村上春樹は球場でなにを想うか
*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
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記事:大久保忠尚(ライティングゼミ・平日コース)
「大きな声でー!」
「恥ずかしがらずにー!」
夕方6時過ぎ。
応援団が観客を盛り上げていく。夕日に照らされながら、数百人、いや数千人のユニフォーム姿の老若男女が一点を見つめ、手を掲げ大声で選手の名前を叫ぶ。叫ぶとはいえ、その表情は実に明るく、これから始まる約三時間を楽しもうという笑顔で満たされている。
そしてその声と一緒に、トランペットの音色がオレンジ色から紺色へと変わろうとする美しい夕焼け空に響き渡る。
ある人は声を出し、またある人は夜空の下でビールやジュースを飲みながらくつろいでいる。
東京ヤクルトスワローズのホームスタジアム、神宮球場でのナイターゲームが始まった。
球場へ野球を見に行ったことがあるだろうか。
また野球観戦にどのようなイメージを持っているだろうか。
行ったことのない人、野球をあまり知らない人にとっては、どこかオヤジっぽかったり、ファンでないと球場に足を踏み入れづらいイメージがあるかもしれない。
昔からお父さんがチャンネルを占領して野球中継を見るイメージはどこかにあるかもしれず、また野球の泥臭さからなんだか汚い印象もあるかもしれない。
しかしそのような時代は終わった。オヤジっぽさや、おじさんが見に行くものというイメージは近年変わってきている。野球中継が人気低迷により放送が少なくなっているのはどことなく感じている人もいるだろう。そんな状況もあり、今は男性への人気よりも女性人気を得ようと野球界は頑張っている。球場のトイレなどの施設も年々綺麗になっており女性への配慮も増えている。
「カープ女子」という存在が広まったように、女性ファンは少しずつ増え、女性向けのサービスやグッズも多い。女性だけを集めた試合が開催されたこともあり、女性人気は着実に上がってきているのだ。
では、いざ見に行こうと思った時に、そのチームのファンでなくても大丈夫かというと難しい場合もある。今は女性向けサービスの向上や地域密着によりファンが急増しているチームもある。元々のファンでもチケットを取ることが難しいこともあり、ファンの間でもチケットは争奪戦。せっかく興味が湧き「野球を見に行こう」と思ってもチケットが取れなければ仕方がないだろう。
仮にチケットが取れたとしても、周りは熱烈なファンばかり。もしかすると初めての人は圧倒されて疲れてしまうかもしれない。
では諦めるしかないかといえば、そんなことはない。
初心者でもチケットが取りやすく、なおかつ気楽に楽しめるチームがある。
「明治神宮球場」を本拠地とする「東京ヤクルトスワローズ」の試合だ。
神宮球場は、東京都は新宿区、最寄駅は地下鉄外苑前駅もしくはJR信濃町駅、新宿駅から電車に乗れば15分ほどで辿り着ける好立地にある。
休みの日はもちろん、仕事が終わってからも非常に行きやすい場所のため、興味があればすぐに向かえるというのが一つの魅力である。
ではチケットは取れるのかというと、一週間程前に確認すれば「だいたい取れる」のだ。カープ女子で知られる「広島東洋カープ」や近年人気が上昇している「横浜ベイスターズ」は、約一ヶ月前に予約をしないと取れないのに対し「ヤクルト」のチケットは取れてしまう。球場の席はホームチームとビジターチームで席が分かれるが、神宮球場の場合、ビジターチームの席が先に満席になり、ホームチームであるヤクルト側の席が空いていることが多い。
僕は大声で言いたい。
「ヤクルトファンもっと頑張れよ!」
そんなことを言いながら僕もヤクルトファンなのだが、これが初心者でも球場に行きやすいもう一つの魅力である。
ヤクルトというチームは、昔から選手同士で仲が良く「ファミリー球団」と言われている。それが時に強さに、時に弱さにもなるのだが、それに付き添うようにファン達も、選手達が一生懸命プレイする様子を見守る家族の一員のような応援スタンスなのだ。
チームによっては、勝つことが絶対、ミスしたり負けたらブーイングということもあるが、ヤクルトファンはそういうことが少なく、むしろ一緒に残念がったりそんな選手達を励ます応援をしている。
球場に行って「何よりも勝つ瞬間を見届けたい」というよりは「行ける時に応援しに行こう」「自分が見に行かなくてもきっと大丈夫」という考えの人が多いのかもしれない。だから、初めての人が応援しないまま席に座って見ていても平気だ。隣にそのような人が座っていることだって多いだろう。
当然、他チームにも負けないトランペットやメガホンでの応援もあり、一生懸命応援しているファンもいる。もし応援がしたくなったら、見よう見真似でメガホンや手を叩いて大声を出してもいい。そんな時はファミリーの一員としてあたたかく迎えてくれるだろう。
ファンといえば、作家・村上春樹もヤクルトファンで知られており、時にコラムでヤクルトについて触れ流こともある。村上春樹はファンクラブでは名誉会員になっているが、世界的な作家だけに名誉会員一号かと思えばそうではない。実は二号である。世界的作家をさし置き、名誉会員一号は誰かといえば、芸人・出川哲朗だ。そして三号は、さだまさしである。そんな人選にもヤクルトというチームの自由な雰囲気が感じられる。
球場に来て、ぼんやりと眺めながらお酒を飲んでも良い。神宮球場は屋外球場のため夏であれば涼しい夜空の下でビールが飲める。花火も打ち上がる時があり、それだけで夏の思い出が作れてしまうのだ。また法律上ドーム球場では火を使った調理が出来ないため、野球場の料理はイマイチのものが多いが、神宮球場は屋外で火が使えるため料理も美味しいと評判だ。名物「ウィンナー盛り」はもちろん、球場独特の料理や選手の名前が付いたドリンクを楽しんで欲しい。
気軽に行けて、外で気持ちよくお酒が飲めて、席の時間も気にすることなく、夏は花火も打ち上がり、気が向いたら大声を出しても良い。全部まとめてもチケット料金は一番安くて二千円程度というのも魅力だ。
神宮球場での野球観戦は、まさにビアガーデンやカラオケ、野球というショーが一緒になった総合エンターテインメントである。
もし観戦に行くときは、小さめの傘を持って行くと良い。たとえ晴天の予報でも。
その理由は行けば分かるはずだ。あなたはきっと楽しめると思う。
三月三十日、今年のシーズンが始まる。
村上春樹が眺める視点と共に、あなたなりの野球観戦をぜひ楽しんでみてはいかがだろうか。 ***
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