メディアグランプリ

「大人のCAN-DO リスト」と「価値のブツブツ交換」で「個人」が輝く時代へ


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記事:NORIMAKI(ライティング・ゼミ平日コース)
 
 
この正月休み、15年以上の付き合いになる大学時代の友人と久しぶりに会った。彼は大学卒業後、専門の土木の知識を生かし、東京の測量技術の会社に就職。10年働いて退職し、林業の専門学校に通って、今は長野の実家から1時間ほどの山村で、森林組合の職員として働いている。文系でオフィスワークを続けている自分とは真逆のキャリアだ。仕事の傍ら畑もやっていて、今度野菜を送ってきてくれるという。「お返しに何をしたらいい?」と訊いたところ、「何もいらねーよ。好きでやってるんだし」と簡単にすかされた。
 
「いいよな。製材の技術があって、野菜も作れて、『俺はこれができる』ってはっきりしてるのがうらやましい」
「『お前は何ができる?』と訊かれて、すぐに答えられないサラリーマンは多いよなぁ。一次産業は強いぞ」
 
年末には、もう一人別の友人とも食事をした。彼女も大学のサークル関連で知り合った同世代で、中学校の教師をしている。今、中学校の英語の授業では、「CAN-DO リスト」という達成度評価の指標が使われているらしい。「△△を習ったので、私は◇◇ができるようになりました」というように使って、生徒の到達度を「見える化」するのが趣旨だとのこと。英語の授業に限ったことかもしれないが、中学生であっても無理なく「私は◇◇ができます」が言えるような仕組みが整っていた。
 
「今時の中学生は恵まれてるね」
「私たちの頃より、先生は大変かもしれないけど。でも、生徒の表情が変わるのを見ると嬉しくなるよ」
 
 
それからというもの、私は「自分のCAN-DOって何だろう?」と何度も自問自答することになった。しかし、うまい答えは浮かばない。10年以上、自分なりに一生懸命社会人をやってきたつもりなのに、「これができます!」と堂々と語れない自分は何なのだろう? 会社名、所属、肩書き、TOEIC□□点とか、そういう「スペック」ならいくつも思いつくのに、「で、何ができるんですか?」に答えられないとは。じつに不甲斐ない。
 
そんな自分に耐えかねて、休み明けに我流の「CAN-DO リスト」作りに取りかかることにした。「キャリア棚卸しワーク」みたいなのが付いているビジネス書を買ってきて、それに従って、「できること」を絞り出していった。「あなたの好きなことは何ですか? 得意なことは?」「寝食を忘れてやってしまうことはありますか?」「そうした経験やスキルはどんな人の役に立ちますか?」「その人たちはどんなニーズを持っていますか?」まるで就活生に戻ったかのような気分で、空欄をなんとか埋めていく。正直、「できること」というよりは、「できなくはなさそうなこと」レベルの回答ばかりで、これらをもって社会に貢献できるだけの「CAN-DOリスト」と呼ぶには程遠いのだが、時を変え、場所を変え、何度も繰り返すうちに、「自分の輪郭」みたいなものがおぼろげながら浮かびあがってきた。
 
内容や完成度はともかくとして、「CAN-DO リスト」作りをやっていて気づいたことがある。それは、「これって、中学生に限らず、大人はみんな持ってたらいいんじゃないか?」ということ。いろんなスキルや経験があるのに、それが「見える化」されていないという人は、私以外にも結構いるかもしれない。でも、もしみんなが自分の「CAN-DO リスト」を持つようになって、さらには名刺やらSNSやらを通じてお互いにアピールできたとしたら??? 
 
冒頭の彼は高知に友人がいて、「野菜と交換でカツオを送ってもらおうかな」と言っていた。もし「トマトを一箱送るから、カツオを2本ちょうだい!」のような条件を提示して、お互い「いいよ」となれば、物々交換の決定だ。これをスキルにも転用してみるとどうなるか。たとえば、AさんのFacebookには「ウェブの記事が書けます」、Bさんは「和文→英文の翻訳ができます」とある。「じゃ私2,000字書きます」「わかりました。お返しに1ページ訳しますね」といった具合で双方が合意すれば、「CAN-DO リスト」を介した「価値のブツブツ交換」が成立する。これって、未来の働き方の一つのモデルにならないだろうか!

「CAN-DO リスト」に示されたスキルがITの力を借りて広く認知され、それを自在に交換し合うことで、組織とお金に頼ることのない、「個人」同士の助け合いによる経済が拡大していく。自分が苦手なことは無理してやらず、得意な人にまかせる。逆に友人の苦手を引き受けて自分の得意分野で貢献する。「あなたの苦手は、私の得意」。人はそれぞれ個性的な凹凸をもったピースだ。そういう無数の才能がどんどんうまくかみ合わさり、「ポジティブスパイラル」の渦となって、最終的には「世界」というダイナミックでカラフルなジグソーパズルを形成する。「大人のCAN-DO リスト」とそれを利用した「価値のブツブツ交換」で、「個人」がこれまで以上に輝いていく―そんな時代が、もうすぐそこまできている。

 
 
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2018-01-19 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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