メディアグランプリ

甘美な死骸


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:萩原 朔(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
 「甘美な死骸は新しい葡萄酒を飲むだろう(“Le cadavre exquis boira le vin nouveau.”)」
 
みなさんはこの言葉を聞いたことがあるだろうか。シュルレアリズムの作品の作り方の一つで優美な屍骸とも言うらしい。知ったきっかけはたまたまだったのだけど、Wikiなどで調べたら次のような意味だった。
 
シュルレアリスムにおける作品の共同制作の手法で、複数の人間が互いに他の人間がどのようなものを制作しているかを知ることなしに自分のパートだけを制作するというもの。文章、詩、絵画などでおこなわれる。
 
ざっくり言うと何人か集まって一つのものを作る際に、相手が何を作っているかわからないまま進め、最後に合わせて一つの作品にするという意味らしい。名前の由来としても、共同で文章を制作している時に、冒頭の一節が生まれたので、そのまま手法の名前になったそうだ。
 
普段生活していて、家族や職場ではまったく示し合わずに何かをする、ということは基本的には無いと思っている。家族や友人とどこか外に食べに行こう、ということも相談して決めるし、会社の中で、何らかのタスクやプロジェクトなどではチームのメンバーが一つの目的、目標に対して何をどうすればよいかを考えながら進めていくはずだからだ。
 
それでも僕がこの言葉が気になったのは、言葉の響きに惹かれたということもあるけど、大きな意味で人付き合いや出会い、ひいては人生にも似ている、と感じたからだ。
 
誰かに何かを伝えたいというときは言葉や手紙、最近だとメールやLINEなどでやり取りするけど、送った通りに相手が受け取ってくれないということを経験したことはないだろうか。これは自分の目的と相手の受け取り方の認識のズレで起こっている。お互い意図していないことでズレているのだと思う。
 
複数人で同じ目的を持って何かをする場合はもちろん相談しながら進めることが普通だろう。だけど、個人はそれぞれの思いを持って行動しているので、目的を共にしていない場合はその思いの差が現れることになる。そういった人たちが集まって、友人関係、近所付き合いなど様々なコミュニティーが生まれている。もちろんその中で馬が合う、合わないということもあるはずだ。ただ、そういった中でもうまくやっていかなければいけないのが人付き合いなのだと思う。最近の流行りの言葉で言うと忖度するということが大人の付き合い方なのかもしれない。
 
また、出会いについてもそうだ。たまたま立ち寄った書店で考え方を変えるような本と出会うといったセレンディピティも、きっと偶然の産物だし、人との出会いも思いもよらないことから色んな人と出会えることがある。そんな出会いが繋がって行くのが楽しい。
 
今までの自分はかなり狭い範囲の中で生活していた。友人との付き合いなどもある程度決まった人たちの中だけで過ごしていた。それはそれでもちろん楽しいけど、最近色々な人たちと出会って、交友関係が広がっていく、というのが楽しい。年齢も様々なので、自分が今まで知らなかった話が聞けるのはもちろん、その人たちが過ごしてきた人生、背景が聞けるのがすごくためになる。
 
元はといえば、自分を変えたい、新しいことに挑戦して変えてみようという考えから、積極的に色んな人たちと出会えるように意識して動いてきた。その出会いの中で思ってもいなかったような出来事、イベントがあった。当初の目的の集まりとは別で今までやりたかったことが叶ったりもした。遊びや行動範囲の幅が広がった。
 
このライティング・ゼミについてもそうだ。自分が考えていることを言語化するトレーニングと考えていたけど、それだけでなく話も面白い。そういった点でも新たなインスピレーションを受けている。これも当初想定していなかったありがたい副産物だ。
 
30の前半最後の歳に差し掛かり、ライティングゼミも半分が終わった。人生もライティングゼミも後半戦が始まるところだ。様々な人との出会いが繋がっていくことで、今まで見えなかった景色が見えてくる。まだまだ人生を変えるチャンスはあるだろう。これから先も、今感じていることを忘れずに「甘美な死骸」を楽しんでいきたい。
 
 
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2017-12-02 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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