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古典落語「時蕎麦(ときそば)」を拝見しながら、こんなことを考えていた


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:山田THX将治(天狼院・書塾)
 
毎月天狼院で開催される部活に、“天狼院落語部”がある。
小生、根っからの落語好きの為、毎月の様に参加させて頂いている。
 
天狼院落語部は、数ある部活の中でも歴史ある部活だ。‘歴史ある’と言っても、天狼院自体が未だ、開店4年を過ぎたばかりなので大層なことは言えないが、開店当初に設立されたことは確かだ。
その為、天狼院は書店なので、“ファナティック読書会”が根幹なのは当然だが、“落語部”だって重要な位置だと考えている。
何故なら、改装前の東京天狼院を御存じの方なら御理解頂けるかと思うが、一昨年の改装時に出来上がった二畳の畳スペースは、上がり框(かまち)を持った一段高い造りになっている。普段は、天狼院のシンボルともいうべき炬燵が置かれている畳スペースだが、実は落語の‘高座’を模して造られたと、小生は今でも思っている。即ち、東京天狼院改装後の畳スペースは、落語部の為に作られたと信じて疑わない。
 
天狼院落語部で御指導頂いているのは、落語立川流真打の立川小談志師匠だ。
小談志師匠は、真打に昇進される前から天狼院落語部で御指導なさっているが、毎月二席、小談志師匠の噺を観賞出来ることは、我々落語部員にとって有難い限りである。
今月の落語部での出し物は、マネージャーのリクエストも有って小談志師匠お得意の「時蕎麦」だった。
「時蕎麦」に関しては、小談志師匠の紹介記事等で、得意の演目として紹介されているから間違いはない。思い返せば、二年前の“天狼院文化祭”での落語部発表会でも、小談志師匠は「時蕎麦」を演じて下さった。
 
「時蕎麦」は、古典落語の中でもとくに有名な噺なので、御存じの方も多いことだろう。
寒くなって来た時分に、行商の蕎麦屋を呼び止めた男が、口八丁で蕎麦の代金をごまかす。それを見ていた江戸っ子が後日、真似をしたが上手く行かなかったという、滑稽噺だ。
今回の小談志師匠の「時蕎麦」は、普段見慣れた演目にもかかわらず、少し長めに演じられた。ところどころの描写が詳しく、新たなギャグ、といってもテレビ等でよくみられる芸人の‘いじりギャグ’ではなく、落語の本寸法なギャグが数多く加えられていた。
なんだか、立川小談志師匠が、一段高みに上りつつあるように感じられた。
 
落語家さんの“高座名”は、亭号(三遊亭とか柳家とか)に一門由来の一文字を取って付けられるものだ。
その点、立川小談志師匠は、立川談志師匠の高座名そのままに弟子の印である“小”が付いたものだ。弟子の印が着いたままでは、この名が“大名跡”となることは無い。
しかし、時代は変わって来ている。
有名なところでは、春風亭小朝師匠がその例だ。春風亭一門の柳朝師匠の下で、小朝師匠は真打昇進前の二つ目時代から、春風亭小朝を襲名していた。真打昇進時も、柳朝師匠が逝去された後も改名せずに、いわば“弟子名”を名乗り続けている。
御存じの通り、小朝師匠も還暦を超え‘名人’‘上手’の域に達していると言っても過言ではないが、大名跡襲名の気配すらない。そうなると、例え“小”が付く高座名のままでも、‘名人’‘上手’と呼ばれても構わない時代になったということに他ならない。
立川小談志師匠には是非、小談志のままで「現在No.1の噺家」まで上り詰めて頂きたいものだ。
 
立川小談志師匠の「時蕎麦」を拝見しながら考えていた。
小談志師匠の“小”を、読みはそのままで、別の漢字には出来ないものかと。
“立川談志”の名は、他の一門なら兎も角、今の落語立川流に於いては‘永久欠番’の様に以降誰も継げないと考えるのが、共通認識だ。何故なら、立川流が、他の協会とは一線を画した独立系の存在だからだ。
しかし、天狼院落語部の師匠がいつまでも‘弟子名’のままでは、知っている方には問題無いが、やはり世間体ってものが有ると思ったからだ。
自宅に戻って漢和辞典をめくりながら、色々と‘こ’の字を探してみた。格好良く、若々しく、なるべく伝統的に見えるものを。しかし、これはといったものは、残念ながら探し出せなかった。
 
立川小談志師匠が、真打に昇進され“小談志”を襲名するにあたり、いいことを聞いた記憶がある。
「“小談志”を“談志”に負けない名にします」
襲名披露会での小談志師匠の挨拶だ。
「この小談志は、地味ながら本寸法の話が出来る男です。丁度、談志師匠の若い頃と似ています」
小談志師匠を預かっていた、立川龍志師匠が挨拶で仰っていたことだ。
そして、一門の人気者、立川談春師匠はこんな事を仰っていた。
「我々、談志一門の者は通常“談”または“志”の一字を頂いて高座名にします。ただ一人、この小談志だけが“談”と“志”の両方を継いでおります」
そうだ。
 
都合が良いことに、談志師匠の師匠は柳家小さん師匠だ。
立川小談志の名は、師匠である“談志”に大師匠の一字が付いたと考えられる。
二度と現れないであろう“談志”は、小談志師匠しか継いでいないことでもあるし。
ならば、仰る通り“小談志”のままで、大名跡まで登り詰めて頂く事にしよう。
 
「時蕎麦」を拝見しながら、柳家小さん師匠も得意の演目だったことを思い出した。
 
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2017-12-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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