メディアグランプリ

会社を辞めたら、社会人になれました!


*この記事は、「ライティング・ゼミ」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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記事:射手座右聴き(ライティング・ゼミ朝コース)
 
「そんなの自分らの仕事じゃない。◯◯部の仕事でしょ」
 
会社員時代の口癖でした。
 
中堅どころの広告会社で働いていた私は、
制作という部署に所属していました。
 
CMやWEB、印刷広告などを考えて制作する部署です。
 
「制作は、アイデアを考える仕事なので、自由な方がいい」
「スーツ着たら、クリエイティブな感じがしないから少しラフな服装でいい」
「営業活動はしなくていい」
 
などという暗黙の自由が認められていました。
 
昼前に出社。Tシャツに短めのパンツのようなラフな格好で、
打ち合わせにも遅刻はしょっちゅう。
自由すぎる会社員生活が認められていたのでした。
 
社会的に、相当ずれている、ということさえ、気づかずに
過ごしていたのです。
 
とはいえ、
「この生活楽しいけど、いつまで続くのかな」
 
漠然とした不安はありましたが、
日々の仕事は深夜まで、土日なし。
自分を見つめ直す時間などなかったのです。
 
ある日。
 
「早期退職の募集、あるらしいよ」
 
という声が聞こえてきました。
 
「いま、辞めどきなんじゃないか」
 
値段と商品だけでてくるCMの案を考えていた時
思ったのです。
 
50代をメインとした募集でしたが、
40代の私は迷わず応募。
 
上司からの引き留めを笑顔で断り、
退職の日を迎えました。
 
「さあ、少し休もうかな」 と思ったときのことです。
 
あまり話したことのない後輩から、お仕事の電話をもらいました。
 
「早くて申し訳ないのですが、明日9時に打ち合わせできませんか」
 
いままでなら
「はあ? 朝9時? ありえないでしょ。もっと遅くしてよ」
と言っていたでしょう。
 
がしかし、ちょっと待てよ。
会社員時代の後輩は、もう後輩ではないのです。
辞めた瞬間から、ある意味、お客様に変わっていることに気づいたのです。
 
いかんいかん。
「大丈夫です。伺います」と答えました。
 
彼のお得意様に行くことになったときのことです。
 
「うちの会社から独立したAさん(私のこと)です」と紹介されました。
 
そうです。同じ会社ではないから、呼び捨てではないのです。
 
信頼できる外部スタッフとして連れてこられているんです。
 
Tシャツじゃ、やばいな。
Tシャツで得意先に行くのはまずい。
 
同行する元後輩、つまり、現在の発注者さまに恥をかかすわけにはいかない、
と思ったのです。
 
すぐにYシャツとジャケットを数点購入しました。
 
数日後、別の先輩から連絡が来ました。
 
「500人規模の会社の社長さんが、コピーライターを探しているので
 紹介したい」
 
Yシャツとジャケットが活躍します。
 
打ち合わせで社長さんに言われました。
 
「◯◯さん、今朝の経済新聞読みました?」
 
経済新聞? それは、営業の人が読むものだと思っていました。
 
「広告は、直接決裁者と話せれば、話が早いのに」
などと言っていた自分が恥ずかしくなりました。
 
そう、経営者の方と個人として話すということは、
そこに耐えうる知識量も必要だったのです。
 
頭ではわかっていても、
体でわかっていませんでした。
 
そんなわけで、気づいたら、朝早く起き、シャツとジャケットを着、
毎朝新聞に目を通す、
サラリーマン時代にはなかった生活が始まっていました。
 
独立して初めての仕事が、終わった時のことです。
 
「今回はありがとうございました。また何かありましたら、
よろしくお願いします」 
 
発注してくれた後輩に
その先のお得意様にも、ご一緒した協力会社さんにも、
自然とメールしていました。
 
いままでの仕事は、上司から割り振られたものでしたが、
今回は違ったのです。
 
数いる同業者の中から選んでいただいた。
そんな気持ちから、メールせずにはいられなかったのです。
 
お得意様の窓口は営業、
自分たちは、アイデアを考えて、作ることだけしていればいい。
お得意様と密にコミュニケーションを取る必要はない。
 
などという思い込みがありましたが、
 
これからは、お得意様の一員という気持ちで
一緒にやっていかないと信頼されないんだ
とわかったのです。
 
日々忙しくしていると、「至急」と赤い文字で書かれた封筒が届きました。
 
税金、国民健康保険、国民年金、次々と届く請求書。
 
「なんだよ、こんなに天引きされてるの?」と
給料明細を見て、怒っていた私ですが。
 
いざ、自分で手続きしてみると
なかなかの手間。
 
これも経理の人がやってくれてたんだ。
 
と感謝の気持ちが湧いてきました。
 
確定申告だってそうです。
 
年末にくる書類を記入するのが
面倒でしたが、
いまではもっと面倒な書類を作らなければなりません。
 
領収書の精算も、備品の購入も、請求書の提出も、
全部自分でやってみたら、
いままでより、さらに休みがなくなったのです。
 
気がつくと、人と会った時、言葉が変わっていました。
 
「それは◯◯部の仕事でしょ」
 
から
 
「◯◯さん、ありがとうございます。できることがあれば、言ってください」
 
と。
 
会社を辞めたら、社会にありがとう、が増えました。
 
ありがたいことです。
 
 
 
***

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2018-05-31 | Posted in メディアグランプリ, 記事

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