週刊READING LIFE vol.289

2024年ベスト本《週刊READING LIFE Vol.289 2024年ベスト本》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライティングX」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

人生を変えるライティング教室「天狼院ライティング・ゼミ」〜なぜ受講生が書いた記事が次々にバズを起こせるのか?賞を取れるのか?プロも通うのか?〜

2024/12/16/公開
記事:ひーまま(週刊READINGLIFE編集部ライティングX)
 
 
私は本が好きだ。子供のころからずっと! いろんな場面で本の力に助けられてきた。
読書のおかげで私は、人生の荒波を渡ってこれた。と言ってはばからない。子供のころは様々な物語に力を得てきたし、大人になってからは、物語や小説にとどまらず、ハウツー本や雑誌から得る知識に救われてきた。
 
今年も残すところあと少しになったが、一年間に読んだ本はジャンルもさまざまである。
その中からベスト本を選ぶのはなかなか大変なのだが、最近一番心を温め軽くしてくれた本をここにご紹介したい。
 
「なにがあっても、まあいいか」(ビジネス社)樋口恵子、鈴木秀子著
 
聖心会のシスターである鈴木秀子と、評論家として活躍してこられた樋口恵子の対談本である。
 
人生100年時代と言われている昨今、このお二人はなんと! 
92歳の同い年なのだという。昭和7年生まれのお二人は、昭和、平成、令和と生き生きと生きてこられ、まだまだ現役で活躍されている。
 
聖心会のシスターである鈴木秀子さんは、東京大学人文科学研究博士課程を修了された文学博士であり、ハワイ大学やスタンフォード大学で教鞭をとられたのち、聖心女子大学の教授を務めてこられた。
 
現在も現役で「人生の意味」を考える講演会やワークショップを指導しているスーパー高齢者でもある。
 
樋口恵子さんは東京大学文学部を卒業の後、時事通信社や学習研究社などを勤務後、評論家としてもテレビで活躍されてきたこちらもまさに現役のスーパー高齢者だ。
 
そのお二人の対談である。
 
92歳、現役で社会貢献されているお二人のリアルな対談に、65歳、高齢者の仲間入りを果たしたばかりの私には、大きな勇気と元気をもらう内容だった。
 
人生まだまだ先が長い! と感じるとともに実際にためになる対話だった。
 
本書の中にも書かれているが、90歳を超えるとまずは話し相手がどんどん少なくなってくるようだ。
同世代を生きてきた同い年が対談できる。という喜びが伝わってくる内容だった。
 
そして、92歳で現役で活動されているお二人が本を出す。ということの素晴らしさを感じた。
世の中に様々な新刊本が毎月出ているが、92歳の書籍は多くはない。そういう意味でも本当に衰えを感じさせない明晰な話に嬉しくなってしまった。
 
私と鈴木秀子シスターの書籍との出逢いは、実はもう20年以上前のことになる。浅からぬご縁があるのでなおのこと嬉しい新刊本だった。
 
「9つの性格エニアグラムでみつかる「本当の自分」と最良の人間関係」(PHP研究所)の本からは家族関係で深い悩みを抱えていた時に目からうろこが落ちるような新しい視点の本だった。
 
その内容は、人間いろんなタイプのひとがいて、おおむね9つのタイプに分類できるというもので、自分自身を知ることにも役に立ったし、また苦手な人に対しては、タイプが違うとこれほど感じ方が違うものなのだな。ということがよく分かった。
 
人間同士ぴったり分かり合える人に出会えるのはそうそうないのだという事も腑に落ちた。
エニアグラムの学びの中で、人間の多様性は当たり前なことで、親子でも家族でもそもそも大きなタイプの違いがあることが理解できた、自分の感性と、夫婦であっても親子であっても違いを認めるところからしか話が始まらないのだと深く感じ入ったものである。
 
今回の対談では鈴木秀子シスターの培ってこられた、この人間の感性の多様性に対する深い愛情を感じることができた。
 
樋口恵子さんという、同い年でありながらも経験も環境も違う中で人生を重ねてこられた二人が、心を通わせていく対談はあっけらかんとして人間の深みを感じるものだった。
 
「人が抱く悩みの90パーセントは些末なことです」
そう言い切ることができる言葉の中には、戦争の話がついていた。
当時小学校6年生だった二人は、違う土地で戦争を体験されているのだが、その時の体験がその後の人生に影を落とすのではなく、人生に立ち向かっていかれるわけで、人生とはやはり、その事実の何をどのように見るのか? が本当に大切なのだと感じる部分だった。
 
また、樋口恵子さんは現在の「介護保険」の制度を作られたのだが、介護保険の制度のおかげでどれほどの人が救われているのかを実感した。
私自身も一人暮らしだった叔母を、大阪から広島へ、晩年を看取ることができたのは、介護保険制度があってこその事だった。
 
高齢になって自分のことが自分でやり切れなくなっても、最後まで公共の助けが必要に応じて借りられる。という事に本当に助けられたのだった。
 
ご自身がその制度の制定に尽力されたうえで、現在の問題点も指摘されており、非難や誹謗中傷とも戦ってこられたすごさを思うことができた。
 
現在の一人暮らしの高齢者の多さは、その時点では想定できなかったそうだ。いまの日本の問題点も感じるところである。
 
また樋口恵子さんは言葉遊びにも卓越していて、定年退職後、妻にまとわりつく夫の事を「ぬれ落ち葉」と表現したのは天才的!
現在は高齢者問題を表して、寝たきりになる前の時期を「ヨタヘロ期」と言われている。
なんとか自立しているが、ヨタヨタヘロヘロしている時期があるというのである。このユーモアが高齢期を明るく過ごす秘訣なんだなと思った。
 
本書の中では「介護保険制度」についても書かれていて大変ためになった。65歳を超えたら、これは学校に行って習うくらいの気持ちで介護保険制度について学んでおくべきだ。と言われる。
大きくうなずくとともに自身の年齢を実感した。
 
最後の章で「90代になって思うこと」を読んで、心が明るく軽くなった。まさに「死」を前にした年齢のお二人に勇気をもらった章だ。人生まだまだ長いんだ、思い切り生き抜く素晴らしさを感じた。多くの人に読んでもらいたい。
 
また余談であるが、この本が発売されたと同時に、私は自分の一冊と、今年米寿を迎えた母にも一冊購入したのである。
米寿の母は頑固で気ままなので、子供のいう事は聞かないのである。
その母にプレゼントしたのだが、意外なことにその翌日私のところにきて「きのうの本、面白かった。ありがとう」と言いに来たのである。ありがとうの言葉を聞くとは思っていなかったのでびっくりするとともに、鈴木秀子シスターと樋口恵子さんに心からの感謝をしたのであった。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
ひーまま(週刊READINGLIFE編集部ライティングX)

大阪生まれ。2歳半から広島育ちの現在広島在住の65歳。2023年6月開講のライティングゼミを受講。10月開講のライターズ倶楽部に参加。様々な活動を通して世界平和の実現を願っている。趣味は読書。書道では篆書、盆石は細川流を研鑽している。

 
 

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2024-12-11 | Posted in 週刊READING LIFE vol.289

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