週刊READING LIFE vol.304

私が成長できた理由(わけ)、それはあなたに出会えたから《週刊READING LIFE Vol.304 恋はいつでもハリケーン》


*この記事は、「ライティング・ゼミ」の上級コース「ライターズ倶楽部」にご参加のお客様に書いていただいたものです。

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2025/4/14/公開
記事:藤原 宏輝(READING LIFE編集部ライターズ倶楽部)
 
 
恋は‘変わる心(こころ)と書きます’といつだったか、聞いたことがあった。
まさしく、その通り! とあらためて自分の恋を振り返ると、少し笑っちゃう。
私の恋はだいたい「もしかして、この人は私の事が好きかも……」と、少しでも相手が自分に好意を持っていると気付くと、それまで全くなんとも思っていなくても、少しくらい苦手なタイプでも、見た目とか全く好みでなくても、私の心の中にざわざわと風が吹き始めるのだ。そして、予告も無く一瞬にして嵐が襲ってくる。
『恋はいつでもハリケーン』そのものだ。
 
恋の嵐が来るたびに、日頃から元気な私はさらにパワーアップするのだ。
まず、考え方が変わったりする。洋服の好みや食事の好みに、変化がある事もある。
さらに、生活スタイルが変わったりすることも、よくあった。
生活の中での良い影響や、時には悪い影響も出てくるのだ。
良い影響とは、視野が広がるとか、知らなかった事をたくさん知る事が出来ることだ。さらに、恋した人の好みに自分を近づけようと努力し始めることや、新しい趣味を持ったりすることなどが挙げられる。
逆に悪い影響は、ほぼないと思いたいが、気になる出来事が増えたり、その内容により感情が激しく変わりこれまでに感じないような寂しさや悲しみ、不安に襲われたりする事があり、睡眠不足になるのだ。
自分では決して、無理をしているとは感じていないので全く平気なのだが、知らないうちに免疫力が落ちるようで高熱を出したり、風邪をひいたりして、身体からSOSが出る感じ。
 
それでも私は、突然! 恋に落ちて、恋の嵐を抜け出すまでの間は、過去の自分とは違う自分になっていき、それがさらに‘元気の源(みなもと)’なりパワーアップしていくので、そんな新しい自分への変化が起きる事を、嵐の中で私は楽しんでいる。
 
だけど、ここで1つ問題は……。
そのまま恋が始まれば、もちろん幸せなのだが「もしかしたら? この人は私の事好きかも……」はごくたまに、私の勝手な思い込みや勘違い、妄想の時もあるので要注意だ。
 
そう言えば、私の結婚は『恋はいつでもハリケーン』ではなかったし、結婚は一生に一度! だと覚悟したわけでもなかった。
 
「結婚なんて、二度としたくない。こんな傷つくなんて、もう絶対にイヤだ! 結婚や恋愛よりも、私は仕事だけでこれからは強く生きていくんだ!」
と離婚を決め、3年ほど結婚生活をした東京から名古屋に転勤願を出して名古屋に戻った。
その後、やっと離婚が成立して2か月ほどたった頃。
新しいプロジェクトに抜擢され、仕事に全力を注ぎ、離婚で傷ついた心に気づかないフリをして、過去を思い出さないようにしていた。
とにかく毎日を忙しくしていて、家と会社の往復だけでさらに休日出勤までして、日々仕事だけという生活にどっぷり浸っていた。
22歳で結婚し、24歳で別居し、25歳で離婚。
離婚の原因は‘元夫は元カノのところに戻っていった’いわゆる浮気! だ。
とはいえ、浮気されたというよりは、元カノが本命で私が浮気相手だったのかもしれない。と今なら笑って推察出来る。
 
それはさておき、同僚と仕事帰りに食事に出かけた時のこと。
「あー、こんなところに六本木と同じ系列のお店がある。名古屋にもあるとは聞いていたけど、ここにあったんだ。ねえねえ、今度行ってみようよ」
とそのお店を、偶然見つけた私はとても嬉しくなった。
 
数日後、同僚たちとそのお店に初めて行ってみた。
お店の扉を開けると、六本木で通っていたお店とそっくり! ほぼ同じで安心した。
「いらっしゃいませ、ご予約承っております。こちらにどうぞ」
と若い男性スタッフが案内してくれた。なんだか初めてというより懐かしい感じだ。
その日からそのお店に同僚や部下、友達と通っているうちに私たちは常連扱いで、きまって個室に案内され、時間無制限という特別待遇となった。
それは私たちにとって、とても居心地の良い場所となっていった。
 
そして、突然。その恋は始まった……。
 
そういえば、初めて誰かを「好き」と思ったのは、中学生の頃だったかと思う。
その頃から、ずっと現在に至るまで、恋に私が落ちるときのパターンは、ほぼ一貫していた。ほんの数時間前まで何とも思っていなかったのに、ふとしたきっかけで完全に落ちるパターン。
私から恋する相手に告白した事は、人生において一度もない。ふと、気付くと恋が始まってる。こうして、いつものように
「もしかしたら? この人は私の事好きかも……」
という私の思い込みから、一瞬にして恋が始まるのだ。
 
今回、突然襲ってきた恋のハリケーンは、私より11歳も年上のこのお店の店長さん。私たちがお店に行くと他のお客様とは違うVIP待遇で、ずっとそばで接客をしてくれた。とにかく優しかったし、仕事もテキパキ出来て、話題も豊富で尊敬できる人だった。ある日その店長さんが、
「よろしければ、お店が終わった後に一緒に食事でもどうですか」
とこっそり言った。私は店長さんに好意を持っていたことと、少し飲んだお酒の勢いですぐOKした。
 
その翌週、初めて店長さんと2人でお店の外で会って食事をした。とにかく話は面白いし、私の知らない事をたくさん教えてくれた。
店長さんが私に好意を持ってくれているという事はなんとなく気付いていたので、私はいつものように、一瞬にして恋に落ちた。
「私の思い込みや勘違いじゃなくて、よかった」
恋が始まってから数年は、とても楽しく過ごす事が出来た。
がしかし、やっぱり恋はハリケーン。ある日突然、恋の嵐は去ったのだ。
 
でもこの恋のおかげで、離婚の痛みはすっかり癒えて、自分が結婚していた事すら忘れかけていた。
 
店長さんとの恋は終わってしまったけど、その後も突然ハリケーンに襲われたように恋に落ちると前も後ろも周りも見えなくなり、彼中心の生活にどっぷりハマる。
という、パターンを何度か繰り返した。
恋した彼等の職業も年収もみんなバラバラだが、共通点は「もしかしたら? この人は私の事好きかも……」と気になりかけた後に、相手から告白してくれること。
思いを告げられると、突然! 私に恋の嵐が襲ってくるのだ。
なぜか私は、それほど興味を持てなかった人や好きでもない人でも「もしかしたら?」から「大好きだ」とか「付き合おう」と告白されると、私の心の中にざわざわと風が吹き始めて、何の予告も無く一瞬にして嵐が襲ってきくるのだった。
つい「とりあえず、付き合ってみよう」という好奇心もあり、未知の世界へ一歩踏み出していった。
 
さらに恋に落ちて嵐の渦中に入ると、前も後ろも周りも見えなくなり
なぜか?  ‘ごく自然に、相手に見返りを求めずに、尽くしてしまう’らしい。
ある時、占いで「相手にどんどん、尽くしてしまう」宿命だと言われた事があった。
 
「彼の行動、何かおかしくない?」とお友達や周りの人が心配して、さんざん私に
「彼、大丈夫? 様子変だよ、気をつけなさいよ」と言ってくれても嵐の中にいるあいだは、
「そんなことないと思うけど……」と気付くことなく、彼に尽くし続けてしまう私。
 
気付かない結果、何が起きるかというと……。恋に終わりが訪れる。
終わりのパターンは、いくつかあるが代表的なパターンは大きく2つに分かれる。
 
1つ目のパターンは、彼に「こいつは、大丈夫」と浮気されるパターン。
元夫が、そのパターン。浮気されていても、嵐の中にずっといるから周りは見えない事が多いのも事実ではあるが、
「彼は、浮気しない」と信じているのか、自分が相手を信じたい気持ちなのか? 知らないままなら、幸せでいられる。と思い込んでいたいのか?
「彼は男性だから、浮気して当たり前!」とどこかで相手を許してしまう私がいた。
いずれにしても、もし彼が浮気していても事実を追求する勇気はないし、怪しくても疑いたくないし、浮気されていると思いたくないのだった。
 
この思いの原点は、子供の頃にさかのぼる。
私は幼い頃、祖父母と両親と一緒に住んでいた。
私の幼稚園のお迎えは、いつもお祖父ちゃまが車で来てくれていて、その頃のお祖父ちゃまには、今でいう‘愛人’、今では全く聞かない明治時代の言葉だが‘お妾さん’というキレイな女性が存在していた。
お祖父ちゃまは、毎晩その女性の家に戻って行った。
お祖母ちゃまは、その姿を25年もの間、黙って送り出していたらしい。
それが我が家の日常だったのだ。
血は争えないとよく聞くが、遺伝子なのか?
父も同じような事をしていたようで、父に対しても母がよく怒っていた記憶が……。
 
そんな環境で育ったせいか、言葉の意味が全く分からない頃から
「男は結婚しても他に女がいるのは当たり前だ。それが、男の甲斐性だ」
とお祖父ちゃまからも、父からも、叔父たちからもよく聞かされていたのだ。
私は大人になるにつれて「男性は浮気するのが当たり前」だと思っていたし
「妻は夫に浮気されても黙って家を守り、子供を育てるのが当たり前」と思い込んでいたのか? そう思い込まされて、育ってきた。
 
そのせいか、まさにその図式の通りで
「彼に浮気されても仕方ないな、私が我慢すればいいんだ」
と、本当の事を確かめようともせず、自分の正直な気持ちを伝える事もなく、我慢した結果、その恋は終わる。
 
 
2つ目のパターンは、宿命とも言われた「彼につい、何かしてあげたい」と‘尽くす’パターン。
尽くすというと聞こえはいいけど、どれだけ彼に尽くしても尽くしている事が、本当に彼のためになっているのか? 
それとも、尽くすことで彼に利用? 活用? されているのかもしれない。
私はそんな事すらなにも気付かずに、嵐の中にずっといるから前も後ろも周りも全く見えない状態になるのだ。
しかも相手の年齢は関係ないようで、年上だろうが年下だろうが「何かしてあげたくなる」のだ。
ある年上の彼は威圧感があった。怖さが半分ありながら、尽くすという面において、彼の言う事を従順におとなしく聞き続けた。その結果、彼はストーカーのようになった。
ある年下の彼にはお金を貸した。結果的には貸したお金は返ってこなかった。
 
9歳年下のちょっと可愛い彼。まさにこの恋は、ハリケーンのように突然やってきた。2人で出かけた帰りに、コンビニに立ち寄った。すると彼が、
「あのね今日中に携帯代を払わないとさ、携帯止まっちゃうんだよね。そうなったら今夜から連絡取れなくなるから。どうしよう? それお互いに困るよね、寂しいよね。だから2万円を貸してほしい。給料入ったら絶対に返すから」と言った。
そんな彼に私は「携帯代がどうして2万円もかかるの?」と問う事なく、慌てて財布から現金2万円を取り出して彼に手渡した。
車に戻った彼に「領収書とお釣りは?」と聞く事よりも「支払えてよかったね」と声を掛けるというアホな年上彼女だった。
その日をきっかけに、彼は私にどんどん甘えてきた。そんな日が続くとだんだん金銭的な関係が中心になり、私への借金が50万円、70万円と膨れ上がった。
半年くらいたったある日、年下の彼は私の前から去っていった。
冷静な今ならわかるのだが、私は相手に尽くすという事の意味を間違えて‘ダメ男(man)ズ’を何人か作ってしまったようだ。
 
そして私は、最終的に恋が成就しないとか「まあ、いいか」と感じた瞬間!
あきらめが早い私は、恋に落ちた瞬間的なスピードと同じくらいの速さか、それより速い猛スピードで、さっさとその恋を忘れていく事ができるのだ。
失恋? に少し泣いてぐっすり眠った後の翌朝は、その恋を忘れた。
なぜなら自分から誰かを好きになって、どんどん押して、どんどん惹かれていく。というパターンではないので『恋はいつでもハリケーン』ではあるが、恋が去った時の気持ちの切り替えも早い。すぐにまた、仕事に日々没頭し邁進し始める。
 
痛い恋をしても、悲しい恋をしても、避けては通れない『恋はいつでもハリケーン』
また時間が経過すると私は、嵐に遭いその渦中に入る。
 
しかし、いつの頃だったか?
結婚をやっと考えられる‘恋が成就して、本物の愛に変わる’ような素敵な出会いが、5年ほどの間に3回あった。
が普通、女子から男子によく聞くイメージのセリフ?……。
「俺と仕事、どっちが大事なんだ?」
とその当時の彼に、真剣に真面目に何度か聞かれた事があった。私は、
「ごめん、今は仕事しなきゃ。会社が落ち着いたら、ね、きちんと結婚も考えるから、もう少し時間をくれないかな」
とその度に答えた。私は心のどこかで、一抹の不安を覚えながらも
「彼は大丈夫、私を応援して、ずっと待ってくれる」
って、信じた。というか、信じたかった。
が、やはり仕事中心の私の行動や態度に彼は呆れたのか、諦めたのか……?
最終的には、その恋は終わっていった。もちろん、結婚にも至らなかった。
 
それでも‘恋は元気の源(みなもと)’突然! ハリケーンのようにやってくる。
過去のハリケーンで経験したことは、すべて無駄ではなかった。たくさんの色んな恋に、私は成長させてもらったと思うのだ。私は今、恋に恋している自分や何かに恋している自分や、誰かに恋している自分がとても好きだ。
こうしてまた‘恋してどんどん変化し、まだまだ成長して、パワーアップしていく自分’が大好きだ。これからも私は、ハリケーンが突然来るたびに
「あなたに出会えて良かった、ありがとう」と素直に相手に感謝の思いを伝えようと思う。前向きに元気に明るく、これからも何度も恋しよう! とあらためて思った。
 
 
 
 

□ライターズプロフィール
藤原宏輝(ふじわら こうき)『READING LIFE 編集部 ライターズ俱楽部』
愛知県名古屋市在住、岐阜県出身。ブライダル・プロデュース業に25年携わり、2200組以上の花婿花嫁さんの人生のスタートに関わりました。さらに、大好きな旅行を業務として20年。思い立ったら、世界中どこまでも行く。知らない事は、どんどん知ってみたい。 と、即行動をする。とにかく何があっても、切り替えが早い。
ブライダル業務の経験を活かして、次の世代に何を繋げていけるのか? をいつも模索しています。2024年より天狼院で学び、日々の出来事から書く事に真摯に向き合い、楽しみながら精進しております。

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2025-04-07 | Posted in 週刊READING LIFE vol.304

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