週刊READING LIFE vol.274

睡眠環境を守ることは、家族を守ることだ《週刊READING LIFE Vol.274 環境を守る》

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*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライティングX」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2024/8/19/公開
記事:青山 一樹(READING LIFE編集部ライターズX)
 
 
「これでは、纏まった睡眠時間を、取れないじゃないか!」と私は呟いてしまった。昨年11月、妻と二人で両親学級に参加した時に提示された円グラフを見た瞬間に。
 
その日の両親学級は、今後2~3ヶ月以内に、子どもが産まれる家庭を対象に開催されていた。その中で、「ママの一日」という題名が付けられた円グラフの説明があった。
 
円グラフを見ると、深夜0時~午前1時に、次は午前2時~3時、その次は午前4時~5時と2時間ごとに「授乳」と記載されていた。
 
「もちろん赤ちゃんは、このグラフのように、規則的にミルクを欲しがるわけではありません。飲み終わった30分後に欲しがる時もあれば、3時間後に欲しがる時もあります。赤ちゃんの生活リズムに合わせると、ママの生活は不規則になるので、パパは少しでもママの手助けをしてあげてください」と助産師から説明があった。
 
この話を聞いた時、育児休業中だけは、夜中のミルク当番を自分が引き受けよう、と私は考えた。しかし、現実は想像できないくらい厳しいものだった。
 
両親学級から2ヶ月後、私たち夫婦は娘を授かった。母子ともに退院し、妻を少しでも休ませようと、私はリビングで寝ながらの深夜のミルク当番を買って出た。
 
深夜0時になると、娘が起きて、泣き出した。私は眠たい目を擦りながら、リビングからキッチンへ向かい、ミルクを作り、娘に与えた。深夜0時40分、娘はミルクを飲み終え、再び眠りについた。
 
「次のミルクまで、1時間20分ほど眠れるぞ!」と私は考え、再び布団の中で横になった。しかし、眠れない。起こされる→ミルクを作る→ミルクを与える→娘を寝かしつける、という一連の動作で、すっかり目が覚めてしまったのだ。
 
深夜1時45分、娘が起きて再び泣き出した。2回目のミルクの時間だ。1回目と2回目の間、私は全く眠れなかった。そのため1回目に比べると、私はスムーズにミルクを作り、娘に与えることができた。娘が深い眠りについたのは、深夜2時25分だった。しかし、私の眼は冴えたままだった。
 
「眠れない、どうしよう、どうしよう……」と私は布団の中で焦っていた。このまま徹夜で朝を迎えると、私の身体は睡眠不足で一日中機能しないだろう。そうすると、日中の育児をすべて妻に任せてしまい、妻の負担はかなり大きくなってしまう。少しでも眠って体力を回復させなければ。と考えれば考えるほど眠れなくなっていた。
 
深夜3時45分、3回目のミルクの時間がやってきた。「ここまで来たら、寝ずに朝を迎えよう。明日の育児は、悪いけど妻に任せよう!」と私は腹を括った。朝4時20分に娘を寝かしつけ、私は布団の中で眠らず過ごすつもりだった。
 
窓から朝日が差し込む時間帯になり、娘の泣き声が聞こえる。しかし、私の身体は動かない。「ミルク、代わりに与えようか?」と起きて寝室から出て来た妻が、リビングで寝ている私に話しかけた。時計を見ると朝5時40分だった。その時、私はようやく自分の状況を把握した。「いつの間にか、眠ってしまったのだ」と。
 
夜中はミルクを与えているものの、朝方は娘の泣き声に気づかず、寝落ちする。この日だけならまだしも、私が、リビングで寝て、深夜のミルク当番を引き受けた日は、全てこのパターンを繰り返しており、寝室で熟睡する予定の妻を、明け方には妨害していたのだった。
 
妻が夜中のミルク当番を引き受けてくれる日もあった。その日は、私は朝まで、深い眠りにつくことができた。「ミルクを与え損なったら、どうしよう……」という懸念が、私の睡眠を妨げていたのだ。そこで、私たち夫婦は一つの決め事をした。それは、「夫である私が昼間のミルク当番、妻が深夜のミルク当番」であった。
 
一見すると、私が育児に非協力的と思えるかもしれない。しかし、私が深夜のミルク当番を引き受けてしまうと、妻と私の二人ともが睡眠不足になってしまう。一方、妻が深夜のミルク当番の日は、私は熟睡できる。よって、睡眠不足に伴う育児疲れで、夫婦共倒れを防ぐために、ミルク当番を行う時間帯を、ハッキリと分けた。
 
この割り切りが功を奏した。育児休業中、私は責任を持って夜から朝にかけて、熟睡した。深い睡眠を取るために、朝から夕方は、家事、育児、そして資格試験の勉強に全力投球した。その結果、妻が日中に身体を休める時間を持つことができ、深夜のミルク当番を行っても、疲れ難くなった。
 
育休中ではあったが、朝、私は仕事に行っていた時と同じ時間帯に起きて、簡単な朝食を作る。お昼前に、昼食と夕食の買い物へ行く。日中、娘が泣き出した時は、ミルクを与え、オムツを交換する。そして、夕方の決まった時間にお風呂へ入れる。夕食を終えたら、パソコン関連の資格試験の勉強を開始する。日付が変わる前に、仮眠から起きた妻と交代で布団に入る。
 
朝からフル活動していた私は、布団に入るなり、眠りにつく。別室で寝ている娘の泣き声に、一切気づかないくらいである。このように、睡眠の質を高めるために、日中は家事、育児、勉強と自分の役割に集中した。
 
私の眠りが深くなったことにより、妻も授乳と授乳の間は安心して眠れるようになった。というのも、夜中に娘が泣き出しても、私は熟睡しており、妻より私の方が早く目覚めることがない。そして、妻も私に余計な気遣いをせずに、次の授乳のタイミングまで寝ることができるからだ。
 
この経験を通して、私は睡眠について2つの勘違いを犯していたことに気づいた。まず1つ目は「寝ずに頑張る!」である。育児に限らず、仕事も勉強も、睡眠時間を削ることが「頑張る!」ことと思っていた。
 
しかし、睡眠時間が短くなると、育児も仕事も勉強も、続けることができない。睡眠不足の状態では、頭と身体がクリアに動かない、ストレスが溜まってイライラする。特に睡眠不足による育児ストレスは、絶対に避けなければならない。ストレスの捌け口が、一日中、顔を合わせている妻や娘になってしまうからだ。夫婦仲も悪くなるし、娘の教育にも悪い。
 
私たち夫婦の場合は、せめて私だけでも睡眠時間を確保させてもらった。妻が育児疲れを来した時、私が代われるよう。私だけは充分に睡眠を取るように努めた。その結果、私だけでなく、妻も娘も充分に睡眠時間を確保できるようになった。
 
2つ目の勘違いは、「寝室を整える!」である。質の高い睡眠を確保するためには、寝室の照明・枕・マットレス・布団を買い替えることが推奨されるであろう。しかし、これらを買い替えても、慣れるまで時間がかかる。または、どの商品に買い替えれば、睡眠の質が高くなるのか、私には分からない。そして、幾つもの商品を取りそろえ、試行錯誤を繰り返している余裕もなかった。
 
そこで、私は、起きている時間の過ごし方を変えたのだ。というか、育児を行ううえで、変えざるを得なかった。日中、妻を少しでも休ませるために。また、深夜、自分が十分に眠れるように。朝から夕方は、家事と育児に集中した。そして、夜は、自分の苦手分野であるパソコンスキルを少しでも上げるために勉強をした。
 
夜、自分の得意なことをやってしまうと、楽しくて眠れなくなるかもしれない。しかし、夜、自分の苦手なことをやっていると、すぐに疲れてしまい、よく眠れることが分かった。
 
なぜ、パソコンスキルの向上という、私にとっては苦行のようなことをやったのか。それは、育児休業から復帰した時、パソコンを使った事務作業の時間を短縮できれば、労働時間そのものが短くなると考えたからだ。仕事が早く終われば、その分だけ早く帰宅でき、家事や育児を引き受けることができる。そうすれば、妻の負担も減る。
 
まだまだ夫婦二人による育児は続く。睡眠時間を削ることは避けたいため、労働時間を削るために、自分のスキルを向上させる。そして、空いた時間で、家事と育児を手伝う。このサイクルを回していけば、育児疲れによる夫婦共倒れは起きないのではないだろうか。
 
睡眠環境を頑なに守るために、起きている間の時間の使い方を、真剣に考えて実行する。そのことで、自分だけでなく妻や娘という家族全員の生活を守ることに繋がるのだから。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
青山 一樹(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)

三重県生まれ東京都在住
大学を卒業して20年以上、医療業界に従事する
2023年4月人生を変えるライティングゼミ受講
2023年10月よりREADING LIFE編集部ライターズ倶楽部に加入。
タロット占いで「最も向いている職業は作家」と鑑定され、その気になる
47歳で第一子の父親になり、男性育児記を広めるべく、ライティングスキルを磨き中

 
 

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2024-08-14 | Posted in 週刊READING LIFE vol.274

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