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メディアグランプリ

空に根を張る


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:緒莉香(ライティング・ゼミ 通信専用コース)
 
 
陽が当たっているのに、シルエットのように見える、冬の桜の木。
ついこの間まで、紅葉した葉がついていたはずなのに、気づいたらほとんどなくなっていた。
かろうじて数枚しがみついている葉があったが、落ちてしまうのも時間の問題だ。
 
日に日に空気が冷たくなっていく。
朝もなかなか布団から出られなくなり、通勤も憂鬱になりがちだ。
日も落ちるのがどんどん早くなり、気分も一緒に落ち込んでくる。
つい、うつむいて背を丸めて歩くようになってしまう。
 
 
そんなときは、少し頑張って上を見る。空を見上げる。遠くを見る。
 
上を向こう、空を見上げようという歌詞の歌は沢山ある。
前向きになろうという内容のものが多いので、それをならって空を見上げている。
 
空を見ると気づくことがある。
冬の空気は寒いけれども、澄んでいて、とても空が高い。
そして、雲ひとつないキレイな空が広がっている日が多い。
 
飛行機が飛んでいると、どこに向かうのか想像したりする。
飛行機雲もくっきり見える。
 
時々、通勤の時に電車の中から富士山が見えたりする。
空気が澄んで遠くまで見通せる冬の空でないと見ることができない。
私が乗っている通勤電車は、ほとんど陸地を走っているが、数駅の間だけ高架を通る。その数駅の間の短い区間だけ、富士山が見られるスポットがある。
うまく富士山が見られたら、その日は一日気分がいい。
私にとって、冬のお楽しみのひとつだ。
 
通勤途中にある桜並木。
桜の木々は葉が抜け落ちてしまい、見るからに寒そうだ。
桜の花が咲く季節が待ち遠しい。
3月になったら、蕾をみて、一人で桜の開花のカウントダウンをしている。
でも、今は12月。まだまだ先は長い。
 
上を向いて歩いていると、冬の桜の木には、花や葉がある時とはまた違った見かたがあることに気付いた。
桜の木は、木の色が濃い茶色なので昼間でもシルエットのように見える。
まるで影絵のようだ。
夜になると、暗さに溶け込んでしまい、よく見えなくなってしまう。
なので、朝や昼間に見た方がいい。
空が綺麗なので、桜の木がとても映える。
余計なものが削ぎ落とされているので、「木」本来の形がくっきり見える。
 
シンプルなのに、シンプルだからこそ、躍動感が感じられる。
踊っているように見える。怒っているようにも見える。
歌舞伎役者が見栄を切っているようにも感じられる。
なんて力強いのだろう。
 
桜の木の近くには、銀杏並木がある。
こちらは、まだまだ葉が沢山ついているので、木と枝だけになった姿を想像してみる。
直立不動のように真っ直ぐ立っている。背が高くて、枝は短い。
こちらは、ムーミンに出てくる『ニョロニョロ』のようだ。
ずいぶん背が高いニョロニョロだ。
あまり躍動感はない。
 
 
桜の枝の広がりは、葉脈、血管のようだ。
しっかり生きていることが感じられる。
 
枝の先をよく見てみると、すでに蕾がついている。
こんな前から蕾はあるんだと、驚いた。
 
蕾は、まだまだ小さく、冬の間に寒さに耐えながら力を蓄える。
そう思うと、いろいろやって上手くいかない時は、じっとした方が良さそうだ。
一度立ち止まって、その場でじっとする。
へたにじたばたしない。
自分に足りないものを勉強したり、鍛えたりして、力を蓄える。
 
桜を見て、そんな風に考える。
 
想像は広がる。
 
真下から桜の木を見上げていると、枝が根っこのように見えてきた。
 
冬の間、本物の根っこは地中に根を広げ、水分や養分を取り込む。
枝の根っこの方は空に根を張り、何を取り込むのだろうか?
 
遮るもののない、広い広い空。
土台がしっかりしていたら、どこまでも枝を伸ばせそうだ。
 
きっと、新しいものを取り込もう取り込もうと枝をのばしていくのだろう。
 
樹齢を重ねた桜の木は、支えが必要なほど枝が広がっている。
枝も網の目の様にたくさんある。
どんなものを取り込んできたのだろうか。
どんなにたくさんの物を取り込んできたのだろう。
 
私の土台はどれだけあるのだろうか?
40年以上生きてきたけれど、ちゃんと私と言う人間を支えられるだけの土台はできているのだろうか?
新しいことはどれだけ取り込めているだろうか?
桜の木の枝のように、空へ空へと根が張れているだろうか?
空の広がりを追いかけるくらい、いつまでも好奇心を忘れずにいたい。
 
上を向いて歩くと、落ち込んでいた気持ちも、少しは元気になってくる。
前向きになってくるのは本当だ。
 
 
いろいろと考えていると、こんなことも頭に浮かんできた。
枝が根っこに見えるので、桜の木を引っこ抜いて、逆さまに植え替えてもバレないんじゃないか、と。
 
きっと、根っこは枝みたいな形をしているはずだ。
時々、太い根っこがアスファルトを突き破って見えているときもある。
こちらも躍動感あふれていそうだ。
想像すると、とても面白そうだ。
 
あっ。
でも、根っこからは桜の花は咲かない。
春になっても、一向に花が咲かないとなると、きっとバレてしまう。残念!
 
 
***

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2017-12-23 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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