書く苦しみを乗り越えるには、ありったけの感情をぶつけることだ。《週刊READING LIFE Vol.262 今こそ読むべき一冊》
*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライティングX」にご参加のお客様に書いていただいたものです。
人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜
2024/5/20/公開
記事:山田 隆志(READING LIFE編集部ライティングX)
私が文章を本格的に学び始めてもう3年が経過する。
なぜだ、一向に上手くなる気配がない。3年も学べばどんな文章も書きたいときに、自由に書くことができるはずじゃないのか?
3年前の夏、友人のおばちゃんが天狼院メディアグランプリで1位を取ったと自慢してきた。何かのメディアで自分の書いた文章が掲載されて、1位という輝かしい記録を獲得したことが眩しかった。天狼院という言葉も文章を扱うメディアのことも何も知らなかった。ただ、優勝したおばちゃんの文章を読んだらなぜか感動して涙が出てきた。
メディアグランプリといっているぐらいだから2位も3位も存在し、どの文章も小説を読んでいるかのように文章に引き込まれてしまった。
気が付いたら、いつの間にか禁断のボタンを押していた。
「天狼院ライティング・ゼミ」にお申込みありがとうございました。
こうして、私が3年にわたり天狼院沼、そしてライティング沼にハマり続けている。
文章の書き方を学ぶのは初めての経験であり、これまでの私の文章は思いついたことをただ書きなぐっていただけだった。
なるほど、文章を書くにもやり方というものがあるのか?
ライティング・ゼミの告知文を見たときからずっと謎だった「ABCユニット」を使えば多くの人に読んでもらえるようになるのか? 確かに私より前に受講していた人の文章もそうだし、いつも私が読んでいる小説やブログの記事だってABCユニットをはじめとした講義で学んだことがふんだんに使われている。文章の講座を受講することで、いつの間にか私の文章が随分と見違えるように上達したと錯覚した。
天狼院のライティング・ゼミは自分の書いた文章を先生からフィードバックをもらえる。毎週2000文字の文章を期限内に提出して、合格したら天狼院のホームページに掲載され、より多くの人に読んでもらえる機会が与えられる。ライティング・ゼミを受講してすっかり調子に乗り始めていた私も喜び勇んで挑戦させてもらった。
現実はそんなに甘くなかった。
結果は10回中ただの一度も合格することはなかった。先生のフィードバックで言われることは、決まって「読者メリット」が足りないだった。しまいには文章を書くことが辛そうだとまで言われてしまう始末だ。これは図星であり、2000文字を書くためのネタがない。書いても500文字ぐらいで足踏みしてしまい気が付けば5時間ぐらいかかってしまい気が付けば締め切り時間ギリギリになってしまっている。無理やり絞り出した文章を書くたびに「文字カウント」を確認して、ため息ばかりついていた。
おばちゃんの文章が世の中に認められて読者の一人だった私も随分と勇気づけられた。私の文章も見違えるような変化を起こして、同じように多くの人に読んでもらえると本気で思っていた。
ところが、私の文章は日の目を見ることなく苦しさだけが残ってしまった。
私の天狼院デビューは、ほろ苦いスタートだった。
どういうわけか2年も文章を書くことが続いている。
ライティング・ゼミの上位クラスの「ライターズ倶楽部」に参画して毎週5000文字の文章を提出できるようになった。文章を書き続けることによっていつまで経っても進まない文章も3時間ぐらいで書き上げることができるようになった。
ライティング・ゼミを受講していた時は一度だって合格することができなかったが、ライターズ倶楽部に加入して挑戦を続けているうちに、少しずつ合格できるようになり、評価をいただけるようになり、確かな手ごたえを感じ始めるようになった。
しかし、3年も経っているのに私の文章が上手くなった実感がまるでわかない。
いったいどうなっている!!
今でも一緒に文章を書き続け、苦しみながら研鑽を重ねていた人達の文章に全く追いつけていない。ライターズ倶楽部での2年間で、天狼院メディアグランプリでの激しい順位争いを繰り広げていたライバルとして高めあってきたはずだが、いつの間にか自分の本を出版して、東京の大きめの本屋に平積みで置かれて、ハデハデしいピンクのPOPで宣伝までしている。いったいどこで差をつけられてしまったというのだ。
ライティング・ゼミと合わせて、本格的に文章を書くようになって3年経過しているはずだが、あの頃に「文章を書くのが苦しそうだ」と見抜かれてから、それを全く克服できていない。
締め切りの3時間前になってもパソコンの前で手がとまる。いざ課題の文章を書こうとしてもいつの間にかYouTubeを眺めているうちに、時間が1時間2時間と経過し、締め切りの時間が刻々と迫ってくる。私のライティングはいつも綱渡りだ。
いつまで経っても書けない
いつまで経っても文章を書くことが苦しい
文章を書くことが楽しい? 文章を書くことがストレス解消?
いったい何を言っているのだ?
初めて合格をもらってメディアグランプリに参加することができたときは、ものすごくうれしかった。自分の文章なのに何度も何度も読み返し、文章が上手くなったと勘違いもした。褒められた瞬間、私の文章が急に輝きだした。文章が輝き始める瞬間に取りつかれて、何度でも文章を書こうと思えた。
それでも書くことの苦しさは全く消えていない。3年書き続けていれば、5000文字の文章も書きたいときにさっと書けると思ったけど、いまだに苦しみ続けたまま天狼院沼にハマり続けている。
私が文章の研鑽を続けている場所「天狼院書店」というのは本屋と言いながら、ライティング・ゼミをはじめとした数多くの講座が開催されている。
他にもさまざまなイベントが開催されており、ビジネス書や小説家といった著名な方が登壇することも目玉となっている。私と一緒に文章の研鑽を重ねていたはずのライバルが、ベストセラーを出した著者と同じようにイベントで登壇している何とも不思議な空間だ。
ある日、仕事をさぼって天狼院のホームページを眺めていたら、目を疑うよう人物がイベントに登壇するという告知があった。
狂気のWebライターとして私の周りでは何かと物議を醸しだしているpato氏が本を出版し天狼院のイベントに登壇するという。
ライターネームpato氏は100万PVのWeb記事を連発する狂気のライターとして名をはせている。「鹿児島から稚内まで青春18切符をつかって行ってきた」とか「多摩川に掛かっている橋の本数を徒歩で調べてきた」とか意味がわからないWeb記事を書いては100万PVを連発している。
鹿児島から稚内まで青春18きっぷで横断するなんて狂っている。鹿児島から稚内への移動は飛行機でも新幹線でもそれなりに時間がかかる。東京から大阪だって新幹線でも3時間かかる。仮に東京から大阪まで東海道線を乗り継いで移動するにしたって倍の6時間以上かかる。やっぱり鹿児島から稚内まで青春18きっぷで移動するなんておかしい。
pato氏が書くWeb記事はいつもこんな狂ったものばかりで、私はいつのまにか次の記事が登場することを楽しみにしている。
やっている企画も十分に狂っているのだが、この人の書く文章も毎回2万文字は超えているだろう文章で圧倒されている。スマホで軽く眺めるつもりだったのが、読む手が全く止まらず、気が付いたら読み終えるのに一時間経過している。鹿児島からひたすら電車に乗っているだけのレポートは単調になりがちだが、チャレンジの行方が気になりすぎて読む手がとまらない。5日目に稚内に無事にたどりついた時には思わず涙がこぼれてしまった。
そんな狂ったライターpato氏が本の出版イベントを天狼院渋谷店で行うと聞いて真っ先に参加ボタンを押した。
「文章で伝えるとき一番大切なものは、感情である」これがpato氏の出版した本である。
毎回毎回、狂った記事で楽しませてくれるWebライターの文章術なら読んでみたいではないか。
pato氏はいつも狂った企画を考えつくだけでなく、文章も抜群に上手い。毎回2万文字の記事に圧倒されるが、先が気になって仕方がなく結局は最後まで読んでしまう。さぞかし書くことが好きでたまらないだろうと思っていた。
それが、インターネットが登場しテキストサイトに書き始めてから22年になるが、開口一番「文章を書くことが嫌いだ」と特大のフォントで主張している。なぜなら、文章を書くたびに苦しくなり、誰にも伝わらないのではないかと疑ってかかっているようだ。
22年も書き続けており、いつも狂った記事で私たちを楽しませてくれている人でも、書くことに苦しんでいるというのか。これが謙遜でなければ、3年経っても書くことの苦しみを克服できない私も、あながち間違えた感覚ではないのだろうか。
書くことに苦しむとは何か?
それは「伝えたいこと」が何かわかっていないのではないかという。そもそも「書く必要があるのか」書くことが目的化してしまっているのではないかという。
ハッキリ言って図星だった。
ライターズ倶楽部に安くない受講料を払っているのだから使い倒さなくてはもったいない。なので、自分の文章のフィードバックをもらう権利を全て行使しないともったいない。それがいつしか毎週5000文字の文章を書くことが天狼院から課されていたノルマとなり、書く目的が見えてこない。それが書くことの苦しみにつながってしまっている。
いつしか、ライターズ倶楽部の講師に認められることが目的となってしまっている。その前に、私が経験した面白かったこと、会社でミスをしてクビになりかけて悔しい想いをしたこと、全くモテない私が結婚相談所に駆け込んで結婚できたこと、その2年後に別れを選んだこと。どれもこれも私の人生における特異な体験だ。楽しかったこと悔しかったこと5000文字の文章にありったけの感情をぶつけ、多くの人に読んでもらえた時、私の書いた文章が最高の輝きを放ち、何度も読み返してしまった時の楽しさが、書く苦しみを抱えながらも文章を書くことを続ける原動力となっている。
pato氏の本を通じて、文章を書くのに自分の感情をぶつけることの大切さを思い出させてくれた。どれも実践的でありながら本質的なことが書かれている。
文章を本格的に学んで3年が経とうとするが、一向に上手くならない。
そもそも「上手い文章」って何か。伝えるべき内容を多くのパターンの文章を作成し、そこに当てはまる表現を適切に選択できる状態だという。そのためには「同じ情報」でも常に5パターンぐらい考えるトレーニングが必要だという。
さらには、普段から読んでいる文章も自分だったらどんな表現をするのかを数パターン考えながら読み、自分の文章として取り入れることが必要だと学んだ。
他にも実践的なテクニックが例を交えながら数多く紹介されているのだが、その例文が一つの物語になってしまっている。「実際にやってみよう」と言いながら、なぜか小学校時代の駄菓子屋の描写がなされ、駄菓子屋のビックリマンチョコをめぐって、他校の小学生と相撲をしている展開となってしまっている。
pato氏から文章を習っているつもりが、小学校時代の放課後の思い出をこれでもかと読まされて、なぜか爆笑してしまっている。
それでいて天狼院に3年も通い続けながら文章を書く苦しみを克服できなかったが、pato氏の本を読んで文章を書く楽しみを思い起こすことができた。
文章の技術的なテクニックを学ぶつもりが、文章を書く楽しさを笑いながら取り戻すことができたようだ。
これだから、苦しみながらも文章を書くのをやめられないのだ。
□ライターズプロフィール
山田 隆志(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
本業は静岡県の印刷工場を併設する広告代理店の総務経理課で20年目を迎える。
総務・備品購買・社内ネットワークと雑多な業務をこなしており、バックオフィスに関わる業務はすべて経験している。毎年恒例の新入社員研修の企画立案、運営サポートを8年経験している。
本業と外れた活動として2022年10月よりライターズ倶楽部に参画、今年もライティングXの形で毎回5000文字程度の文章を書き続ける
普段はテレビドラマに小説・マンガなどを雑多に楽しんでおり、ここ最近ではポピュラー音楽に目覚め、私の青春だった80年代90年代の音楽と共に、最近流行の音楽も楽しむ。
ミーハー根性丸出しでとにかく面白そうなものを見つけたら必ず手を出し、文章にしようと画策している
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