極めてシンプルな秘訣
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:荒野万純(ライティング・ゼミ平日コース)
高校生まで、数学が頭痛のタネだった。
小学校お受験の塾で算数もどきにつまずいて以来、とにかく数学が苦手になった。5歳の時にインプットされてしまった、「出来ない」「嫌い」のトラウマに近い先入観はあまりに強固で、高校2年生までしっかり引きずっていた。
だが、しかし、高校2年生の夏休みにふと思ったのだ。数学を勉強するのは最後の年なのだから、最後ぐらい何とかしようと。
その時から夏休みの間、毎朝5時に起きて数学の練習問題を地道に解いてみた。
わからない問題は丁寧に何度かやり直しもしながら。
二期制の学校だったから、夏休みが明けてすぐに期末試験があった。
数学はいつもの通りに特に期待をしていなかった。
ところが、今まで数学でお目にかかったことのないような満点に近い点数を取ったのだ。自分でも驚いてしまった。そして、とても単純な事実に気がついた。
「何だ、練習すれば出来るんだ」
物事を習得するには練習をすれば良いのだという事実は、自分で発見したし、身をもって体験したわけだから、自分の中の揺るぎない価値観の一つになっていると思っていた。
大人の手習いで5年ぐらい前からゴルフを始めた。
週末にいそいそとゴルフに出かける夫に置いていかれるのがつまらなくて、
つい口が滑った。「私もゴルフやる!」
テニスや野球と違って止まっているボールを打つのだから、何とかなるだろうと思っていたら、これが大間違いだった。
地面に置いてあるポールを打つことを繰り返せば良いだけなのに、なぜかこれが毎回同じようには出来ない。打つ度にボールの行く末は違うし、恥ずかしいくらいに少ししか飛ばなかったり、ビリヤードの玉みたいに地を這うように転がるだけだったり。もちろん、空振りだってする。思いっきり打ったのに微動だにしないボールに唖然とするばかりだ。
厄介なのは、どうして上手く打てないのかが自分でよくわからないこと。
ゴルフのスイングは1秒から2秒の一瞬なので、その間に何が起きているのかを自分で把握することはとても難しい。
頭の位置が悪いのかな? いや、腰が回っていない? 右ひじをもっと伸ばしてみようか。などとやっているうちにどんどんぐちゃぐちゃになってカオスの世界に突き進む。
そして、何よりもメンタルが大きく影響するスポーツだ。
池が見えた途端、そっちに打ってはいけないと思うのに、まるで吸い寄せられるように池に打ち込んでしまう。
ちょっとでも右側は狭くて嫌だなと思うと、右に行く。
「今日は調子良いじゃない」と褒められた途端に、それまで上手く行っていたのが嘘のように突然打てなくなったりするのだ。
初心者のゴルフ場でのラウンドはなかなかに悲惨だ。
人工芝の平らな練習場でそれなりに打てても、足元が少しでも斜めに傾いていたり、視覚的な錯覚をふんだんに盛り込んだゴルフ場では、ボールは右に左に大きく曲がり、林の中に飛び込むわ、急な斜面に刺さるわで、ありとあらゆるトラブルに巻き込まれる。
1つのホールで両手では足りないほどの打数を打つこともあるし、それを数えるのだって一苦労だ。
初心者だってちょっとしたプライドはあるものだから、あまりに打てなかったり、尋常でない打数を稼いだりすれば、心はポキっと折れるのだ。
お昼休憩のクラブハウスでランチを食べながら「もうやめて帰る!」と泣きながら夫に食ってかかったこともあった。
何だかゴルフは今まで経験したスポーツや楽器の習得と様子が違う。
さっきまでできたことが突然できなくなったり、上達したなと思っていたのに、また振り出しに戻るぐらいに何もかもできなくなったり。
そうかと思えば、まるでプロが打つような奇跡的な一打が突然出現することもある。天国と地獄を行ったり来たりするようなこんな経験はあまりしたことがない。ジェットコースターに乗ったように振り回されて、上達してるのかどうか全くわからないゴルフにちょっと疲れて思った。
「ゴルフは違うのだ、きっと。練習じゃなくて才能の問題だ」
「私には向いてないんだ」
練習するのがすっかり嫌になってしまったある日、夫がテレビで見ていた
女子プロゴルフの試合中継で、解説をしていた往年の岡本綾子プロが淡々と語っている声が耳に入った。
「成績の良い選手ほど、試合が終わってから遅くまで練習しているのですよね。成績の悪い選手ほど早く帰るのですよ」
ああ、そうだ、そうだった。
全ての物事は練習なのだとわかっていた筈なのに。
高校生の時に、血肉になったと思っていた価値観は十分に染みこんではいなかったのだ。
ゴルフが上手くならないのは単なる練習不足。
練習すればできるというシンプルな事実を体に叩き込むために、上達するのにかなりの練習が必要なゴルフをやる機会がやって来たのかもしれない。
書くことだってきっとそうなのだ。
ライティング・ゼミの講座も半分終わって、書くこと自体は少し慣れてきたように思うのに、きつさは増すばかりだ。
テーマになるようなイベントについては大方書いてしまったし、毎回、だんだんと乾いていく雑巾を力一杯絞るような作業に、つい弱音を吐く。
「私には書く才能がない」
いやいや、違う。練習、練習、練習!! 全て練習だ。
このきつさを体験することこそに意義があると肝に銘じて、書き続けることにしよう。
ちなみにゴルフはまだ110を切れない。先は遠い。
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