私は壊れたままでいい。《プロフェッショナル・ゼミ》
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記事:深澤智世(ライティング・ゼミ プロフェッショナルコース)
「オタク気質だね〜」
アルバイトの最中に社員さんにさらりと言われた。
びっくりするくらいしっくりきた。
ちょうど紅茶の話になったのだ。
最近、パックにはまっているのですよねーという話から
「まずカップをお湯で温める! そして汲みたての水道水をぽこぽこ泡が出るくらいまで沸騰する。そしてそっとパックを滑り込ませる。絶対に、かき混ぜたりしてはいけない!!! そして蒸らす!!!!! いやーだから時間ある時はこっそり蒸らして出してるんですよ」
聞かれてもいないのに美味しい紅茶の入れ方について話してしまった。
もう早口で思わずぶわあああああと話してしまった。本当にこんなびっくりマークが入っていそうなね。
やってしまった……と思った。
けれど聞いてくれた社員さんはふわりと笑って「オタク気質だね〜」と言ってくれたのだ。
オタク気質。ぴったりと自分に言葉が張り付いた。社員さんの表情を見ていて、どちらかというとプラスの意味で言われているのもわかった。
初めての経験だった。
こうやって話して受け入れてくれるの。正直とても嬉しかった。
だいたいいつも引かれるから。
多分、自分がマイナスで捉えられるんじゃないかと思っているのは一つの理由がある。
中学生時代のことだった。
「人狼ゲーム」の話になった。
一人の子が「人狼やってみたいな〜そういえば智世ちゃん前やってたよね?」
みたいなことから始まって「どんなゲームなの?」と聞かれた時だった。
もう私はその瞬間「人狼ゲーム」のルールについて事細かに話してしまった。
「〜ここが考えどころで、熱い心理戦が繰り広げられるの!!」
普段どちらかといえば大人しい私が突然嬉々としてベラベラと喋り出したので、当然ではあるけど、皆本当にポカンとしていた。
「智世ちゃんって壊れたレコードみたいだねえ」
と一人の女の子が柔らかく言った。
その子は褒めても貶してもいなくてニュートラルな気持ちで言ったことはとってもよくわかっている。わかっているんだけど。
でもやっぱり「壊れた」って言われて気持ちが良いわけがなくて。
でも、びっくりするくらいぴったりだった。
そうまさに数年後までちゃんと覚えているくらいに。
周りが止めようとしても止まらない、スラスラと行くわけではなくガッタガタのままずっと喋り続ける続ける、壊れたように。自分と綺麗にその姿が重なった。
私はその日のことをずっと覚えていたから、次はそうならないようにしようと思っていた。
いつも通り大人しく落ち着いて、必要最低限のことだけ話して。
そうするといい感じに周りに溶け込めた。
私は周りに「正常なレコード」だと思われたかった。
綺麗な音色を淡々と奏でていたかった。
でも好きなことを楽しそうに話す人が好きだった。
眩しかった。でも自分はあんなように熱意を持って話すことはもうできなくなっていた。
そして今大学生になった。周りのことを皆気にしていないような空気感に落ち着いて、前ほど色んなことを意識しなくなったからだろうか。
そんなときバイトで思わず素の自分が出てしまったのだ。
好きなことをベラベラと止まらずに話してしまう。
ああまたやってしまったと思った。
「オタク気質だね」
とプラスで言われた。
そしてその後だった。
「オタク気質ってクリエイターになるには大事だよ」
と言ったのだ。
嬉しいと思った。だってクリエイターになりたいから。
重ねるように三浦さんが「狂」が入っているね。と言った。
これが、「狂」だったのか。ライティング・ゼミの時からずっと聞いていて、どうしても自分の文章に入って来てくれなかったもの。そうだったのか。
これだったのか。
私はいつの間にか忘れていたんだなあと急に色んなものが押し寄せて来た。
この時自分の好きなことを楽しそうに嬉しそうに話す天狼院書店の人、ここに集まってくれるお客さんのことを思い出した。
カメラのことを嬉しそうに話す三浦さん。辻村先生のことを話すバイトの同期。好きな作家についてたくさん教えてくれたお客さん。好きな人のことを嬉しそうに話していた人。
たくさんの嬉しそうな少し赤い頰と楽しそうなことが好きなことが全身で伝わってくる姿。本当にかっこよくて好きだった。
ああ、自分はいつの間にかきっと天狼院書店で出会ったたくさんの人にたくさん刺激を受けて影響されていたんだなあと思った。
私が昔に置いてきてしまったものをまた取り戻すことができた。
「オタク気質だね」から始まるたったの3言だ。
それを通して私は色んなことを知った。
こんな数年後に救われることがあるのかと泣きそうだった。
私は好きなことを思いっきり語ってよかったのだ。
私は壊れたレコードのままでよかったんだ。
ただそれを確信した。
ありがとう。
そして今日も私は天狼院書店のアルバイトスタッフとして店頭に立つ。
私の好きなことも胸を張って紹介出来るように。
「ライティング・ゼミという講座がありましてね、これが本当にすごいんですよ〜」
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