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靴下のペアを生き別れにする3つのワナ


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:松原早美(ライティングゼミ平日コース)

 
 
靴下の片方がなくなるのは、妖精やおばけの仕業ではない。
そんなことはわかっている。でも事実としてわが家では靴下のシングル率が異様に高い。
 
夫のベッドの上に靴下が置かれている。
使用済みではなく、洗濯済みの靴下だ。
はじめは1本とか2本、何気なく置かれていたのが、そのうちに少しずつ増えて、今ではちょっとした小山のようになっている。
 
わが家では、洗濯済みの洗濯物はわたしがリビングでたたんでおいて、あとは各自が自分で片づけることになっている。夫は案外きれい好きで、洗濯物も普段は自分できちんとしまっている。なのに、これはどうしたことだろう。
日頃ずぼらなわたしもさすがに気になって、タンスにしまおうと靴下を手にとると、ふと違和感を覚えた。
いつもわたしが靴下をたたむときは、ペアにしてくるりと丸めるのだが、ベッドの上に置かれた靴下は1本ずつで、皆だらりとだらしなく伸びている。
よくよく見ると、なんとそこにある靴下は、すべて片方ずつ違う靴下だったのだ。
 
そういえば、時折夫がぼやいていた。
「なんで靴下が片一方どっかへ行っちゃうのかなー」
 
靴下の片側失踪はわが家ではわりとよくあることなので、「うんうん、そんなこともあるよね」と聞き流していた。夫は、はぐれた靴下のもう片方が見つかったら一緒にしまおうと思って、ベッドの隅に並べておいたらいつの間にかこうなっていたらしい。
 
その数なんと、13本。
13種類すべて違う片方だけの靴下のコレクションである。
黒、濃グレー、薄グレー、メッシュ、五本指、杢ブルー、濃紺……。微妙に色が違う靴下たち。男ものの靴下って、色のバリエーションが少ない割に、微妙な色の差があって見分けにくいったらありゃしない。
連れ合いとはぐれて行き場を失い、しょんぼりとしているようにも見える靴下たち。
中には同じ色のものもあるが、それは5本指ソックスで、2本とも左側だったりするのだ。その絵面はあまりに間抜けで呆れてしまう。
 
なぜこんなに靴下が片方だけなくなるのか?買ったときには確かにペアだったはずだ。それが、かわいそうにいつの時点で別れ別れになってしまったのか?
まさか屋敷しもべ妖精が、片方を持って行ってしまったのではあるまい。
それでも実はわたしの引き出しには、全部種類の違う片方だけの黒いソックスが7本入っているし、娘は時々左右で違う柄のソックスを履いていたりする。
 
うちのように、トータル20本以上も片方が行方不明ということはあんまりないかもしれないが、誰の家にも1本や2本、相方のいない靴下がタンスに眠っているのではないだろうか?
靴下は本来ペアとして存在するものならば、最後まで添い遂げさせてあげる方法はないのか?そもそもなんで相方とはぐれてしまうのかを考えてみたら、そこには大きく3つの難関が待っていることがわかった。
 
前提として、スタート時点では左右同じ靴下を履いていたと仮定しておく。
 
まず第1の関門は靴下を脱ぐときである。
入浴の時、脱衣所で靴下を脱いでそのまま洗濯かごに入れる。というのなら問題は起きにくい。困るのは脱衣所以外で靴下を脱ぐときである。
特に冬はあぶない。寒さのせいで靴下のまま布団に入ったものの、そのうちに足元が暑くなって、脱いだ靴下を布団の中で脱いだことはないだろうか?
布団の中に、靴下がいくつも丸まったままで隠れているのかもしれない。
もしくは夏。外出から帰ってムレムレの足を開放するために、そこらへんにポイポイと靴下を脱ぎ捨てたりしていないだろうか?
この時点で片方を見失ってしまうと、ペアのまま洗濯してもらえる確率はとても低くなるだろう。
 
第2関門は洗濯かごに入れるときだ。
無造作にポイっとかごに入れて、隙間に片方落ちてしまったりしていないだろうか?
毎回ちゃんと隙間まで確認するような行き届いた家庭ならいいかもしれないが、ずぼらな住人だとまず見過ごされるだろう。わが家ではときどきこのパターンで、かごの裏側に落ちていた靴下が後日発見されることがある。
 
ここまでが、洗う前の段階で既にはぐれているパターンだ。わが家では第1関門と第2関門の間、つまり脱いだ靴下を洗濯かごに入れるまでに行方不明になっているというケースが多くみられる。
 
実は相方行方不明の危険はそれだけではない。洗って干すまではちゃんと揃っているのに、しまう段階ではぐれてしまうというパターンもあるのだ。靴下のペアを添い遂げさせるには最後まで気を抜いてはいけない。
 
第3関門は洗濯ものを取り込んだ後。
物干しのピンチから靴下を外す。そこですぐさまたためば過ちが起こることは少ない。
だがわが家では取り込まれた洗濯物は往々にして放置されがちだ。なぜなら、食事の支度や風呂の準備などにくらべて、洗濯ものは取り込んでしまいさえすれば、たたむのはいつやってもいい。というか、時間的に融通が利くから後回しにされやすいのだ。これは共働きの家庭ではよくあることではないだろうか?いや、ウチだけか?
 
かくして洗濯物は放置され、その山から各自必要なものを間引くように引っ張り出すうちに、一緒にいたはずのペアは相手を見失うことになる。
 
こうした3つの難関をかいくぐってこそ靴下はペアを全うできる。今の私にできることは、靴下を脱いだらその場でペアにして丸めておく。洗濯かごの周りは毎回確認する。そして洗濯物を取り込んだらなるべく早くたたむ。そんなことぐらい。
平凡だけど、まずはそこから靴下のシングル化に歯止めをかけよう。
 
 
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2017-06-24 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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