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仕事ができない私たちは


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:柴田香名(ライティング・ゼミ ライトコース)

 
 
「あの子は本当に仕事ができるよね」
 
先輩からその言葉が聞こえるたびに同期と自分とを比べてしまう。「あの子『は』仕事ができるけど、あなたは無能」と付け足されているようで不安になる。負けず嫌いな私にとって、これ以上ない屈辱だった。
 
あの子は超大型プロジェクトに入り、平日は早朝から深夜まで、土日も出勤も辞さないほど目が回る忙しさの中にいた。私の入っていたプロジェクトもそれなりに大きく、しかもその時期は年間で一番の忙しさを記録していたが、超大型プロジェクトを前にしたらちっぽけだった。次第に新人の雑用が流れてくるようになり、私だけが雑用の海に取り残され、本業務に集中できるあの子はぬくぬくと成長しているーーそんな被害妄想にかられるようになっていった。
 
自意識過剰だと思う。陰で見てくれている人もいると思う。でもやっぱり、「無能」の烙印を押されることは恐怖だった。
 
仕事ができるって、何だろうか。
 
そういえば、ありがたいことに仕事ができると褒めてもらったことがある。同期だけで回したプロジェクトで統括を務めたとき、同期から「あなたがいなければ実現しなかった」という言葉をかけてもらえたのだ。この時の「仕事ができる」の指標はリーダーシップだった。プロジェクトに必要なタスクを洗い出し、人に合わせて役割を分担し、スケジュールを引く。忙しいみんなに仕事を進めてもらえるよう、進捗を確認し、遅れていたら一緒に原因を考え、時には一部を巻き取りながら、あの手この手で人を動かす。最後の最後まで細かい部分に気を配り無事に成功に終わったとき、「あなただからやろう、頑張ろうと思った」と言ってもらえたとき、きっと仕事ができていたのだと思う。
 
先輩にも「(良い意味で)職位と仕事内容が見合っていない」と言ってもらえたこともある。期待以上の貢献をしているという意味だ。私の勤める会社ではメインとなりプロジェクトを回す職位と、そのアシスタントとして動く職位がある。新入社員はアシスタントからスタートするが、時々メインとして、小さなものから中規模のものまでプロジェクトを任せてもらうことができたのだ。もちろん分からないこともたくさんあったが、何度も先輩に相談しながら「今この場面で最善の選択は何か?」を常に考えて行動してきた。この時の「仕事ができる」の指標は、任せて大丈夫と思ってもらえる信頼性だったのではないだろうか。
 
しかし賛辞をいただいてもなお、他の人が「あなたは仕事ができるよね」と声をかけられているのを見ると、比較して悩んで心がぺしゃんこになってしまう。その言葉の裏を深読みしてしまい、こっそり落ち込んで嫉妬して、笑顔のまま決して頷かないというささやかな抵抗を試みる。
 
なぜこんなに他人を羨んでしまうのだろう。
きっと「仕事ができる」の定義が曖昧だからではないだろか。
 
学生時代の能力の高さは、数値で表すことができた。頭の良さはテストの点数、スポーツの上手さは試合の結果。もちろん数値で測れない人柄や地頭の良さもあるけれど、一部は数値で表せた。だから短所があっても、ブレない数値を思い出せば自信はぺしゃんこにならずにすんだ。
 
ところが社会人はそうもいかない。「仕事ができる」の基準は十人十色だ。レスポンスが早いとか、適切な報連相ができるだとか、共通の能力はあるものの、業界や会社、そして部署によっても求められる能力が変わってくる。昇進のための評価基準は存在するが、点数を決めるのはテストではなく上司だ。人間なのだ。基準が曖昧だから、すぐ人の言葉に流される。足りない部分に落ち込んだり、嫉妬して自己嫌悪に陥ったり、感情が落ち着いてくれないのだ。
 
ってことは、自分の中でブレない「仕事ができる人」のモデルを持てばいいのではないだろうか?
 
もっと具体的に褒めてくれれば落ち込むこともないのに、と思ったことは何度も何度もあった。あの子はクライアントとの関係構築が上手くて、私はプロジェクトの段取り力があるかもしれない。あの子は電話が得意で、私はメールが得意かもしれない。ちっぽけでも具体性が加われば、きっと私は救われる。だって出口も分からず遅いと詰られ泳ぐより、ゴールが見えた方が頑張れる。
 
仕事ができない私は、私だけのモデルを立てるのだ。
 
 
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2018-04-20 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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