀を作るのは、原材料である鉄の性質を考えると、非常に難しいのだそうだ。折れにくい性質の鉄と曲がりにくい性質の鉄を両方使って、構造を工夫し、何度も熱して叩いて延ばして、微妙な調整を繰り返した結果が、「折れず、曲がらず、よく斬れる」日本刀なのだという。非常に手がかかっている。
折れず、曲がらず、よく斬れる。家訓にしたいほどの見事な響きだ。
人間に当てはめて考えてみたい。
「折れず」は、簡単に折れない心のありようと重なる。折れない心はしなやかだ。かたくなであればあるほど、負荷がかかったときにポキリと折れてしまいがちだが、柔軟に受け止められる心は強い。少々のストレスは吸収できてしまうような、やわらかな心を持って生きていきたいものだ。
それと同時に、「曲がらず」に自分なりの軸を持った人も素敵だ。いちいち他人に流されてしまうのではなく、常に自分のポリシーを持った凛とした人は、やっぱりカッコいい。私が尊敬する人たちのことを思い出してみても、譲れない自分なりの信念に従って、まっすぐ行動している人ばかりなのだ。
意固地になってしまうのでもなく、ふらふらと周りに振り回されてしまうのでもなく、バランスの取れた人は本当に魅力的だと思う。日本刀もそのバランスが絶妙だからこそ、優れた武器として名高いのだろう。
もう1つ、「よく斬れる」というのは、刀として外せない機能性の部分だ。人間で言うならば、自分がやるべき仕事を抜かりなく行うことや、自分の役割を忘れずに生きることだろうか。「折れず」「曲がらず」にいるからこそ、本領を発揮することができて「よく斬れる」という見方もできそうだ。
日本刀について知れば知るほど、日本刀のような人間になりたくなってしまう。
さらに、日本刀は美術品としても価値ある存在なのだ。絶妙なカーブ。刃に現れる波打つような文様。機能が優れているだけでなく、見た目も鑑賞に堪えうる美しさを誇っている。外観も相当作りこまれているのだろうが、武器として完璧であれば自然と美しい形状になってしまうのかもしれない、などと思ったりもする。
人間だって、中身が良ければ外見はどうでもいい、というわけではない。
決して美人でも何でもない私は、贔屓目に見ても、外見で勝負できるような人間ではない。しかし、いわゆる美人やイケメンでなくても、良い顔立ちをした素敵な人はたくさんいる。内面からにじみ出るオーラや品格で惹きつける人もいる。持って生まれた顔がすべてとは限らないのだ。
実際に自分がそういう輝きを放てるかというと、だいぶハードルが高そうな気はする。でも憧れる。たたずまいが美しくて、存在するだけで雰囲気があるような、そんな人に。
はたして、私はそこまで自分を作りこむことができるだろうか。
日本刀はとても細やかに、丁寧に、手をかけて作られている。だからこそ、完成度の高い武器であり、美術品としても価値が高いのだと思う。そんな日本刀のような人間になりたいと願うのであれば、自分の人生にしっかり手をかけるよりほかないだろう。少なくとも、意味もなくスマホを眺めながらごろごろ寝そべっている場合ではなさそうだ。
日本刀レベルの一級品のような存在になれるかどうかは、正直なところわからないし自信もない。でも、日本刀の特徴をわずかながらも知ってしまった今、ニックネームを名乗るだけではもう満足できない。
日本刀のあり方こそ、私が追い続けたい理想の生き方だ。
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