道は見えた。だったら後は歩くだけだ。
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【8月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《日曜コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:伊藤かよこ(ライティング・ゼミ日曜コース)
「今すぐその仕事をやめなさい。きっぱりと!」
Facebookから流れてきたこの言葉に、画面をスクロールする指が一瞬とまった。ドキッとした。
ちょうど1か月ほど前に、ある心理学の研修でこんなワークをやった。
「もし、お金や時間、家庭や仕事になんの制限もなかったとしたら、あなたはどこで何をしたいですか?」
その時私は、迷わずこう答えた。
「海の見える居心地のよい場所で、次回作の小説を書きたい」
そう、私は自分が一番やりたいことを知っている。それなのに私は今、その一番やりたいことをやっていない。
他にやるべきことがある。今はまだ時期じゃない。言い訳だと自覚しつつ、言い訳をしている自分がいる。
「今すぐその仕事をやめなさい。きっぱりと!」
Facebookから流れてきたこの言葉から、あなたはほんとにそれでいいの? そう問われた気がした。
昨年私は、「読んで治す、世界初の腰痛改善小説」を出版した。
最初は、章ごとにまとめや解説を挿入する、いわゆる「小説形式」の実用書の予定だったが、制作がすすむうちに、「物語」だけで勝負をしようということになった。内心、私はとてもうれしかった。「実用小説」ではなく、「小説」として出版できる。子どもの頃に「小説家になりたい」と思った夢をかなえられると喜んだ。
本を識別するためのISBN番号の分類は、「C0095日本文学、評論、随筆、その他」になった。書店で小説の棚に置いてもらえるかもしれないと期待した。
しかし、アマゾンでカテゴリーされたのは、「コリ・痛み」
そして、どこの書店でも、私の書いた本は健康実用の棚にしか置かれない。
出版から8か月、読者からはたくさんの感想をいただいた。
「小説としても楽しめる」
「ちゃんと小説にもなっている」
これはほめ言葉だ。腰痛の改善という、実用面で役立つのはもちろんのこと、小説としても楽しめる、一粒で2度おいしいという意味のほめ言葉だと思う。だけど、ほんの少し残念な気持ちになる。小説ではない、と言われた気がするからだ。
だから次。次こそはだれが読んでも「小説」だと認められる本を書きたいのだ。
だったら、さっさと書けばいいではないか。ごちゃごちゃと言い訳していないで今すぐに書きはじめればいいのだ。あとのことは書いてから考えればいい。今は多くの選択肢がある。インターネットで有料公開、電子書籍、ペーパバック、自費出版……。
いやちがう、そうじゃない。私はただ「小説」が書きたいわけではない。
私が書きたいのは……、売れる小説。ベストセラー小説だ。
本を売ることがどれだけ大変かを思い知ったのは、出版してしばらく経ってからだ。
私は無名の新人著者だったにもかかわらずとても恵まれていた。
出版前にはパウンドプルーフというゲラの仮綴じ本を作ってもらい、書店へ配布してもらえた。出版直後は、当たり前のように本を平積みにしてもらっていた。毎日多くの新刊が発行され、通常2か月で入れ替わると言われている中、私の本は4か月、平積みにしてもらっていた。江戸川区の「読書のすすめ」という名物書店では、私の本を応援してもらった。
それでも思うように本は売れない。
一昨年の夏、東京国際ブックフェアで湊かなえさんのお話を聞く機会があった。処女作であり、200万部以上の大ヒット作『告白』がベストセラーになるまでの過程についてのお話だった。『告白』をベストセラーにするという強い決意のもと、出版社の編集さんと営業さん、取次さん、書店さんがチームをつくり、チームが一丸となってひとつの目的に向かう。書店が閉店する時間から集まって深夜に及ぶ会議、タイトルや装丁について、時にはケンカをしながらみんなで作ったというお話に感動した。
そうか、ベストセラーは一人ではできない。惚れこんでくれる営業さんや書店さんの力が必要で、惚れこませるだけの作品が必要なんだ。
私にはとても無理だ。
それでも、あきらめずにできることは全部やろうと私は、天狼院のライティング・ゼミに通いはじめた。三浦さんの書かれた『いっそ、駄作ならよかったのに。』を読んで、こんな風に自分の本を紹介すればいい、と思ったからだ。
そして、三浦さんご本人にもお会いすることができた。三浦さんは、今度小説を出版されるそうで、そのお話をされる時には心から幸せそうだ。
三浦さんの出される小説は間違いなくベストセラーになるだろう。なにしろ、文章がすばらしい。そして、チームがすごい。なによりバックに書店がついている。なにしろ自分の書店なのだから。
もしかしたら三浦さんは、ご自分の小説をベストセラーにするために、まずさきに書店を作られたのではないだろうか?
いいなあ、ベストセラーか。心から憧れる。
だけど、ちょっと待てよ。
もしかしたら、三浦さんの歩む道を後ろからついていけば、私もその頂にたどり着けるんじゃないだろうか?
私に書店経営はできないけれど、三浦さんに認めてもらって、天狼院書店で応援してもらう、いや応援したくてしかたがないような作品を書けばいいのだ。
そうか、その手があった。
私が、ごちゃごちゃと言い訳をして、小説を書きはじめない理由がわかった。
霧がかかって視界がはっきりしない時、人はむやみに動き回らず、そこにとどまろうとするだろう。もし、歩いたとしてもおそるおそるだ。
ライティング・ゼミを受講する前の私は、霧の中にいたのだ。
「売れる小説」を書きたい。でも、どうすればそれを書けるのかがわからなかったし、「売れるかどうか」は自分だけではどうにもならない。
三浦さんに出会うことで、霧が晴れた。
三浦さんが応援したくなるような作品を書けばいい。
目標がはっきりすれば、おのずとそこに至る道もはっきりと見える。
その道はどうやらそうとうに険しそうだ。だけど、私はライティング・ゼミによって、その険しい道を歩くためのスキルと自信を得た。
となればあとは、歩くだけじゃないか。
私はいつかかならずたどり着いてみせる。ベストセラーというあの頂に。
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