復讐、完了。《天狼院通信》
たぶん、僕は人前ではあまり怒らない。
結構、頭に来てたとしても、何くわぬ顔で「ああ、そうですか」なぞと言っているに違いない。
実を言えば、去年の今頃、とある雑誌にまだ生まれる前の天狼院を売り込んだことがあった。
「新しい書店が生まれる瞬間を順を追って記録し、記事にしてほしい」
それは、本に関する雑誌であったから、その提案は今でも間違いではなかったと思っている。そんな珍しい瞬間を、逃すなどということは考えもしなかった。記事なるだろうと高をくくっていた。
ところが、なしのつぶてだった。
おかしい、なぜだと思った。
たとえば、僕がメディアだとすれば、間違いなく取り上げるだろうと思っていた。
正直、頭にきた。
天狼院が生まれる瞬間は一度しかなく、傲慢に聞こえるかもしれないが、そこは押さえておくべきだろうと思った。
ただ、もしかして、と冷静にも考えた。
もしかして、これは恋愛と同じなのではないかと。
メディアの立場になれば、押しつけられるのは、面白くないのではないかと。自分が見つけたものにこそ、惚れ込んで記事にしたいと思うのではないかと。
この一件以来、僕はPR戦略を180度変えた。
つまり、一切、天狼院をメディアに売り込むことをやめた。
それ以降、PR活動をしたことは一度もない。
その代わりに、死ぬほど面白いことにしようと決めた。なしのつぶてだったそのメディアの方から、取材依頼されるくらいに面白いことにしようと思った。
本当に、ありがたいことに、この1年間、様々なメディアに取り上げていただいた。
それはまるで、つれない男にフラれて綺麗になろうと前向きに決意した女性が、他の男性から図らずもモテてしまったようなものだ。
いつしか、フラれたことも忘れて、天狼院を面白くすることに没頭していた。
そして、それは忘れた頃にやってきた。
メール件名:取材ご検討のお願い
一年前、フラれたメディアからの取材依頼だった。
僕は何くわぬ顔でこう返信した。
「ああ、そうですか。もちろん、大丈夫です」
密かに、僕の復讐が完了した。
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