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さくらを見て想う


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:姫蝶(ライティング・ゼミ特講)

 
 
「日本の国花は、桜ですか?」
 
黄色のキングココナッツが生るヤシの木がたくさん並び、ところどころにピンク色のスリランカの桜が咲く道を車で移動していたとき、スリランカ人のドライバーに突然、質問された。
 
日本の国花?
日本の国花が何かなんて、これまで、考えたこともなかった。
 
「たぶん、桜か菊だと思う」
 
適当にしか答えることができなかった自分が、とても恥ずかしかった。
日本から海外に出ると、私個人という以上に、日本人としての自覚を持ち、日本に誇りを感じるようになる。しかし、これまで、海外の人と、日本の文化について話す機会がほとんどなく、日本の文化について考えることに慣れていなかった。
これまで、日本の国花が何かなんて、別に知らなくても困ることはなかった。日本の至るところに桜のモチーフが溢れ、桜は日本人にとって当たり前の大切な花だからだ。
 
3月になると、スリランカにはピンクの花が咲く。この花のことを、親日のスリランカの人たちは「スリランカの桜」と呼んでいる。
それは、枝振りも花の色も、日本の桜とは全然違うものだが、日本から遠く離れた、赤道に近い南国の地で、ピンクの花を見ると、ほっと懐かしい感じがするのはなぜだろう?
それは、ピンクの花が日本を思い出させるからだろうか?
 
今年は桜の開花が早かった。例年、関西では桜は4月の入学式の頃に咲くが、今年は3月末に満開となったので、卒業式と重なり、卒業生の美しい思い出になったことだろう。
宝塚では、ちょうど宝塚音楽学校の合格発表の日に桜が満開で、将来のタカラジェンヌにとって、思い出の美しい日となった。
 
私は桜が開花した3月末にスリランカから日本に帰国したが、桜の花を見て、スリランカ人のドライバーの質問を思い出し、あわててグーグル先生に質問してみた。
 
「日本には法定の国花がない」
 
え? そうだったんだ。
 
日本に法定の国花がないことを、今回、初めて知った。
しかし、私の直感は正しかったようだ。日本には法定の国花はないが、国民に親しまれている桜、そして、皇室の家紋である菊が、事実上、日本の国花として扱われているらしい。
 
日本人は桜が好きだ。でも、桜が好きなのは、日本人だけではない。
最近では、桜のシーズンには特に中国人がお花見のためだけに日本にやってくる。桜のシーズンは、関西空港は中国人で大混雑し、京都のお花見スポットは、中国人であふれかえっている。
 
そして、どうやらドイツ人も桜が好きなようだ。
スリランカのホテルで、たまたま席が隣になったドイツ人が、「日本に桜の時期に旅行したいが、いつがベストシーズンなの?」と英語で話しかけてきた。
なんと、驚いたことに、彼らは、「ハナミ」、「サクラ」という日本語を知っていた。
 
厳しい冬が終わり、ようやく訪れる、みなが待ちわびた春。そんな春の風物詩の代表が桜である。
日本には、「桜前線」というものがあると説明したら、スリランカ人のドライバーにびっくりされた。日本人はなぜそんなに桜が好きなのかと。
 
日本人が桜を好きなのは、日本人のDNAに刻まれた、大切にしているもの、価値観、死生観が桜に重なるからだ。
お花見は、単なるスプリングフェスティバルではない。しかし、果たしてそれを、スリランカ人をはじめ、海外の人は理解しているのだろうか?
 
厳しい冬を耐え忍び、力強い太い幹から咲く可憐なピンクの桜の花。そんな桜は、我慢強く、真面目で誠実な日本人をイメージさせる。
一つ一つは主張することなく小さく控えめだが、多く集まることで調和する美しい桜の花。同様に、一人一人は控えめで目立たないが、和を重んじる日本人は、チームとして力を発揮する。
 
桜の花の命は儚く、あっという間に散ってしまうが、散り際もまた格別に美しい。
儚くても一生懸命に美しく咲き、散り際も美しくありたいと願う日本人だからこそ、桜を見て春が来たことを喜び、そして、桜に自分の人生を重ね合わせ、諸行無常を感じるのではないだろうか。
 
日本人はすれ違っても挨拶してくれない。そして、何を考えているかわからないという印象を持っている外国人が多い。
日本人はおとなしくて、発言しないが、それは、何も考えていないということではなく、自分の考えを第三者に説明することに慣れていないだけだ。言葉を交わさなくても、お互いに相手のことを思いやり、察し合える日本人は、私もそうなのだが、言語化が苦手なのだ。
 
日本人の性質や、日本の文化、価値観、そういう一言では説明できないものを、海外の人に説明し、理解してもらうことは難しい。
しかし、儚い桜の花を美しいと感じ、散りゆく桜の花に諸行無常を感じたとき、日本人の繊細な心を理解してもらえるのではないだろうか?
 
スリランカから帰国して、私が見た今年の桜の美しさは、格別だった。
 
心で日本の桜の花を感じたとき、きっと日本のことを深く理解してもらえるだろう。
日本に興味を持っている外国人に会ったら、桜のシーズンの日本への旅行を勧めようと思う。それが、日本を理解してもらえる、一番の早道かもしれないから。
 
 
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2018-04-06 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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