テニスコートに自分を表現するように
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
【2月開講】人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ《平日コース》」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
記事:西嶋祐子(ライティング・ゼミ平日コース)
もともと好きで読んでいたある方の文章が、ある時から、ぐっとレベルアップしたような気がしていた。
なんというか、ぐいぐい引き込まれるというか、長いのに、最後まで読みたくなる何かがあるのだ。
もしかしたら、何か秘密があるのかも?
本人にお会いしたとき聞いてみたら、どうやら天狼院なるライティング・ゼミがあるということだった。
そのときは、やっぱりという気持ちだけだった。
それから、だいぶ時間が経ってからも、なぜか頭の隅で気になっていた。
この気になる感覚は、なんだろうか。
静かに感じてみると、面白そうだからやってみたいという気持ちだった。
今、手を付けたばかりの新しい仕事を覚えるために、いつもとは違う脳みそを、フル稼働させているところだというのに。
この忙しい時期に、あえて、という気持ち。
夏には、今の手元のものが落ち着くから、それからでも遅くはない。
でも、なんか面白そうという気持ちと両方だった。
どうしたらよいものか? と、
手持ちのオラクルカードを引いて、結果をみたりもした。
なんとか私を諦めさせる理由を考えてみるのだが、どう転んでも、YESという答えしか出てこず、受講してみることにした。
最終的には、なんか面白そうという気持ちが勝ったのだ。
それと同時に、ある感覚が思い出された。
これなら父に口うるさく言われることはないだろう。
それが、部活を選んだ1番の理由だった。
中学に入学した私が選んだのは、軟式テニス部。
小さい頃から、父は厳しかった。
父は、なんでもかんでも私に口出しをしてくるように感じていた。
それは、心配からくるであろうことも分かってはいたが、
それが、うるさくてしょうがなかった。
父は、スポーツ全般、なんでも興味があったし、
ソフトボールなど、職場のレクレーション大会で体を動かすこともしている人だった。
小さい頃は、私が運動神経がにぶいのを克服させようと、家の近くの川べりを走らされたり、ボールを投げる練習をさせられたりしていた。
私は、特にボール投げが出来なかった。
できないから、私に練習させた父なのに、
短気なために、私ができるようになるまで見守ることはできず、
途中で、怒って家に帰ってしまうのだ。
私は、できない自分に腹が立ち、怒って帰る父を見ては、腹が立ち、悲しくてしょうがなかった。
だからといって、どうしたらいいのかわからず途方に暮れる。
こんなに一生懸命やっているのにと涙がでることも多かった。
そんな時間が何度も続いた。
だから私は、父の前で、何かをするということが嫌だった。
家では、スポーツ中継があると、テレビのチャンネルは独占された。
マラソン、箱根駅伝、野球、サッカー、ラグビーなど、
いろんな中継をしょうがなく付き合って観る中で、テニスは、その中に含まれていなかった。
父がそんなに興味がなかったからだ。
だから、私は、これなら口出しされないだろうと
軟式テニス部に入部することにした。
予想通り、父は、何も言ってこなかった。
私は、やっと自由にできると思った。
もともと運動神経のにぶい私にとって
練習は、なかなか思い通りにいかなかった。
悔しい想いもたくさんしたが、辞めようとは思わなかった。
それは、ラケットの真ん中に当たったときの音。
あのポーンという、なんともいえない音を聞くのが心地よく、
はまった感触を味わえるのが、好きだったからだ。
ただただ無心で、ボールを追いかけるのは楽しかった。
そして、そこには、自分で判断してプレイできるという自由があった。
自分で決めて、自分の打ちたい方向へボールを打つ。
それは、テニスコートで、自分を表現できるということでもあった。
テニスコートというキャンパスに、自分の好きなように、自分を表現する。
それが、たとえ下手くそで、どこにボールが飛んでいくのか分からない状態であっても
他には変えられない時間となっていたのだ。
書くことも、テニスコートでボールを打つことも
私にとっては、同じような感覚がある。
誰にも邪魔されず、自分を表現できる場所。
もっと自在に表現できたらという憧れ。
現状はというと、書くことへの憧れはあるが、
決して、自分の思い通りになっているとはいえない。
どちらかというと、書きたいけど書けないというもどかしさ。
ここも軟式テニスと同じだ。
でも思うようにならないからこそ、やってみたいのかもしれない。
なんだかんだで、軟式テニスは、社会人になってからも続けている。
これから、どこまで、もどかしさがクリアになっていくのかは未知数だ。
初めての世界で取り組んでいく1つ1つのことが、いい意味で、早く笑い話になっていくような、そんな時間を過ごせたらと思っている。
何が起きるのだろうという、期待と不安が入り混じったような気持ちで、自分を表現することへの新たなチャレンジがはじまる。
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