メディアグランプリ

オタクによる布教の嵐


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記事:前岡舞呂花(ライティング・ゼミ 平日コース)

 
 
私は無趣味である。
趣味を持っている人が羨ましい。
 
趣味を持っている人は自己PRがうまい。
履歴書にも趣味を記入する欄があったし、
初対面だと「お休みの日は何をしてるんですか?」という会話もよく交わされる。
まだお互いよく情報を知らないままで、
この人はどういう人なのだろう、というのを知りたいときに、
趣味というのは、回答以上の情報量を与える。
料理が趣味ならば、家庭的なのかなと感じさせるし、
スポーツが趣味ならば、活発な印象を持つ。
さらに趣味が合ったときは、さっそく会話が盛り上がること間違いなしだ。
趣味がないということは、
初対面の人に与える情報量からして、一歩後れを取ることになるのだ。
 
また、趣味がある人は話が面白い。
中でも特に、趣味について話すとき、目が輝く人だ。
彼らのことを、私は尊敬を込めて「オタク」と呼んでいる。
彼らは、マニアックなジャンルであればあるほど、
初心者にも実に分かりやすく知識を披露してくれる。
それにはすごく知識欲が揺さぶられる。
なにより話している本人が楽しそうなので、楽しい会話になる。
 
だから私は趣味がほしい。
自分を表現し、熱を持って語れる何かが。
 
そのために、地道にチャンスをうかがっている。
チャンスとはずばり、オタクから布教を受ける機会だ。
 
ここにおいて布教とは、オタクが薦めるモノの魅力を、
非オタクに対して語り、仲間(=信者)を増やそうとすることだ。
 
趣味探しを始めるにあたって、
オタクから布教活動を受けることは、
畏れ多くもWIN-WINの関係しか生まないと考えている。
 
まず受ける側についてだが、
ハマるための道のりが準備されているということ。
例えば、映画を趣味にしようと思っても、
ふと手にしたものが面白くないと感じる作品ばかりだったら、
やる気がなくなってしまうだろう。
しかし、オタクは、さまざまな作品を知っているので、
初心者向けの作品や、その人に会った作品を教えてくれる。
その作品を見たなら、次はこれだよ、と道のりを作ってくれる。
加えて様々なうんちくもついてくる。
これは、一人でやみくもに手を付けるよりも大幅なショートカットだ。
大変効率が良くなるといえる。
また、やはりオタクの熱を感じることができるので、魅力が伝わりやすい。
 
一方で、オタクは、布教活動に熱心だ。
マニアックなジャンルであればあるほど、
同志を育てるために、持っている知識を全力で注ぐ。
そこに、受ける側がショートカットしていることに対する不満はないはずだ。
あるのはひたすら、好きなものを届けたい、一緒にハマろうよ、という気持ちである。
 
布教活動を受けるために必要な心構えは、
オタクの好きなものに興味を示すこと、気持ちよくしゃべってもらうこと。
 
ここ最近は、バンギャの友人から布教を受けていた。
名前をひかりちゃんという。
バンギャとは、バンドギャルの略称であり、
特にヴィジュアル系バンドが好きな人を指す言葉だ。
アーティスト例を挙げると、「紅」で有名なX JAPANや、
「女々しくて」のゴールデンボンバーもそうらしい。
基本男性メンバーだけで構成されており、化粧をしていることもある。
普段はJ-POPをなんとなく聞いている私にとって、全く未知の世界だった。
 
ひかりちゃんは、バンド中心の生活を送り、
福岡を拠点にしながら東京や大阪、
地方の公演や握手会にもしょっちゅう足を運び、
そのためにいつも金欠なイメージすらある筋金入りのバンギャだ。
 
ネットで見た付け焼刃の話を振ってみたのが始まりだったように思う。
「そういえばひかりちゃんの好きなバンド、新曲出したんだね」と。
 
彼女の世界に深入りするつもりはなかった。
彼女の好きなものに興味を持ってみただけだ。
しかしこの一言がとんだパンドラの箱だったのである。
 
彼女は、私に素質があると認定してくれたのか、
よっぽど同志がほしかったのか、
すぐに布教活動モードに入った。
私は、面白そうだから流されるまま付いていった。
あわよくば自分も趣味にできるかもしれないとの期待を込めて。
 
そこからはひかりちゃんによって、すらすらと道のりが用意された。
まずは、おすすめのバンドから。
その世界観に私が驚いているとみるとすぐさま路線を変えて、
メンバーが出演しているバラエティ番組を見せてきた。
これが結構面白かった。普通にトークが面白い。
メンバーに魅力を感じてきたところで、次の福岡でのライブ日程を告げられ、
予習と称してDVDを見せられ、振り付けを教えてもらった。
最終的にライブハウスまで同行し、
人生初のヘッドバンキングまで体験することになった。
首が筋肉痛になったのも初めてだった。
とても、楽しかった!
当初はまさか、楽しめるようになるとは思っていなかった!
 
まあ結局、私はバンギャになることはなかったのだけど。
異文化としては楽しかったけど、やっぱり私が趣味にするには、少し違うかな。
ごめんね、ひかりちゃん。
 
それでも得たものはある。
 
それはライブハウスに行くという選択肢だ。
お気に入りのアーティストを見つけた。
ヴィジュアル系ではない。フォークソングだ。
ひかりちゃんの布教を受けなければ、自分の好きな音楽を探すこともなかった。
 
趣味といえるほどのことではない。
趣味未満、好きなものが、一つ増えたということだ。
 
今回の成果はそれで十分。
ひかりちゃんの少しディープな話にもついていけるようになったし。
 
オタクによる布教という情報の嵐は、必ずや私に何かを残していく。
これからもチャンスがあれば積極的に巻き込まれたい。
いつか自分の趣味にも出会えるときがくるだろう。
 
 
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2017-07-08 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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